表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/16

没落ルートを回避したいオリヴィアの作戦①

 入学式から一週間がたった。

 

 遂に校内で一緒に学園生活を満喫できるとあって、一応表向きにはラインハルトもレティシアへの溺愛ぶりを抑えているけど、正直端から見たら駄々洩れであり、毎日二人が仲が良さそうに校内を歩いているのを目撃されている。

 

 当然、誰も間に入って邪魔しようとは思わない。邪魔したらラインハルトに抹殺される……そう、入学式の日にレティシアに好意的な視線を送っていたある男子生徒が、周囲に触れ回っているらしい。


 どうやら、例の生徒にラインハルトはきっちりけん制したようだ。


 そしてマリアの方だけど、やっぱりあの見た目なので最初はものすごい美少女が入ってきたと学園中から見物客が押し寄せたらしいけど、彼が男だと知ると、下心を持ってた男子たちが青い顔で離れて行ったらしい。


 彼がどういう行動を取るかは私も当然気にしていて、この前の早朝の中庭での会話以降、彼と直接会うことはしなかったけど常に動向を探っていた。

 けれどゲームで入学後すぐに起こっていた攻略対象者たちとの出逢いイベントを発生させることもなく、それどころか接触することもなく、普通に学園生活を送っているようだ。


 だけど、ここで一つの懸念が生じる。


「さて、優秀な生徒をこの生徒会に勧誘しようと思うのだが」


 ラインハルトの言葉に、私はずんと気持ちが沈むのを感じた。


 そう、生徒会のメンバーを選出するこの時期。

 主に一年生を中心に、昨年卒業した生徒の補充をするのだが。


「レティシアは学年首席ということもあるから是非入ってほしいと思っている」


 ラインハルトの言葉に私達は当然だとばかりに頷く。

 

 元のゲームだと、王子の婚約者で公爵令嬢だから!! と強引に生徒会入りを望むけど、能力は足りないし人望もないことから全員に却下され、それがまた彼女の逆鱗に触れて色々学園でもやらかすきっかけにはなったんだけど。


 今回は違う。

 誰に聞いても、レティシアを差し置いて誰を勧誘するんだ、と皆が思っているようだ。


 そして他の生徒の名が次々と上がる中で、遂に恐れていた事態になる。


「マリア・フレイムも成績優秀者だと聞きます」


 挙手をした生徒の一人が上げた名前に、私はびくりと体を震わせる。


「ふむ、例の子爵家に引き取られた生徒か。学園に入るまでの勉強時間は少なかったそうだが、入学時の試験では五位以内に入っていたそうだしな」


 そう言った後、ラインハルトが顎に手をかけ、なるほどいい人材だと呟く。


「彼、特殊な家庭事情とあの見た目で結構目立ってて、僕のところにも色んな噂が聞こえてくんだけどさ。礼儀作法はまだまだ足りてないって話だけど、持ち前の明るさと愛嬌でクラスメイト達ともいい関係を築いているみたいだよ。貴族平民関係なく」


 レイリーがそう言うと、


「あの見た目で案外力も強いらしいぞ。女みたいだと突っかかってきた騎士志望の連中を、コテンパンにしたらしいしな。孤児院でも腕っぷしの強さを認められて用心棒代わりにもなってたとも聞いた。ま、先に手を出したのは奴ららしいから、自業自得だ。是非生徒会に入れて、俺が直々に鍛えたいものだ!」


 ダリアンが鼻息荒くそれに続く。


 他の生徒も、いいんじゃないかと肯定の意を示している。

 

 それを見回し、ラインハルトは高らかに宣言した。


「ではマリア・フレイムに生徒会入りの打診をしたいと思う」


 そう、ゲームでも同じように生徒会にマリアを入れる動きがあった。

 そしてマリアが生徒会に入ることにより、イベントが多数発生し、距離が縮まって恋愛に発展していくのだ。


 まだマリアの存在が絶対に私達の未来に影響を及ぼさないと確信が持てないし、ましてマリアは人を無意識に動揺させるような発言を平気でするような人間だ。

 だからこそ、ラインハルト達との接点が増えるようなことは避けたい。

 けれどこんな満場一致感が漂ってる中で、それを覆せるだけのマイナス面もマリアにはない。

 

 そして、勧誘に行く段階で誰ともヒロインが接触をしていなかった場合、強制的にラインハルトが勧誘に向かうことになる。

 

 だったら私ができることは一つ。


「では彼への勧誘だが、ここは私が直々に出向いて……」


「お待ちください」


 ラインハルトの言葉を、私は遮る。


「その件ですが、私に任せてはいただけませんか? いきなり殿下が足を運ぶと、彼も恐縮してしまうかもしれません。それにもし加入の意志がない場合でも、ラインハルト殿下相手では断りにくいでしょう」


 そう、生徒会入りの打診はあるが、本人が断るなら話は変わってくる。

 実際ゲームでも、入るか入らないかの選択肢が出ていたし、断ることもできた。


 そっちを選択すると、中途に入学してくる隣国王子とのルートが確定し、ラインハルト達とのルートは消滅する。


 つまり私がマリアを勧誘しに行き、どうにか彼が入らないよう会話で誘導しようという作戦だ。

 

 この申し出に、ラインハルトは一瞬眉を上げて探るようにこちらを見てきたが、特に何も言うことなくすぐさま了承してくれた。


「ではマリア・フレイムの勧誘は君にお願いしよう」


「はい、お任せください」


 入りたくないって言われるように頑張るつもりだが、さすがに事実は言えないので、そう答えておいた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ