現れた黒猫。
「にゃあーー」
「何だよ、あっちに行けよ」
纏わり付いてくる黒猫を足で蹴ろうとした瞬間だった。
『危ないな』
「えっ?」
『だから、足蹴にするんじゃねーーよ』
「喋った……?」
『物騒なもんもってんな』
黒猫は、俺の手から包丁を奪うとムシャムシャと食べ始める。
「えっ?」
『殺して、お前が罪に問われたら困るんだよ』
「ど、ど、どういう意味だよ」
『この場所をずっと守るって約束してくれたのにさ。お前がいなくなったら、この場所がなくなるだろ』
黒猫は、体を掻いて俺について来いと合図をする。
黒猫についていくと何故か開かずの間が開いていた。
「な、何で?」
『俺が来たから開いてるんだ。この扉の向こうにあるのは、俺の世界だ!この空間で繋がってるから、潰れたら困るんだよ。時々、深夜にやってきてはお供え物のキャットフードを持って帰ってたんだけどさ。ここがなくなったら、うまい飯食えなくなるだろーー。それに、勇者に渡す剣の材料も手に入るしさ』
「剣の材料?」
『そうそう。さっきみたいに食って、あっちの世界でトイレするわけよ。俺のトイレは、物体をそのまま出すから汚くないんだよ。で、胃袋が9つあるからさーー。キャットフード食ったら別の場所に行くから。便利なわけよ』
こんな小さいのにいったい何が出来るんだよ。
無理、無理。
絶対、何も出来ない。
『小さくたってお前の悩みは解決出来るぞ』
「えっ?」
『その代わり、俺が解決したら。お前は、剣の材料を集める協力をしろ。報酬はちゃんと払う。わかったな?』
「出来るならやってみろよ」
『契約成立だ。真夜中3時、部屋の窓から外を見ろ。お前の願いが、5秒で叶う』
「胡散臭い猫だな。ってか、猫が喋るのもよく考えたら変だな。喋ってるんじゃなくて、頭に声が響いてるだけとか?」
『何とでも言っておけ。真夜中の3時。忘れるなよ』
俺が頷くと黒猫は、開かずの間へと消えて行く。
母さんとずっと悩んでいたあの騒音が消えるなんてありえない。
これから、何十年も悩まされるだけだ。
あんな猫の言葉なんて嘘に決まっている。
どうにか出来るわけがない……。
誰もこの罪を裁けないんだ。
だから、あの猫に何て無理。
家を買った奴は、いくら騒音を出そうがバーベキューをしようが許されるのだから……。
母さんのように、俺がストレスで死ぬか奴等が死ぬしかないんだから。
こんな問題を抱えてる人は、世の中に凄いいるんだろうな。
でも、どこにも助けてもらえないから泣き寝入りするか我慢するしかないんだよな。
俺も、その一人だ。




