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三人目の転生者???の過去①
それは、身分が違う故に叶わぬ恋だった。
だから誰も二人を知らない場所で生きていこうと、全てを捨てて逃げ出したのに、現実は非情だった。
険しい山の中でボロボロになりながらも必死に逃げたが、すぐに追手に追いつかれた。
せめて愛する人だけでも逃がそうと追手と揉み合っているうちに、それは起こった。
地盤が緩くなっていたのだろう、自身の立っていた足元だけが、突然ガラガラと音を立てて崩れる。
泣きながら自分の名前を呼ぶ愛しい人を見つめながら腕を伸ばすが、届くことはなく、体は宙に投げ出され、遥か先に見える地面へと落ちていく。
おそらくこの身は助からないだろう。
風を切り、どんどん遠くなっていく愛しい人をその瞳に焼き付けながら、思う。
もしも。
もしも来世というものがあるのなら。
どうか愛しい人と、もう一度会わせてください。
そうしたら今度こそ、愛しい人をこの手から離したりはしない。
そう、いるのかすら定かではない神に祈りを捧げながら、一生を終えた。