中学生編・第6話 「初めての恋心」
冬が近づき、肌寒い風が吹く季節になった頃。
しゅんは、これまでとは違う、胸の奥がざわつくような気持ちに気づいていた。
それは、同じクラスの女子、**美咲**に対してだった。
文化祭の準備で何度か話したことがある、美咲。
明るくて、誰とでも気さくに話せて、笑顔がとても綺麗な子。
ある日の休み時間、しゅんがノートを見ていると、後ろから声がした。
「内田くん、それ、昨日の授業のノート? 見せてくれる?」
振り返ると、美咲がにっこりと微笑んでいた。
「え、あ、うん! どうぞ」
どきりと胸が跳ねる。
美咲が隣に座り、ノートを覗き込みながら小さくつぶやいた。
「……字、すごく綺麗なんだね」
「え? そ、そうかな……」
顔が熱くなるのを感じた。
(これが……恋、なのか?)
◇ ◇ ◇
その日の放課後。
サッカー部の練習に向かおうとしたしゅんの頭に、青い選択肢が浮かんだ。
【〇:美咲ともっと話すチャンスを作る】
【×:今は部活に集中する】
しゅんは迷った。
だが、しばらく考えた末、【〇】を選んだ。
(正解を選び続ける。それは、勇気を出すことだ)
◇ ◇ ◇
翌日。
しゅんは給食の時間に、美咲が一人で席にいるのを見つけた。
(……今だ!)
「一緒に食べてもいい?」
美咲が少し驚いたようにこちらを見て、すぐに笑った。
「うん、いいよ!」
席に座り、一緒におしゃべりをしながら食べる。
美咲は、しゅんの知らない映画の話や、好きな本の話を楽しそうにしていた。
(こんなに楽しいなんて……)
気がつけば、美咲の笑顔に引き込まれている自分がいた。
◇ ◇ ◇
その日の夜、ノートを開いて気持ちを整理する。
「初めての恋心。美咲の笑顔を見ていると、胸が熱くなる。これは、俺の新しい目標になるかもしれない。」
ページを閉じると、金色の文字が静かに浮かび上がった。
【恋心が芽生えた】
(正解を選び続ける。それは、自分の気持ちに素直になることだ)
そう思ったとき、胸の中に小さな勇気が灯った。
◇ ◇ ◇
次の日。
しゅんはまた青い選択肢に出会う。
【〇:美咲を放課後に誘う】
【×:今はタイミングを待つ】
少しだけ迷ったが、しゅんはゆっくりと【〇】を選んだ。
放課後、美咲が靴を履いているところへ歩み寄り、声をかけた。
「美咲……よかったら、少しだけ一緒に帰らない?」
美咲は驚いたように見上げ、そして少し照れたように笑った。
「……うん、いいよ」
2人並んで歩く帰り道。
寒い風が頬を刺すけれど、心はとても温かかった。
(これも、正解の選択だ)