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社会人編・第4話 「母に家をプレゼント — 長年の夢を叶える」

大手企業との提携が決まり、会社は一気に成長軌道に乗った。

新しい案件が次々に舞い込み、売上も安定し、社員たちの士気も高まった。


そんな忙しい日々の中、しゅんはふと原点に立ち返るような気持ちになった。

—母のことだ。


幼い頃の記憶

しゅんは、母と二人で暮らしていた。

幼いころから父親の姿はなく、母が一人で家計を支えていた。


ボロボロの借家で、冬は寒さに震えながら、夏は扇風機の風でなんとかしのいだ。

母は朝から晩まで働きづめで、疲れ切っていても、食卓には必ず温かいご飯を用意してくれた。


—俺が大きくなったら、絶対に母さんに楽をさせてやる。


幼い頃に胸の中で密かに誓った夢。それが、しゅんをここまで動かしてきたのかもしれない。


不動産屋での決断

ある日、しゅんはオフィスを抜け、不動産屋に足を運んだ。

担当者に希望を伝える。


「母にプレゼントする家を探していて。あたたかい雰囲気で、庭があって、静かな場所がいいです」


担当者は目を見開いて笑った。


「それは素晴らしい親孝行ですね。ぜひお手伝いさせてください」


しゅんは、いくつかの物件を見て回った。

その中で一軒、心惹かれる家があった。郊外の小高い丘に建つ一軒家。

リビングの窓から陽が差し込み、南向きの庭には季節の花が咲いていた。


「ここにします」


迷いはなかった。


母を呼び出す

契約を終えたしゅんは、母に電話をかけた。


「日曜日、ちょっと出かけよう。見てほしいものがあるんだ」


母は最初、怪訝そうだったが、すぐに「楽しみにしてるわ」と声を弾ませた。


サプライズの瞬間

当日、しゅんは車で母を迎えに行った。

郊外の道を走りながら、母がぽつりと言った。


「ずいぶん遠くまで来るのね」


しゅんは微笑み、「まあね」とだけ答えた。


車を停め、母を家の前まで連れていくと、母は不思議そうにあたりを見回した。


「ここは……?」


しゅんはポケットから鍵を取り出し、そっと手渡した。


「ここ、母さんの家だよ。今までありがとう。これからはここで、ゆっくり過ごしてほしい」


母は、手の中の鍵を見つめ、そしてしゅんの顔を見上げた。


その目は潤み、震える声で言った。


「……しゅん、本当に?」


しゅんは笑った。


「本当だよ」


次の瞬間、母はしゅんを抱きしめた。


初めての夕食

その日の夜、二人で新しいキッチンに立ち、夕食を作った。

母が作った煮物の匂いが、幼いころの記憶を呼び覚ます。


「こんな日が来るなんて、夢みたい」


母はテーブルに並べた料理を見つめて呟いた。


しゅんも同じ気持ちだった。


「俺の夢だったんだ。母さんに家をプレゼントするのが」


母は微笑み、涙を拭った。


「ありがとう。……お父さんはいなくても、私にはしゅんがいてくれて、本当によかった」


その言葉に、胸が熱くなり、しゅんは言葉が出なかった。


夜空の下で

食後、庭に出ると、満天の星空が広がっていた。

しゅんはノートを開き、金色の文字を見つめる。


「母に家をプレゼント — 長年の夢を叶える」


そして、新たなメッセージが現れた。


【感謝は、未来を強くする】


しゅんはゆっくりと書き込んだ。


「夢を一つ叶えた。まだ、先へ行く」


家の明かりの中、母が窓越しに手を振る。


その姿が、しゅんに次の一歩を踏み出す力を与えていた。


(俺は、まだまだやるべきことがある。母さんの誇りでいられるように)


しゅんは静かに空を見上げ、深く息を吸った。

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― 新着の感想 ―
母と弟に微笑むと・・・・ 幼い頃の記憶 しゅんは、母と二人で暮らしていた。 弟どこ行った?
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