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長編小説のSS雑多置き場  作者: 糸のいと
■潜入騎士の『愛してる』には裏がある
5/10

潜入騎士 94話おまけSS【一度もない、の破壊力】

94話↓のおまけSS

https://ncode.syosetu.com/n3358ii/94/


 クロルはトントンと包丁の音を響かせていた。酒を飲みながら、酒のつまみを作っているのだ。


 その横で、トリズはウイスキーを飲みながら結婚話をしてくる。婚約指輪だのドレスだの、ぴーちくぱーちく。ちょっとうるさいな、なんて思ったり。


「はぁ、はやく彼女と結婚したいな~」

「結婚願望つよすぎじゃね?」


 クロルが軽く笑って言うと、トリズは少し首をかしげる。


「いつも思うんだけどさ~、クロルたちって、そーゆー願望が薄い割には、愛が重たいよね。闇が深そう~」

「言われたくねぇわ」


 闇が深いトリズに、闇の深さを指摘されるクロル。どちらも真っ暗闇だ。


 トントンとリズミカルな包丁の音に合わせて、クロルはぽつりと話をする。


「……レヴェイユってさ、結婚願望ないらしくて」

「それ、さっきから何回も言ってるよね。なにか引っかかってるんだ?」

「引っかかってるっつーか……あいつ、結婚したいと思ったことが、一度もないんだって」

「へ? 一度も?」


 そんな素敵な話題を投下されてしまっては、ほろ酔いトリズは楽しそうに核心をついてしまう。


「じゃあ、あんなにクロルのこと好き好き言ってるのに、結婚したいと思われたことないのか~。なんだ、案外、愛されてないんだね!」


 刻んでいた野菜にグサッと包丁が刺さる。危ない危ない、手元がくるったようだ。


「……単純に、結婚に価値を感じてないだけだろ」

「え~? ずっと一緒にいたかったら、結婚するのが一番手っ取り早いのに?」

「効率の問題じゃなくて、結婚には拘束力がないって話。約束やぶるのなんてカンタンでしょって言ってたし」

「あ、なるほど~。結婚したとしても、どこぞの女をたらし込んで浮気するだろうから、意味がないって思われてるのか~。なんだ、案外、信頼されてないんだね!」


 ナイフが滑って、パンにドスッと刺さってしまった。切りにくいナイフだな。


「俺は、浮気なんて絶対にしない。信頼もされてるし、文脈的にもそういう意味ではなかった」

「え? ハニトラの名手だって知られてるのに、女関係で信頼されるわけなくない? 案外、夢見ちゃうタイプなんだね! あはは、おもしろ~い」

「……」


 そこで、おつまみ完成。


「トリズ。つまみ、できたけど」

「あ、おいしそ~。いただきまっっっずぅう! え……なにこれ。何味? 酸味? 甘味?」

「さぁ? 強いて言うなら、悪趣味?」

「……えへ、ばれた? ちょっと楽しくなっちゃって」

「メンタルにくるからまじでやめて」

「へこんでてもイケメンだね!」

「なんの慰めにもなんねぇよ」


 まずいまずいと連呼しながら、二人で食べた。




 



90話のカーテン越しでの会話。

「一度もない」にショックを受けていたクロル。

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