大学生編・第3話 「アルバイトで事業資金作り — 着々と準備」
名門・京南大学の学生生活にも慣れ、ビジネス研究会での活動にも熱が入ってきたしゅん。
だが、彼にはひとつ大きな課題があった。
——資金がない。
(いくら頭の中に計画があっても、動かすお金がなければ始まらない)
ビジネス研究会で学ぶうちに、資本金の重要性を痛感する場面が何度もあった。
「とりあえずやってみる」もいいが、最低限の準備資金があるかないかで、選べる手段やスピードが大きく変わる。
彼の家は裕福ではなかった。学費は奨学金とアルバイトでどうにかしていたし、親に頼るつもりもなかった。
(自分で稼ぐしかない)
頭の中に選択肢が現れる。
【〇:稼げるアルバイトを探す】
【×:のんびり学生生活を楽しむ】
迷わず【〇】を選ぶ。
しゅんはまず、学内の掲示板や求人サイトを片っ端からチェックした。
時給の高い飲食店や引っ越し作業、深夜の工場も候補に入れたが、最終的に選んだのは意外な職場だった。
——ベンチャー企業のインターン。
ビジネス研究会の先輩から紹介された、小規模ながら成長中のWebマーケティング会社で、時給はそこそこだが、実務が学べるうえに成績次第でボーナスも出るという。
(お金も学びも手に入る。これしかない)
電話をかけ、その場で面接を取り付けた。
面接当日。オフィスは駅近くの雑居ビルの一室にあり、壁には「挑戦と成長」というスローガンが大きく掲げられていた。
面接官は社長その人だった。まだ30代半ばの若い男性で、カジュアルな服装に鋭い目をしている。
「大学生のインターンは珍しくないけど、なんでウチなんだ?」
社長の問いに、しゅんは堂々と答えた。
「ここなら、ただの作業ではなく、実践的なビジネスを学びながら稼げると聞きました。僕も将来起業したいので、力をつけたいんです」
しばらく無言だった社長は、やがて笑った。
「いい度胸だな。明日から来い」
こうして、しゅんは新たな環境で働き始めることになった。
仕事内容は簡単なデータ入力から始まり、リスティング広告の運用、アクセス解析、クライアントへの提案資料の作成と、徐々に難易度が上がっていった。
——そして、なにより忙しかった。
大学の講義をこなし、サークル活動も続けながら、夕方から深夜まで働く日々。
寮に戻るころには、体はヘトヘトだった。
しかし、しゅんの目は輝いていた。
(学びながら稼ぐ。まさに理想だ)
社長や先輩社員の言葉、クライアントの要求、数字の動き、そのひとつひとつが貴重な財産になった。
数か月後、しゅんは初めての成果を出した。
担当した広告案件の成果が予想を超える結果を出し、クライアントから高い評価を受けたのだ。
社長に呼ばれ、封筒を手渡された。
「よくやったな。これ、成果報酬だ」
封筒の中には、アルバイト代の数倍に相当する金額が入っていた。
「ありがとうございます!」
心からの声が出た。
(少しずつ、だけど着実に前に進んでいる)
夏が終わる頃、しゅんの通帳には、大学生活をスタートした頃には想像もできなかった額の貯金ができていた。
もちろん、まだ事業を始めるには十分とはいえない。
だが、自己資金で動き出せる下地は整いつつあった。
その夜、寮の部屋でノートを開く。
ページには、金色の文字が浮かび上がる。
「アルバイトで事業資金作り — 着々と準備」
そして、その下に新しい言葉が現れる。
【一歩ずつ積み重ねたものが、未来を支える】
しゅんはそのページに、自分の言葉を書き加えた。
「稼ぐ力こそが、自由になる力だ」
書き終えたページを閉じ、彼はまた深く息をつく。
(次は、具体的なプランを固める番だ)
視線の先には、まだ見ぬ未来が広がっていた。




