大学生編・第8話 「ライバル企業出現 — 勝負の選択」
投資家からの出資を受け、しゅんたちのプロジェクトは一気に加速した。
浅野が開発したシステムは正式版へと改良され、千夏のマーケティングによってSNS上で話題となり、サービスは学生たちの間で徐々に広まっていった。
順調そのものだった。少なくとも、ある日までは——。
岸本がいつものファミレスで、開いたノートパソコンの画面を指さした。
「……見ろ、これ」
そこに映っていたのは、とある新興企業のプレスリリース。
見慣れない名前の会社が、「学生向け起業支援プラットフォーム」を発表したという記事だった。
(まさか……同じコンセプト?)
記事を読む限り、ターゲット層も機能も、しゅんたちが準備してきたものと酷似していた。
千夏が顔を曇らせる。
「名前が違うだけで、ほとんどうちと同じ……向こうは、もう資金も人材も揃ってるみたい」
浅野は腕を組み、苛立った声を出した。
「こうなると、差別化ポイントがなきゃ勝てねぇぞ」
しゅんの頭に、久々に選択肢が浮かぶ。
【〇:正面からぶつかり、独自の強みを打ち出す】
【×:撤退して、別の市場を狙う】
彼は迷わず【〇】を選んだ。
その夜、しゅんは一人でキャンパスのベンチに座り、夜空を見上げていた。
冷たい風が吹き抜ける中、自分に問いかける。
(俺たちがやってきたことは、何だったんだろう)
(本当に、価値のあるものを作れていたのか)
そのとき、スマホが震えた。岸本からのメッセージだった。
「戦おう。俺たちは間違っていない」
その一言で、しゅんは腹を決めた。
翌日、全員を集めた会議で、しゅんは宣言した。
「ライバルに負けるつもりはない。俺たちだけの価値を、もっと磨こう」
浅野はうなずきながら言った。
「やるなら徹底的にやる。差をつけるために、何が必要か洗い出そう」
千夏もノートを開き、提案を出し始めた。
「向こうは資金力で広告を打ってるだけ。うちはもっとユーザーに寄り添えるはず。ユーザー参加型のコンテンツを強化しましょう」
岸本は数字を叩き出し、必要な予算と収益シミュレーションを作り直す。
「一気に規模を広げず、まずはコアなファンを作る。リピーター率で勝てば、後からでも追いつける」
数週間にわたる議論と試行錯誤の末、チームは新たな戦略を決めた。
単なる支援ツールではなく、「挑戦の場」を提供するコンテスト形式のイベントを打ち出し、学生同士が競いながら学び合える仕組みを導入したのだ。
初めてのイベントは、大学のホールを借りて開催された。
予想以上の参加者が集まり、会場は熱気に包まれた。
「これはすごいな……」
岸本が小さく呟いた。
壇上でマイクを握るしゅんの胸には、確かな手応えがあった。
(俺たちの価値は、ここにある)
イベント終了後、SNS上では「圧倒的にこっちの方が面白い」という声が飛び交った。
ライバル企業の影は、次第に薄れていった。
その夜、しゅんはノートを開いた。
金色の文字が浮かぶ。
「ライバル企業出現 — 勝負の選択」
その下に、新しい言葉が現れる。
【恐れずに戦い、磨き続けたものだけが残る】
しゅんはペンを走らせ、自分の言葉を書き加えた。
「強いのは相手じゃない。諦めない自分たちだ」
夜の街を歩きながら、しゅんは決意する。
(俺たちはまだ成長途中だ。これからもっと強くなる)
そして彼は、チームの仲間たちと共に、新たな挑戦へと歩み出した。




