社会人編・第1話 「会社設立 — 本格的に事業拡大」
大学を卒業した内田しゅんは、大学時代に築いた仲間とともに起業の夢を現実にするべく、ついに自分の会社を設立した。あの時感じた「人生をやり直す」という決意は、今まさに形になろうとしている。
起業届と法人登記
小さな役所の窓口で、しゅんは起業届を提出した。目の前の用紙に名前を書き込み、法人登記の書類に押印をする手に、震えがあった。緊張と期待が入り混じり、未来への重責を感じたのだ。
「これが俺の会社だ」
そう心の中で呟いた。
仲間と語り合った夢が現実になる一歩。まだ何も始まってはいないが、始まったのだ。
夢と現実の狭間
しゅんが借りたオフィスは狭く、古いワンルームだった。新設の会社にはよくあることだが、家具も機材も最低限のもので、電話一本、パソコン一台にすら大事に触れた。だが、それで十分だった。夢に満ちた彼らには、物理的な大きさは関係なかった。
一緒に起業した仲間は、浅野(技術担当)、千夏、岸本(経営企画)。みんな大学時代の盟友だ。
「絶対に成功させよう」
しゅんの掛け声で、小さな会社が動き始めた。
苦闘の日々
最初の数ヶ月は文字通りの「戦い」だった。
資金は限られており、広告費も十分に出せない。
契約もゼロに等しく、電話をかけても冷たい返事ばかり。
パソコンの画面の数字は、赤字が続くばかり。
だが、諦めるわけにはいかなかった。しゅんは自分に言い聞かせる。
「これは通過点。まだ始まったばかりだ」
初めての大きなチャンス
そんな中、ある日、しゅんの携帯に一本の電話が入る。
「○○商事の担当の者ですが、貴社のサービスに興味があります」
その言葉を聞いたときのしゅんの胸の高鳴りは、言葉にできないほどだった。
契約成立への期待と不安を胸に、しゅんは資料作りに没頭した。
契約交渉の現場
取引先のオフィスにて、しゅんはスーツに身を包み、初めての重要なミーティングに臨んだ。
相手は経験豊富な担当者で、冷静かつ厳しい視線を送る。
「競合と比べて何が強みなのか?」
「どのように収益を上げるのか?」
「長期的なビジョンは?」
幾度も厳しい質問が飛んだが、しゅんは準備してきたデータと、熱意を込めて答えた。
ついに契約成立
数日後、契約成立の連絡が届いた。
仲間とともに小さなガッツポーズを交わし、喜びを分かち合った。
しかし同時に、しゅんは知っていた。これは始まりに過ぎないことを。
経営の重圧と成長
半年が経ち、社員も数名増え、売上は安定しつつあったが、経営の重圧は日に日に増していた。
資金繰りのプレッシャー、社員の管理、取引先の期待。
時には夜中までオフィスに残り、一人で悩むこともあった。
だが、仲間の励ましと、夢への想いが彼を支えた。
新たな目標へ
ある夜、しゅんは窓から街の夜景を見つめた。
煌めくビル群の灯りは彼の希望の光でもあった。
「もっと大きくしたい。このチームと共に、頂点に立つ」
胸の奥に熱い想いが込み上げてきた。
ノートに刻まれた決意
自室に戻り、ノートを開く。
そこには大学時代から書き綴ってきた金色の文字が浮かんでいた。
「会社設立 — 本格的に事業拡大」
その下に新たな言葉を書き込む。
【最初の一歩が、未来を決める】
しゅんはペンを握りしめた。
「全力で挑み続ける」
未来はまだ遠い。だが、確かな一歩を踏み出した。
彼の挑戦は、今ここから始まったのだ。