死人の世界
灰皿の上で燃え上がる遺書を目にし唖然とする。
突然の異常な行動に言葉を失い、状況を把握するのに時間がかかる、そして少しして部屋の異変に気づく。
紙を燃やしてるだけなのに煙が異様に多く部屋を包み混んでいたのだ。
「神鬼さんこれ大丈夫なんですか消した方がいいじゃ」
煙に包まれ神鬼の姿が消える。
慌てて立ち上がり、消化器を取りに行こうと前に動く。
「動かない方がいいよ、それ以上行くと死人の世界だ」
前にいたはずなのに後ろに回られ耳元でささやかれる。
ゾクゾクと背筋に寒気が走り、耳元を押さえ勢いよく後ろに拳を出しながら振り向く。
前に出した拳は神鬼の腹に少しめり込みながら、後ろに少し吹き飛ばした。
「何をするんですか、私びっくりすると拳が出やすんですから気をつけてください」
「殴る前に教えてくれよ」
腹を抱えながら神鬼は立ち上がり、服を払う。
服を払い終えるとポッケから何かを取り出し朧の前に差し出す。
「何ですか?」
「数珠だよ」
ニコッとわらう。
「さっきも言ったようにここは、死人の世界、許可無き生者は入れない、つまりこの数珠はこの世界での生者が来てもいいって言う許可証みたいなものだよ」
死人の世界、そのことを考えるだけで少し手が震える。
震える手で差し出された数珠を受け取り、腕にはめる。
「本当にこれで大丈夫なんですよね」
半信半疑の表情で神鬼を見つめる。
コクリとうなずき、横を通り前へと進んでゆく。
少しの間、考え事で止まっていた朧はおいて行かれないように少し開いた間を小走りで埋める。
空は赤黒く、遠くから人の叫び声やうめき声が混じったような音が、微かに聞こえる。
道は整備された一本道がくねくねと丘の上にある大きな建物に続く。
道の脇には無数に切り株があり、その奥には険し葉をした血のようなものを垂らす木々がこちらを見つめてるように生え並ぶ。
そんな不気味な道を5分ほど神鬼は無言でニコニコしながら歩き、その後ろを朧は少し警戒しながあら歩く。
歩いてると少し離れたところに切り株に座る人の影が見え、神鬼はその人影へと近づいていく。
近づいて気付く人影は影そのものが下を向き大きくため息をつきながら座っていた。
「久しぶりだな、影ちゃん」
影が顔を上げる。
女性らしき影にギザギザした歯と鋭い目、口は大きく、影でできた髪が長くとげとげして、地面まで伸び影の中へと伸びていた。
「その声は、神鬼か」
影ちゃんと呼ばれる彼女は、神鬼の顔を確認した後、後ろにいた朧を目を細めて確認する。
「神鬼よ、また妙な人間連れて来よって、そんなことはまぁ良いけど、今回はなんの要じゃ?」
「枯木さんがこっちに帰ってきてるだろ?だから会いに来ただよ、枯木さんの娘と一緒に」
娘という言葉に驚き鋭い目を真ん丸にして朧に近づき、品定めするように周りをグルグルとまわる。
「なるほど、そいうことか、あの爺が急に帰ってきて、すごい楽しそうに人間の話をしやがると思えば、なるほどね」
「それで、通してくれるかい?」
「あぁ、そっちの道を行けばすぐにつく」
木々のほうを指さすと、血しぶきみたいなものを上げ、木々が新たな道を作り出す。