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聖女の追放と再会

作者: 華麗

短編です☆ 是非読んでください

 ️冬の冷たい風が吹き抜ける日、校庭の雪が一面を覆い、白銀の世界が広がる中、劇の幕が上がった。


 これから始まるのは、嵐川高校二年A組が心血を注いで準備した文化祭で披露する劇「聖女の追放と再会」です。


 日本の文化祭は通常秋に行われることが多いですが、ここ嵐川学園では毎年冬に開催されるため、冬休みが終わってすぐに準備に取り掛からなければならず、生徒にとってはそれがとても大変なのですが、今年の劇は気合いが入っていることもあってか、一段と注目を集めていました。


 舞台の中央に立つのは、聖女リリアンを演じる里原瑠奈(さとはらるな)です。


 彼女は、その美しい容貌と華やかな演技で観客の目を釘付けにしていました。


 そう、二年A組が開催する劇が注目を浴びているのは、主演する里原瑠奈の美しさが際だっているのと、加えて、ラノベ系の小説を日々書いて投稿している、クラスメイトの鈴中莉音(すずなかりおん)オリジナルの劇だからです。


 里原瑠奈は一年生の頃から学園中の憧れの的であり、鈴中莉音は若くして今年ラノベ系小説が出版されることになった注目の新人作家なので、この二人が劇に携わっているとなれば、期待が高まるのも当然でしょう。


 今回、公演する劇の内容は、里原瑠奈が王国の若奥様であるリリアンとしての務めを果たし、夫であるアーサー王子を演じる榎本大志(えのもとたいし)と、とても幸せな日々を送っていたというお話です。


――劇が始まりました。


 アーサー王子は彼女を心から愛し、彼の優しい眼差しと温かい言葉は、リリアンにとって何よりの支えになっていたのですが、リリアンの心は常に穏やかではありませんでした。


 何故なら、彼女の持つ不思議な力を妬む者たちが、彼女を追放しようと画策しているという噂が宮廷内に広がっていたからです。


 その夜、リリアンは寝室でアーサー王子に内心の不安を打ち明けました。


 彼女の声は震え、心の奥底から湧き上がる恐れがにじみ出ています。


 リリアンはベッドの端に腰を下ろすと、夜空に輝く星を見つめながら、慎重に言葉を選びつつ話し始めたので、アーサー王子は彼女の隣に静かに座ると、そっと彼女の手を握りしめました。


 彼の手の温もりが、リリアンの冷たい指先に伝わり、僅かな安心感を彼女にもたらします。


「今宵は不安で眠れません。アーサー、私にはわかるのよ、誰かが私を追放しようと企んでいるわ。私の力を妬む者たちが、私をこの宮廷から追い出そうとしているに違いありません」


 アーサー王子は深く息をつき、リリアンの瞳を真剣に見つめました。


 彼の心にはリリアンを守りたいという強い意志が宿っていたのです。


「リリアン、君を誰にも傷つけさせはしない、君がどんなに不安でも、僕が君を守る。君は僕の大切な妻であり、聖女としての役割も果たしている。誰が何を言おうと、君の力はこの王国にとって必要不可欠なんだ」


 リリアンの目には一雫の涙が浮かんでいました。


 アーサー王子の言葉に励まされる一方で、未来への不安も拭いきれません。


 しかし、彼女は心の中で誓ったのです。


――どんな困難が待ち受けていようとも、アーサーと共に乗り越えてみせると。


 こうして、その一夜を境に、リリアンとアーサー王子の絆はさらに深まっていきました。


 ところが、彼の声には確固たる決意が込められていたはずなのに、その約束は守られることは無かったのです。


 数日後、陰謀が実行されると、リリアンは聖女の地位を剥奪されてしまいました。


 そして、王国から追放されてしまったのです。


 仕方なく、追放された彼女は、アーサー王子に別れを告げると、新しい生活を始めるために遠くの村へと向かうことにしました。


 その村で彼女を迎え入れてくれたのは、優しい青年レオナルド、演じるのは佐々木純平(ささき じゅんぺい)です。


 彼は心優しい青年で、彼女からここに来た経緯を聞いた後、リリアンに新しい家を提供し、彼女が新しい生活を始める手助けをしてくれました。


 こうして、日々手助けしながら過ぎていく日々の中で、徐々にレオナルドはリリアンに好意を抱くようになっていきす。


 一方、アーサー王子はリリアンを失った喪失感に耐えられませんでした。


 彼は彼女を取り戻す決意を固めると、行くのを阻止する仲間達を払い除けるのうに王国を飛び出すした彼は、その足でリリアンの元へ向かったのです。


 そして、数週間後、彼はついにリリアンが住む村にたどり着きました。


 アーサー王子がリリアンの家の前に立ったとき、彼は久しぶりに会う彼女のことを考え胸が高鳴りました。


 ️そして、どのくらい待ったことでしょう、漸くドアから開き、出てくる彼女を目にした瞬間、彼はその喜びを言葉にできないまま、立ち尽くしてしまったのです。


 アーサー王子が意をけして、彼女に声をかけようとしましたが、今度は彼の目の前に別の男性がいることに気づきました。


 そう、彼はレオナルドです。


 レオナルドはリリアンの新しい生活の一部となっていました。


 アーサー王子は感情を抑え切れず、リリアンに駆け寄りました。


「リリアン、どうしてもお願いがある、戻ってきてくれ。君がいなければ、俺は耐えられない」


 リリアンは困惑した表情を浮かべた。


「アーサー王子、私は…」


 レオナルドも戸惑った。


「リリアン、君が幸せであれば僕はそれでいい。アーサー王子が君をこんなに愛しているなら…」


 リリアンはしばらく考えた後、決意を固めた。


「とても良い事を思いつきました。一つ提案があります。アーサー王子、私は追放されて旅立った日からあなたのことを忘れることはありませんでした。ずっと一緒にいたいと今でも思っています。でも、ここで知り合ったレオナルドも私にとって大切な人なのです。ですから、アーサー王子が良ければ、これから三人で暮らすことはできませんか?」


 アーサー王子は驚いた表情を浮かべたが、すぐに微笑んだ。


「リリアン、それは良き提案だね!君が望むなら、俺は何だって受け入れるよ」


 そして、アーサー王子はさらに思いを巡らせた。


「リリアン、実はもう一つの選択肢があって、君が追放されたことは間違っていた。だから、王としての権限を使って、その追放を正式に取り消そうと思っている。そうすれば、君もレオナルドも共に王宮で迎え入れることができる。2人共、この提案はどうだろう?」


 リリアンとレオナルドは驚きと感動で言葉を失ったが、リリアンはやがて微笑んで答えた。


「アーサー王子、それは本当に素晴らしい提案だと思います。私たち三人で、王宮で新しい生活を始めましょう」


 彼女の言葉を聞き、アーサー王子は深くうなずくと、リリアンとレオナルドを優しく抱きしめました。


 ☆


 アーサー王子がリリアンとレオナルドを迎え入れた後、三人は王宮で新しい生活が始まりました。


 彼らの再会と共に、王国中に幸福と希望が広がり、王宮の住人たちもまた、新しい三人の絆を尊重し、彼らの存在を温かく受け入れてくれたのです。


 リリアンは、これまでの知識と経験を活かしてアーサー王子の相談役となり、王国の政策や計画に貴重な意見を提供しました。


 こうして、彼女の洞察力と優れた判断力は、多くの場面で王国の発展に寄与していくことになります。


 レオナルドはというと、王宮の庭園の管理を任され、その才能を存分に発揮しました。


 彼の手による美しい庭園は、王宮を訪れる人々に安らぎと喜びを提供し、王宮の誇りとなり、そして、彼の勤勉さと創造力は、王宮の美しさを一層引き立てたのです。


 アーサー王子もまた、二人の支えを受けて以前よりも強く、賢明な王として成長していきました。


 こうして、三人の絆は日に日に深まり、互いを尊重し合いながら、王国の未来に向けて協力して歩んでいくことになります。


 ある日、王宮で盛大な祝典が開かれることになり、祝典では、アーサー王子とリリアン、そしてレオナルドの新たな生活の始まりを祝うために、多くの人々が集まり、盛大にお祝いが開かれました。


 こうして、彼らの物語は、勇気と愛、友情の象徴として語り継がれ、多くの人々に希望とインスピレーションを与え続けたのです。


 しかし、物語はここで終わりません。


 リリアンとアーサー王子は、互いの愛を育む中で最初の子供を授かりました。


 王国中は祝福に包まれ、新たな命の誕生を喜んだのです。


 一年後、リリアンはレオナルドとの間にも子供を授かりました。


 こうして、彼らの子供たちは、王宮の中で大切に育てられ、それぞれの才能を伸ばしていくことになります。


 アーサー王子とリリアン、そしてリリアンが追放された先で出会ったレオナルドの三人で暮らすという、新たな形の家族として、彼らは共に笑い、共に困難を乗り越え、いつまでも幸福な日々を送りました。


 彼らの絆は強く、王国の繁栄と平和を守るために尽力し、未来の世代にまでその愛と勇気の物語を伝え続けましたとさ。


 ――お・し・ま・い。


 ――こうして最後に幕が閉じました。


 ☆


 劇が終わると、観客から大きな拍手が湧き上がります。


 舞台のカーテンコールで、瑠奈、大志、純平の三人は手を取り合って深々とお辞儀をしました。


 舞台裏に戻ると、瑠奈は息をつくと笑顔大志と純平の元へ駆け寄ります。


「二人共、お疲れ様」


 すると、大志が真剣な表情で瑠奈に近づいてきました。


「瑠奈、ちょっと話があるんだけど良いかな」


「え、何?」


 瑠奈が首をかしげていると、純平も瑠奈に近づいてきました。


「ちょっとまった、あの、俺も同じく、ちょっとばかり話があるんだけど⋯⋯」


「えっ、そうなんだ、なら話してくれて良いよ、二人共順番に話て」


 瑠奈がそう言うと、二人は顔を見合わせた後、同時に口を揃えてこう言いました。


「好きなんだ。付き合ってくれないか?」


 その言葉を聞いた瑠奈は、驚きで目を見開いています。


「え、本当に?」


 大志と純平は真剣なまなざしで見つめ合った後、瑠奈に向き直るとうんと頷きました。


 突然のことでどうしたら良いか分からない瑠奈は、困っている様子。


「⋯…あのさ、僕達良い事思いついたんだけど、三人で付き合うってのはどうかな?」


 大志が大胆な提案をしてきました。


 この展開は、先程の舞台と同じストーリーのような⋯⋯。


「だよな、そうすれば、誰も傷つかないし、みんな幸せになれると思う」


 純平も同意しています。


 瑠奈は戸惑いつつも、しばらく考えた後、微笑みました。


「うん、そうだね、その提案悪くないかもね。二人がそれで良いのなら、三人で一緒に付き合うことにしようかな」


 こうして、劇の中だけでなく、現実でも三人は新しい関係を築いていくことになったのです。


 この様子を遠くから鈴中莉音は見ていました。


 彼女は、心の中で三人を祝福しつつ、「よし、次はこの三人を元に現実世界での小説のネタを考えよう」と心に誓ったのでした。





読んで頂きありがとうございました☆

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