高校生編・第2話 「起業研究会との出会い」
翌日、昼休み。
しゅんは前日の夜に決めた通り、「起業研究会」の見学に向かった。
部室は校舎の一番端にある、少し古びた教室だった。
入り口のドアには、簡単な紙の看板が貼ってある。
『起業研究会 見学歓迎』
(本当にここで合ってるのかな……)
少し緊張しながらドアをノックすると、すぐに中から声がした。
「どうぞー!」
扉を開けると、意外にも中は活気があった。
4人ほどの先輩たちがホワイトボードの前で何かを書き込み、机の上にはパソコンやノート、ビジネス書の山が並んでいた。
その中心にいたのは、スーツを着たような雰囲気のある3年生だった。
「見学か? 入っていいよ」
その先輩が笑顔で手招きする。
「はい……内田しゅんです。昨日、ポスターを見て……」
「俺は会長の工藤。2年の時にこの会を作った。まぁ座れ」
促されるまま席につくと、工藤がペンを回しながら言った。
「で、なんでこの部活に興味持った?」
しゅんは少し考えた。
(なんでだろう……何か新しいことがしたい、って思ったから……)
「今までとは違うことに挑戦したくて。それに……お金持ちになりたい、って気持ちもあります」
工藤はニヤリと笑った。
「いいじゃん。シンプルでいい。ここはそういうヤツが集まる部活だからな」
◇ ◇ ◇
活動は、意外にも本格的だった。
市場調査やビジネスプランの作り方、簡単な会計やマーケティングの基礎を先輩たちが教えてくれる。
「去年は文化祭でオリジナルのドリンク屋を出して、2日間で5万円の利益を出したんだ」
「えっ、そんなにですか!?」
「まぁ、最初は失敗ばっかだったけどな。失敗しながら学ぶのが大事だ」
先輩たちの話を聞くうちに、胸の中がどんどん熱くなっていった。
(ここなら……俺も新しい自分になれるかもしれない)
◇ ◇ ◇
見学が終わる頃、工藤がしゅんに言った。
「入部するかどうかは自由だ。ただし、入るなら一つだけ約束しろ」
「……なんですか?」
「やるなら、本気でやれ」
その言葉に、胸が強く打たれた。
(本気で……やる)
青い選択肢が浮かぶ。
【〇:入部して本気で挑戦する】
【×:やっぱり別の部活を探す】
しゅんは迷わず【〇】を選び、はっきりと答えた。
「はい。入部します!」
工藤は満足げに頷いた。
「いい顔してるな。今日からお前も仲間だ」
◇ ◇ ◇
帰り道。
春の空気が、少しだけ暖かく感じた。
ノートを開き、今日の出来事を書き記す。
「起業研究会との出会い。本気でやると決めた瞬間、未来が動き出した。」
金色の文字が浮かぶ。
【挑戦する勇気を得た】
(ここからがスタートだ……)
未来への期待と少しの不安を胸に、しゅんは笑みを浮かべ、歩き出した。