四月、入学してすぐの体力測定で
四月、入学してすぐの体力測定で薫は力をセーブするつもりだったが、ふと隣の走路の子に負けたくないと思い、ついつい五〇メートルを五秒三で走ってしまった。女子たちが騒いで群がってきた。
「すごいわ王乃さん!」「なんて俊足! いっしょに自転車部入らない!?」「いいえ水球部に!!」「フェンシング楽しいわよ!!」「トライアスロンにご興味は!?」「支えつりこみ足!!」「デコピン研究会」「セーーーーーパーーーーーターーーーークーーーーーローーーーー!!!!」
王乃薫、十五歳、高校一年生。
男。
ここは聖タイカップ女学院のグラウンド。薫以外は女子ばかりだ。
ちなみに聖タイカッ「プ」女学院なので決してタイカッ「ブ」と間違えてはいけない。本作は実在の人物・団体とは一切関係ありません。
薫は男であることを隠して入学した。
だから今はこう考える。
(運動部なんて入ったら絶対着替えで男バレするだろ!)
しかも万が一公式戦でバレたら部には出場や活動の停止処分が下されて大迷惑をかけるかもしれない。
「お、お誘いありがとう……でもあたし、だめなんです。家で毎日たまごっ○の世話しなきゃいけないんで……」
「「「ええーっ、ウソでしょーっ!!」」」
「すみません、どうしても無理で……ごめんなさい……」
頭を下げまくってどうにかやりすごした。
ウソで男バレを回避しなきゃいけない場面がこれからもやってくるだろうと思うと薫は頭痛がしてくる。
そもそも彼が女子高にいる理由はというと……
~回想シーン~
三月、南太平洋、バヌアツ共和国、エロマンガ島。
「心の傷をいやせ」
そう父に言われ、薫はこの実在の島の別荘ですごしていた。別荘は七〇〇LDKの平屋でジャグジーが一二〇個ある。