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中学生編・第1話 「新しい世界」

桜の花びらが、春風に乗って舞っていた。

 新しい制服に袖を通し、真新しい学生鞄を握りしめながら、しゅんは中学校の正門をくぐる。


 (ここからが、新しいステージだ)


 小学校の6年間で、自分は随分変わった。

 いじめられた過去も、母の苦労も、挑戦する楽しさも、全て乗り越えた。

 だからこそ、この中学校生活も、胸を張って進みたかった。


 校門を過ぎると、新入生たちが体育館へと誘導されていた。

 保護者席に母の姿も見え、しゅんに気づくとにっこり笑って手を振ってくれる。


 (母さんの笑顔のためにも、ここでまた正解の選択を重ねていこう)


 しゅんは深呼吸し、体育館の扉を開いた。


 ◇ ◇ ◇


 入学式が終わり、各クラスに分かれて最初のホームルームが始まった。

 しゅんのクラスは1年2組。前の黒板には担任の先生が書いた「よろしく!」の文字。


 「よし、みんな自己紹介しよう! 順番に前に出て、好きなこととか中学校で頑張りたいことを話してな」


 周りの子たちは緊張しながらも、順番に前に出ていく。

 しゅんは、自分の番が近づくにつれて、胸の中に青い選択肢が現れるのを感じた。


 【〇:堂々と自己紹介する】

 【×:無難に終わらせる】


 (もちろん、〇だ)


 しゅんは迷わず【〇】を選び、前に出た。


 「内田しゅんです。小学校では勉強や将棋が好きでした! 中学校では、もっといろんなことに挑戦して、友達もたくさん作りたいです!」


 言い終えると、教室のあちこちから小さな拍手が起こる。

 先生も嬉しそうに頷いた。


 (よし、第一歩は上出来だ)


 ◇ ◇ ◇


 休み時間になると、何人かの男子が声をかけてきた。


 「おー、内田くんって言ったっけ? よろしく!」


 「俺、サッカー部入る予定なんだけど、一緒にどう?」


 「将棋できるの? 俺もやるよ!」


 次々に差し伸べられる手。それを一つひとつしっかり握り返す。

 小学生の頃、勇気を出して陽一に声をかけた日のことを思い出しながら、しゅんは笑った。


 (こうしてまた、一歩ずつ広げていけばいい)


 昼休みには、教室の隅で将棋の話で盛り上がったり、校庭でボールを蹴ったりして、すでに何人かの顔と名前を覚えた。


 (中学ではもっと多くの人と関わりたい。人脈も、経験も、未来への財産だ)


 ◇ ◇ ◇


 放課後、先生から「部活動見学ができるぞ」と案内があった。


 体育館ではバスケットボール部が大きな声を上げて走り回り、グラウンドでは野球部が白球を追いかけている。


 しゅんもいくつかの部活を見て回った。


 (運動部もいいし、文化部も楽しそうだな……)


 迷いながらも、心の中に選択肢が浮かぶ。


 【〇:運動部に挑戦】

 【×:文化部に入る】


 しゅんは、少し悩んだ末に【〇】を選んだ。


 (どうせなら、体も鍛えて健康になりたい)


 翌日、見学していたサッカー部に入部を申し込むと、部長が「よっしゃ、仲間が増えたな!」と笑顔で迎えてくれた。


 (これも新しい挑戦だ)


 ◇ ◇ ◇


 夕暮れの帰り道、母が迎えに来てくれていた。


 「もう友達できた?」


 「うん、何人か。部活も決めたよ、サッカー部!」


 「へえ、すごいじゃない。ケガには気をつけるのよ」


 母の笑顔に、しゅんはにっこりと頷いた。


 家に着いてノートを開き、今日の出来事を書き留める。


 「中学生編スタート。新しい世界は、選択肢だらけだ。正解を選び続けよう。」


 最後に、一行加えた。


 「母の笑顔を守りながら、自分の夢も見つける」


 その瞬間、心の中に金色の文字が静かに浮かぶ。


 【新しい世界の扉が開かれました】


 しゅんはノートを閉じ、ぐっと拳を握った。


 (ここからが本番だ。俺は、もっと強くなる)

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