中学生編・第7話 「ケンカと仲直り」
冬休みが近づき、街がイルミネーションで輝く季節。
しゅんと陽一は、放課後によく一緒に将棋や勉強をして過ごしていた。
美咲とも順調に話せるようになり、少しずつ特別な存在に感じ始めていた。
そんなある日、サッカー部の練習を終えて部室で着替えていると、同じ部の先輩たちが雑談していた。
「内田、最近昼休みも放課後もサボって将棋部のやつと遊んでるらしいな」
「しかも、あの美咲とも一緒にいるって噂だぜ」
先輩たちは面白半分に笑ったが、しゅんの胸にチクリとした痛みが走った。
(サボってるつもりはないのに……)
◇ ◇ ◇
翌日、しゅんは陽一に会ったとき、つい強い口調で言ってしまった。
「なぁ、陽一……俺、もう昼休みはサッカーの練習するから、将棋はお前一人でやってくれ」
陽一は驚いた顔をして、しばらく黙っていたが、ポツリと呟いた。
「……そっか。わかった」
そのまま、背中を向けて歩いていく陽一の姿に、胸が苦しくなった。
◇ ◇ ◇
夜、布団に入ってもモヤモヤが消えない。
頭の中に青い選択肢が浮かぶ。
【〇:素直に謝る】
【×:そのまま距離を置く】
(……俺は、陽一との友情を失いたくない)
しゅんは決心して、【〇】を選んだ。
◇ ◇ ◇
翌日。
放課後の将棋部の部室に向かうと、陽一が一人で駒を並べていた。
「陽一……昨日はごめん」
しゅんが頭を下げると、陽一はじっと盤を見つめたままだった。
「俺……先輩に何か言われたんだろ?」
しゅんは、はっとした。
「……うん」
「そういうことなら、最初から言ってくれればいいのに」
陽一がゆっくりと顔を上げ、微笑んだ。
「別に、俺だってお前を縛りつけたいわけじゃない。お前にはお前の道があるんだし」
その言葉を聞いたとき、胸がじんわりと熱くなった。
「でも、将棋は好きだし、お前とやるのも楽しいから……これからもよろしくな」
しゅんが差し出した手を、陽一が強く握り返してくれた。
◇ ◇ ◇
帰り道、2人で並んで歩く。
「……なぁ、陽一」
「ん?」
「いつか俺たち、大人になってもこうして笑ってられるかな」
陽一は空を見上げ、少し考えてから答えた。
「さぁな。でも、正しい道を選べば、きっと大丈夫だろ」
(……そうだ。正解を選び続ければ、未来はきっと変えられる)
◇ ◇ ◇
家に帰り、ノートを開いた。
「ケンカと仲直り。素直に謝ることで、また一歩、強くなれた。」
ページを閉じると、金色の文字が浮かぶ。
【素直な心を学んだ】
しゅんはペンを置き、陽一の笑顔を思い出しながら呟いた。
(ありがとう、陽一。俺も、正解を選び続けるよ)