表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ほ~むらん☆倶楽部  作者: 機関車上田
隠し球の章
9/37

校舎裏にならぶ花壇は西半分が

 校舎裏にならぶ花壇は西半分が第三生物部、東半分が園芸部のものだった。園芸部のほうは春の花々が咲いて絵画のようだった。

「きれいですね! 世話が大変でしょう?」

「特別なことはしてないわ」

「この花は水仙? その横は蓮華?」

「黄色いけどクロッカスね。そっちはアネモネよ」

「これは桔梗? それとパンジー?」

「ムスカリとヴィオラね」

「こりゃわかる、間違えるわけがない! 薔薇だ!」

「ラナンキュラスよ」

「……あっはっは! あたし全然花とか知らなくって!」

 薫は無学を笑って誤魔化そうとする。野球ばかり頑張ってきたからアヤメとショウブとカキツバタの区別もできないことが辛い。

 しかし円佳が微笑んだ。

「うふふっ。王乃さんって面白いわ」

「あたしが?」

「表情がころころ変わってすごくかわいい。自信持っていいわよ?」

 かわいいだなんて。

 小柄な先輩に褒められて薫はくすぐったい気分になり、同時にひとまず女装はバレなさそうだとホッとした。

 しばらく花の香りや春風を楽しんだ。新しい球根を植える手伝いもさせてもらった。薫は久々に胸の奥がほぐれた。

(落ち着くなあ、この人といると……)

 なんとなく先輩の横顔に目が行き、園芸部で彼女と過ごすことを想像した。花のことをイチから教えてもらい優しい時間を味わえる日々を。

 悪くない。運動部の勧誘をかわすためにも文化系クラブには入りたいと思っていし、園芸なら男バレはなさそうだ。

「ねえ王乃さん。毎週火曜と水曜、空いてるかしら?」

「火曜と水曜?」

「わたしとほかの体験もやってみません?」

 思いが通じたみたいにタイミングがいい。幸運の女神に見えた。

「はいっ! この部に入部します! 円佳先輩と何でもやりたいです!」

「『何でも』……? ありがとう王乃さん。とってもうれしいわ!」

 NANDEMOという言葉を彼女が復唱した一瞬だけ時が止まったような気がしたんですが……あれ、まずいこと言ったかな?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ