この国は予想以上に酷いようです。
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「あれは……龍?いや、まさか龍がこんなところに現れるはずもない。ましてやあれは人の形をしているではないか。龍が人の形をとっていたなどそんな記録は今まで無かったではないか。」
1人セレシスが考えをめぐらせる中でも少年は魔法を上から弾幕のように放って魔物という魔物の一切合切をねじ伏せている。
まるで魔物が本当に薄い紙切れのようにあっさりと燃やされ、切り刻まれていく。
「ん〜やっぱりまだ風魔法は【暴風】を使っている時は安定しないなぁ。どうやったら安定するんだろう。魔力を流す時に回転を減らしてみるか…」
やはりあの魔法の数々は10歳ほどであろう上空の少年の撃ち出したもののようだ。
「一体何なのだ。あの生物は?」
もはや他の騎士に至ってはあの少年を人と認識していないような発言も飛び出す。それも分からない話でもない。
彼の使っているであろう魔法の数々は正直王都の魔術師が束になってもあの数と速さで撃ち込むのは不可能である。
唯一あの方ならば無理難題とまでは言えないだろうがそれはあの方が異常なだけでそれと同様、もしくはそれ以上の力を見せつける彼は一体何なのだろう。考えでも全く答えは出ない。
地獄のような炎の竜巻と火炎弾の絨毯爆撃、風のカッターによる無差別スプラッタショーは終わりを告げた。なんてことは無い。魔物が全員消滅したのである。風によって切り刻まれた死体は既に凄まじい熱量で塵と化している。辺りを見れば今まで本当に魔物がここにいたのか?と問われるほどに辺りには何も無い。いや、よくよく見れば自分たちのたっている台地と魔物のいたところは標高差が半メルトルほどあった。
しかし、ふと思い出せば自分たちのたっているところと魔物のいたところは元々同じ平地だったのだ。なぜまもののいたところだけが凹んでいるのだ。最早考えることすら嫌になる。
刹那、ふわふわと少年が降りてきた。降りてきた時は普通の少年然とした格好と身なりだ。
「今の魔法は全て君が打ったのか?」
ほとんど答えなど出ているだろうに聞いた。
「ええ。そうですけど。あなた方は……あ!王都からいらしていた騎士団の方々ですか!あーすいません。自分が勝手に倒しちゃったせいで……報告書とか、ごめんなさい。」
「いっ……いや、いいんだ。君こそこんな若そうなのによくあんな魔法が使えるね。おじさん達驚いちゃったよ。」
「あ〜。そういうことですか。威力は押えてましたけどやっぱり僕のこの魔法は異端なのでしょうかね?でもな〜こんなこと報告されたら正直僕も困るからな〜。
ここらで全員始末してしまおうか。」
ゾッとするほどの凄絶な殺気。先程までの温厚な人柄とは打って変わって少しでも気を抜けば即座に首が飛びそうな気配までする。ましてやついさっきあそこまでの実力の差を見せつけられて疲れきった騎士達に抗う術はない。
「まぁまぁ〜。そんなに固くならないで。僕だってまだ人は殺したことないんですよ。今見た事は全てそう、全て忘れてくれればいいんですよ。僕だって鬼や悪魔の類じゃないですから。黙ってさえいてくれれば僕は何もしません。」
そんなことを凄絶な殺気と極上のスマイルで言われるものだから騎士達は決意した。
『ああ、こいつには手出ししちゃいけない。』
ただし、1人だけセレシスだけは違った。
『彼がいればこの国は、いや、腐れきった王都は変わる。』
そう確信してしまった。それ故に彼は少年に1つ質問をしてしまう。
「少年。名前はなんという?」
「アハト。姓は無いよ。」
「非礼は承知。無理を言っているのも承知している。どうか、どうかこの国を……アハト君。あなたに変えて欲しい。」
「っ……団長!!それは!!」
「黙れ!今は彼に聞いているのだ。」
「具体的には何をすればいいの?」
「アハト君。君に王都にある魔術学園に通って欲しい。その中で腐れきった貴族至上主義をぶち壊してやって欲しいんだ。無茶だと言われたらしょうがない。しかし、君のような破壊的なインパクトのある人間でなければもうこの国は変わらないほど!腐ってしまっているんだ!」
それはこの国を戦争という面で最も長く見てきた男の願いであった。戦争の度に民は疲弊し、作物を作る畑は戦場だと言われて踏み躙られた。
アサ村はいい方である。特産物がなく、辺境といえども村を超えた先にあるのはただの砂漠。こちら側には戦争の矛先が向かず平和に暮らせる。しかし、隣国の魔功国ディランシア方面や王都からずっと北に向かった先にある超大国エネレセストが控えている方面では毎年のように戦争が起こる。
国は5~6年前からだろうか。王政とは名ばかりの宰相たちによる独断的な政治に変貌してしまっていた。
ここまでの話を聞いて、彼は何を想っただろうか。想ってくれただろうか。全く表情からは推し量れない。
「1つ、聞いていいですか?王都には強い人達がいますか?学校にもいますか?」
「確証はできない。ただ、1人君を超える可能性を秘めた子がいる。しかも、彼女以外にも優秀な生徒は多い。特に生徒会の面々。彼女たちは伊達に実力至上主義と言われる学校をまとめあげている訳では無い。強いよ。はっきりいって。」
「では。入学するとしましょう。」
アハトの顔には素晴らしいまでの笑みが張り付いていた。
そう、それは獲物を見つけた野獣のような凶暴な笑みだった。
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