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長編小説のSS雑多置き場  作者: 糸のいと
■「俺は詐欺師だ。お前のことなんか好きになるわけねぇじゃん」
7/10

俺詐欺 番外編ワンスの枕おまけSS 【千ルドで買ったもの】

X(Twitter)からの転載です(2022年12月30日ポスト分)


番外編 ワンスの枕 4話おまけSS

4話↓

https://ncode.syosetu.com/n5798hq/111/



「で、これが枕カバーか」

「はい! これ、とっても希少な枕カバーなんですよ」

「……お、おう」

「キショーシュの皮で出来てるんです!」


 どうみてもただの綿素材の枕カバーだが、ドヤ顔で説明してくる彼女が割とツボだったため、少し掘り下げたくなる意地悪ワンス。


「希少種? 何の動物?」

「? キショーシュです」

「なるほど」


 キショーシュという動物の皮だと思っている様子に、さすがに笑いそうになるが、ここも堪える。


「俺、知らないから教えて欲しいんだけど、キショーシュってどんな動物?」


 フォーリアは感激で震えた。『知らない』と言っているワンスを初めて見たし、教えて欲しいなんて言われたのも初めて。初めて尽くしの快挙に大興奮!


「は、はい! キショーシュっていうのは、」

「うん」

 

 そこまで言ってハッと気付く。フォーリアもキショーシュのことは何一つ知らなかったのだ。当たり前だ、そんな生物はいない。

 でも、フォーリアは知らないとは言えなかった。言いたくなかった。ワンスに教えてみたい、その欲が彼女を知ったかぶりにさせてしまう。


「キショーシュは、その、……鳥みたいな?」

「なるほど」


 彼女の思惑が透けて見えるワンス。もちろん、吹き出しそうになるが、ここもどうにか堪える。彼女の目がスイスイと泳いでいるところを見るに、希少種に関する質問をこれ以上投げたなら、彼女の頭が爆発してしまうだろうと、名残惜しいがここで打ち切る。


「で、これいくらだったんだ?」


 贈り物の値段を明け透けに聞くワンスに、「枕と合わせて千ルドでした」と素直に答えるフォーリア。


「……千ルド?」


 今度は笑えなかった。むしろ心配になった。


「はい。枕カバーだけで二千ルドのところを、千ルドで買えたんです~」

「待て待て。そもそも、枕はいくらで買ったんだ?」

「えっと、初めに四千ルドで買って」

「四千」

「三千ルド返して貰いました~。なので千ルドです」

「なるほど?」

「ふふっ、とっても頑張りました!」


 ワンスは『まじでやべぇな』と思いつつ、どうするべきか迷った。ここはやはり、ちゃんと教えておくべきだろう。教え込まなければ、彼女はまた同じ事を繰り返す。

 今回、枕カバーを二千ルドで買わずに済んだことだって『サインをするな。するときは俺を呼べ』と毎日毎日教え込んできたのが功を奏したわけだし、今回は千ルドというワンス的端金だったから良かったものの、そのうちワンディング家の資産を食い潰す可能性だってある。伝説的カモの実力、侮るなかれ。


「あのさ、フォーリア」

「はい?」

「枕のことなんだけど」

「はい!」


 褒めてもらえると思っているのだろう。エメラルドグリーンの瞳がキラッキラのキラーだった。キラーされた。


「あー……よく三千ルドも取り返せたな。すげぇじゃん」

「~~っ! はい!」


 ワンス・ワンディング、元詐欺師。彼女の笑顔、千ルドでお買い上げ。




四六時中、キラーされてる主人公

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― 新着の感想 ―
[一言] フォーリアちゃん、ある意味で「傾国の美女」ですよね…笑 ワンスがもらってくれて命拾いした某ニルドと某領地の誰それの息子はいたと思います笑
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