表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
長編小説のSS雑多置き場  作者: 糸のいと
■潜入騎士の『愛してる』には裏がある
3/10

潜入騎士 66話カットSS【ブロン、ドレス工房でゆる活躍】

※クロル、レヴェイユは出ません


66話↓

https://ncode.syosetu.com/n3358ii/66/



 あれは本当に王女の天啓だったのかもしれない。意外なことに、ブロンは側近として十分な働きを見せていた。


 例えば、ドレス工房での商談のときとか。


「グランド商会に、私のドレス工房を売りに出すなんてお断りです! 他を当たってくださいな!」


 商売人グランドは、こんな物言いをされても淡々と切り返す。


「マダム、貴女のドレス工房は、実に素晴らしい。技術力もさることながら、貴女の人柄に惹かれたという貴婦人が後をたちません。ですが、借金を抱えておられるのでしょう? このままでは、」

「お引き取りくださいませ!」


 そんなドレス工房の店主の会話を、横で聞き流している側近のブロン。

 商いというものを一切理解していないブロンは、あくびをするので大忙し。青い瞳の上にまぶたが重なりそうになるが、そこらへんに飾ってあったドレスを手に取って眠気を覚ます。


「おーふわふわ。あれ? ここってハンナのお気に入りの店じゃん」

「……ハンナ様?」


 眉をひそめるマダム店主。ブロンは、さわさわふわふわ触って遊んでいたドレスを取り上げられてしまった。


「触らないで頂けるかしら? ……あなた、ハンナ様のお知り合い?」

「うん。この店のドレスが可愛い可愛いっていつも言ってるよ」

「あら、そうなの?」

「ジュリアは水色のドレス、ローシーはピンクのドレス。みんな、この店のドレスを着て、夜会に行くのが楽しみって言ってたっけなー。マダム店長、すごいじゃん!」

「そ、そうかしら?」


 マダム店主は、まんざらでもなさそうにパラパラと顧客名簿を広げる。「ジュリア様……水色。ローシー様はピンク! 確かに」と、目を見開く。


「金髪の坊や。あなた、どうして彼女たちのドレスの色までご存知なの?」

「どうしてって……友達だから?」

「ご友人ねえ?」


 通常、ドレスの色やデザインは、ご令嬢的トップシークレットだ。夜会の当日までひた隠しにして、色が被ったならばマウントを取り合い、色が被らなければ見下し合う。そういう楽しみのためにも、誰もが秘密にするもの。そんな情報を何人分、知っているのやら……。


 マダム店主は、スススッと音もなくブロンに寄ってくる。


「コホン。他のご令嬢のお色もご存知なのかしら?」

「あー……まあ、調べれば分かるとおもうけど」


 そうなってしまうと、グランドもスススッと寄ってくる。


「マダム。向かいのライバル工房で仕立てられているドレスの色やデザインも、うちのブロンが教えて差し上げましょうか? 上手くやれば、ライバルでなくなるかもしれませんね」

「なるほど。致し方ありません。この商談、乗ります!」

「交渉成立でございますね。ブロン、頼んだぞ」

「……ハーイ」


 情報屋ブロンは思った。このマダムの人柄に惹かれて人気店になっているとか何とか……それ、どこ情報?

 



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ