高校生編・第3話 「最初の挑戦」
起業研究会に入部して1週間。
しゅんは毎日のように放課後、部室に通い詰めていた。
工藤先輩をはじめとする先輩たちは、商売の仕組みやマーケティング、利益計算の基礎を丁寧に教えてくれた。
「理屈を知ってるだけじゃ、儲からない。やるなら、まず動くことだ」
工藤の言葉がいつも胸に響いた。
◇ ◇ ◇
そんなある日、工藤が部室で突然言った。
「さて。そろそろお前たち新入部員にも、実地をやってもらうか」
しゅんと、同じく新入部員の高橋隼人、それにもう1人の女子・川島もえが顔を見合わせる。
「実地……ですか?」
「そうだ。文化祭はまだ先だが、それまでに小さなビジネスをやってみろ。利益を出せたら合格だ」
川島が不安げに聞く。
「小さなビジネスって、例えば……?」
工藤はニヤリと笑い、ホワイトボードに書いた。
「初期資金:3000円/期間:1か月」
「この条件で、どんな形でもいい。儲けてこい」
◇ ◇ ◇
3人は部室の片隅で円陣を組み、作戦会議を始めた。
「どうする? 3000円って、けっこう少ないな」
高橋が頭をかきながら言う。
「フリマアプリで何か売る、とか?」
「でも、それだと出品して終わっちゃうし、学ぶこと少ないかも……」
川島が真剣にメモを取りながら提案する。
「手作りお菓子を作って、近所で売るとか?」
しゅんはしばらく考えていたが、青い選択肢が頭に浮かんだ。
【〇:自分たちで商品を作って売る】
【×:既製品を仕入れて売る】
(……やるなら、オリジナルに挑戦しよう)
しゅんは【〇】を選び、口を開いた。
「俺たちで、何か作ろう。たとえば、簡単なお菓子とか。自分たちで考えて作ったものなら、達成感も違うと思う」
2人は顔を見合わせて、同時に頷いた。
「いいね、それ!」
「決まりだな!」
◇ ◇ ◇
その日から、3人は近所のスーパーを回り、材料の値段を調べ、試作を始めた。
何度も失敗して、味が安定しなかったり、コストがオーバーしたり。
「……やっぱり難しいな」
高橋が弱音を吐きかけたとき、しゅんはノートを広げて言った。
「まだ時間はある。どこがダメなのか、書き出してみよう」
3人で一つずつ課題を洗い出し、改善案を考える。
数日後、ようやくコストも味も納得できる「オリジナルクッキー」が完成した。
◇ ◇ ◇
日曜日、近所のフリーマーケットに出店。
手作りのポップと小さなテーブルに、クッキーを並べる。
最初は誰も立ち寄ってくれず、緊張で手が震えた。
(……これも挑戦だ)
しゅんは笑顔で声をかけ、試食も配りながらアピールした。
すると、少しずつ人が集まり、次々と売れていく。
「これ、美味しいね!」
「値段も手頃だし、もう一袋もらうわ」
最終的に、用意したクッキーはすべて完売した。
売上はなんと、3000円の投資が3倍以上に膨らんでいた。
◇ ◇ ◇
帰り道、3人は達成感でいっぱいだった。
「やったな、しゅん!」
「本気でやれば、何とかなるもんだな」
しゅんはノートを開き、書き記した。
「最初の挑戦。小さな成功でも、自信につながる。」
ページに金色の文字が現れる。
【行動する勇気を得た】
胸の中で、確かな手応えが芽生えていた。
(これからも、挑戦し続ける)
しゅんはそっと笑い、桜が舞う帰り道を歩いた。




