表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/50

中学生編・第2話 「陽一の変化」

新しいクラスにも少しずつ慣れ、サッカー部の練習も始まった頃。

 しゅんは昼休みに校庭の隅でボールを蹴りながら、ふと遠くのベンチに座る一人の男子に気づいた。


 (……陽一?)


 小学校の頃からの友達、陽一だった。

 同じ中学に進学したが、クラスが違ったため、入学式以来顔を合わせていなかった。


 陽一は元気がなさそうに、俯いていた。

 胸の中に青い選択肢が現れる。


 【〇:声をかける】

 【×:そっとしておく】


 迷わず【〇】を選び、しゅんはボールを持って近づいた。


 「陽一! 元気か?」


 陽一が顔を上げると、少し驚いたように目を見開いた。


 「あ……しゅん……」


 ◇ ◇ ◇


 二人並んでベンチに座る。


 「最近どう? 部活決めた?」


 しゅんが話題を振るが、陽一は苦笑いをするだけで、あまり答えようとしない。


 「……俺さ、なんか、うまくいかなくてさ」


 ぽつりと陽一が言った。


 「クラスでも浮いてるし、部活も決められなくて。みんなすぐ仲良くなってるのに、俺だけ置いてかれてるみたいだ」


 陽一の言葉に、しゅんは胸がチクッとした。

 かつての自分も、同じように感じていたからだ。


 (あの時、俺は正解を選び続けて少しずつ変われた。陽一にも、その手助けができるかもしれない)


 ◇ ◇ ◇


 「大丈夫だよ、陽一。俺だって最初は緊張してたし、まだうまくいってるわけじゃない。最初から全部できる奴なんていないしな」


 そう言うと、陽一は少しだけ笑った。


 「……しゅんは、変わったな」


 「そうか?」


 「うん。なんか、前より自信があるっていうか、頼りがいがあるっていうか……」


 しゅんは少し照れながらも、陽一の言葉を素直に受け取った。


 「俺さ、部活見学、一緒に行ってみようか?」


 陽一の目が驚きに見開かれる。


 「え……いいのか?」


 「もちろん!」


 再び青い選択肢が浮かぶ。


 【〇:陽一をサッカー部に誘う】

 【×:他の部活も見せる】


 ここは慎重に考え、【×】を選んだ。


 (陽一に合う部活を探してやりたい)


 ◇ ◇ ◇


 放課後、しゅんと陽一はまずサッカー部の練習を見に行った。


 「やっぱりみんな上手いな……俺は無理かも」


 陽一が呟くと、しゅんは笑った。


 「じゃあ、次行こう。バスケ部も見てみるか?」


 体育館では、バスケットボール部が活発に走り回っていた。

 陽一はじっと見つめていたが、ここでも首を横に振る。


 「動きが早すぎて……俺には向いてないな」


 しゅんは次に文化部を提案した。


 図書室の一角にある将棋部を覗くと、陽一の表情が少しだけ変わった。


 「……ここなら、なんか落ち着くかも」


 しゅんはニヤリと笑う。


 「決まりだな」


 ◇ ◇ ◇


 翌日、陽一は将棋部に入部届を出した。


 放課後、部室の前で陽一を見送ると、彼が小さく手を振りながら言った。


 「……ありがとう、しゅん。俺、頑張ってみるよ」


 その表情は、昨日までの暗い顔ではなかった。


 (これでいい。俺が正解を選び続けることで、陽一も変われる)


 帰り道、空に浮かぶ雲を見上げながら、しゅんは深く息をついた。


 ノートにこう書き記した。


 「陽一の変化。俺が一歩踏み出したことで、陽一も前に進めた。これからも、正解を選び続ける」


 ページを閉じると、金色の文字が一瞬、心の中に浮かんだ。


 【陽一との絆が強まった】


 しゅんは笑みを浮かべ、青空を見上げた。


 (正解の選択は、いつも誰かの未来につながっている)



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ