表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
冷淡な『氷姫』と呼ばれた悪役令嬢の姉は、一家断罪の未来を回避すべく奮闘する  作者: 春樹凜
《イベント3 生徒会の勧誘》

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/16

モブに転生したとある令嬢ミラの目撃②

 

 ほわぁぁぁぁっ、何あれ、何あれっ──!?!?


 廊下でイベントの行方を見守っていた私は、奇声をあげそうになった己の口を押え、思わずその場に蹲った。






 入学式から一週間、ランダムで起こる、スチルはないけど早朝中庭会話イベントはコンプリート済み。

 

 クロちゃんを膝に抱いていたオリヴィア様はまるで一枚の絵画のように美しく、私はこっそり拝んでいた。

 そのあとマリアがやってきて彼の身の上話になって、様子を見るにどうやらマリアが転生者で、ゲームの記憶を使ってオリヴィア様を攻略する……ってことはなさそうな感じだった。

 つまりあのマリアは、デフォルトでヒロインマリアか。

 

 そして相変わらず人をたらすのが上手いマリアの天然発言により、氷姫の氷は完全に溶かされて熱湯になり、真っ赤になっていたオリヴィア様はマジ天使すぎて、私の心は大いに満足した。


 が、しかーし!

 今日は生徒会勧誘イベントの発生日。これはがっつりスチル付きの重要イベント!

 よっ、待ってました!!


 勧誘に行くのはその時に一番好感度の高いキャラだったけど、オリヴィア様以外と会ってすらいないので彼女になるだろうなと予測を立てていた私は、勿論放課後になった瞬間、ダッシュしてイベント発生ポイントへ向かった。


 廊下の物陰に身を潜めていると、偉そうでむかついていた乱暴なクソ野郎が、マリアを呼び出して難癖付けてるところだった。

 

 あれ、マリア(女)の場合は、平民だけど可愛いから俺が愛妾にでもしてやろうかって迫る展開だったけど、さすがに性別が違うからか、いくらマリアが美少女顔負けの可愛さをしてるからと言っても、そういう流れにはならなかった。


 するとゲーム通り、そこにオリヴィア様が通りかかって乱暴な行為を諫め、あの男が去った後空き教室に移動した段階で私も教室前にこっそり足を運び、わずかに開けた扉の隙間からそろっと覗き見してたわけだけど。


 展開が一緒過ぎて、マジで激熱神展開!


 例えばオリヴィア様が普通に可愛いって言われてるシーン。

 笑ったオリヴィア様、大真面目に可愛い。しかもその後必死にいつも通りにしようと取り繕って、でも動揺が見えてちょっとあわあわしてるとことか、爆死レベルの可愛さ。


 それに生徒会に入る理由のところ。


 実際マリア(女)は、マリア(男)が言ってたような理由で、自分のことを案じてくれたオリヴァー様に感激し、だからこそ彼の助けになりたくって生徒会入りを決めるんだけど。


 ゲーム同様、好きです! と、まだ恋愛感情ではないにしろはっきり宣言されて、熟しすぎたりんごより真っ赤になったオリヴィア様や(スチル1)、感情を露にしてマリアを叱るオリヴィア様(スチル2)、そして真面目な顔で「本気です」って言われて固まっちゃうオリヴィア様(スチル3)……どれも良かった。 

 良すぎてヤバイ。ヤバイ以外の語彙力が下りてこないくらいヤバイ。

 

 しかしオリヴィア様も、マリア相手にいくら何でも動揺しすぎじゃない!?

 ゲームのオリヴァー様にも思ってたことだけど、オリヴィア様、そんなちょろくて大丈夫!? もしかして異性への耐性ない???


 いやいやでも彼女、ゲームと同じく婚約者の決まっていない優良物件で、氷姫って言われたり二人の婚約者と別れたりと色々あるものの、男性人気は高いんだよな。まあ、来るのってろくでなしばっかりなんだけども。

 で、彼女を射止めようと多くの男性陣が突撃かましに行ってるんだけど、綺麗です、美しいです、お付き合いしたいですなんて褒め称える言葉や歯の浮く台詞を言われまくるけど、オリヴィア様は照れることすらなくかわしているって噂が私の耳にも入ってきている。

 そこがまあ、更に氷姫って言われる原因ではあるんだけど。

 

 ということは、あれは対マリアだからこそ動揺するってこと……?

 まあ、可愛い、は、ちょっとだけ近寄りがたい空気感を醸し出している超絶美人さんにしてみれば、マジで言われ慣れていない単語なんだろうな。


 しかもあれだけまっすぐな目で好きです! って真正面から言われたら、私も動揺するけども。

 いやー、臆面もなく好きって言えちゃう真性ヒロインってやっぱすごいわ。


 と、教室から二人が出てくる気配を感じて、慌てて私は扉から離れる。


 様子を伺ってると、マリアは爽やかな笑顔を浮かべてその場からいなくなり、オリヴィア様は唇を噛みしめながら赤い顔で、恨めしそうにマリアの去った方向を見つめたあと、反対方向へ歩いて行った。


 しかし、こりゃあ完全にオリヴィア様ルートに入ったな。

 ゲーム時から、オリヴァー様がヒロインじゃんってユーザーから言われてたけど、今回は性別逆転してることもあって、名実ともにオリヴィア様がヒロイン枠確定だ。


 オリヴィア様に危害加えたりしないんだったら、もうマリアが転生前の記憶を持ってるかどうかとか、どうでもいいや。

 いけ、マリア、やっちゃえマリア!

 二人のやり取りを思い出しただけでもニヤツキが止まらない。


 ビバ、青春。

 ビバ、乙女ゲーム。


 神様、本当にありがとうございます。

 控えめに言って、幸せ過ぎていつ天に召されてもいいくらいです……いや、やっぱり訂正。せめて二人のエンディングまでは生き永らえさせてください。

 

 オリヴィア様マジで可愛すぎるし、彼女と一緒にいるマリアは、なんだかカッコよく見えてきた。勿論惚れたりしないがな!


 けれど、ここから、実は問題がある。

 仮にオリヴァー様ルートに沿っているのだとすると、これ以降は生徒会室や、お仕事をしている時に発生するものも多いので、一般生徒である私が見るのはなかなかに難しい。

 生徒会室とか、普通に忍び込めないしね。あと、外からも覗けなかった(実践済み)。

 だからこそ、今頃生徒会室で繰り広げられているであろうサブイベント×2を諦めているのに。

 覗きなんてはしたないことがばれたら下手をすれば退学だ。それはまずい。厳しい母上様に、割とリアルに修道院送りにされる。


 しかし、ゲームではスチル付きだったイベントをはじめ、ちょっとした会話シーンもできる限り堪能したい。


 さーて、どうしたものかなぁと思案していると、唐突に私を呼ぶ声が聞こえた。


「ミラ・リズールさん、だよね?」

 

 甘やかなバリトンボイスに、めっちゃ聞き覚えがあるなと思って声の方に顔を向けたら、そりゃ道理で聞いたことがある……どころかゲームで鼓膜にこびりつくほど聞きまくった声の主がいた。


「腹……レイリー殿下!?」


 腹黒、とうっかり言いそうになって慌てて言い直す。

 

 ヤバいヤバい、彼のその仕様は、彼に近しいラインハルト殿下やダリアン様、あとゲームだとオリヴァー様……っていうかゲーム知識のあるっぽいオリヴィア様は知ってるだろう。

 つまりそのくらいにしか知られていないはず。下手に口走って目をつけられたら殺される。肉体的というより、おそらく社会的に。


 名前の前に放たれた謎の言葉に一瞬、美しいご尊顔を傾げたレイリー殿下。畜生、やっぱりカッコいい。

 

 けど、一体彼が私に何の用なんだろう。ゲームでも接点はなかったはずだし、当然リアルでもない。初対面だ。


 自然と緊張で、表情が固くなる。


 そんな私の心を溶かすような、見事なアルカイックスマイルを浮かべた外面満点王子は、想像もしていなかったことを私に告げた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ