第四.五章 第三話
三日後、前田侯爵邸にて。斯波実森は、分家の斯波忠三郎男爵に連れられて、前田利為侯爵の目の前に座していた。
「初めてお目にかかります。斯波家当主、実森にございます」
「加賀前田家当主、利為である」
「この度はお招きいただき、有難う御座います」
「忠三郎に礼は言ったか?」
「はい」
「早速本題に入るが、我が加賀前田家は、貴殿に支援を行いたいと思っているのだが、忠三郎から聞いたか?」
「はい、正直恐れ多いことにございます」
「はっきり言おう。貴殿を助けることで、我が家に利することはほぼ無い。ただあくまで、代々我が家に尽くしてきた津田家、もとい加賀斯波家の忠三郎の頼みであるから、こうしてこの場を設けた」
「理解しております」
「強いて言うなら、戦国時代に当時の主家である織田家に従って、貴殿の先祖を尾張から追放したことがあった。そのお詫び、とも理解してもらっても構わない」
「あれも、あの時代でしたから…」
「まぁ、それもそうか。まぁ、とりあえず色々今日は、3人で話そうではないか」
それから2時間ほど、実森、忠三郎、利為はコーヒーを飲みながら語った。
「なるほどなぁ、やはりアメリカは、我が国を警戒しているのか」
「はい、その通りです。下手したら、20年以内に日本という国に対しても、圧力を強めてくるでしょう」
「全然あり得る話だな。だが、逆立ちしても立ち向かう事すら叶わないだろう…。忠三郎はどう思う」
「殿と実森殿と同意見です。人口も産業も、天と地ほどの差があり、いくら帝国海軍が精強といえども、数年は持ちこたえられるかもしれませんが、最終的には資源を枯渇させて、完敗するでしょう」
そして、会話もたけなわになってきた。
「今日は色々有難う御座いました」
「流石、アメリカ帰りだ。語学だけでなく、色々なことに目を向けている。これからは、こういう人間が日本に多く出てくれば良かったのだがな…」
「まぁ、まだ欧州は平穏でしょうし、そちらとの関係を…」
「それも、日英同盟が解消されたから、どうなるか分からんだろうなぁ…」
「…」
「まぁ、それは良い。わしは決めたぞ。そなたに仕事を用意しよう」
「し、仕事ですか?」
「知り合いに、京都の立誠館の教授が居る。私から、貴殿がそこで働けるように頼んでみよう。まぁ、断られることはないはずだ」
「い、良いんですか!?」
「まぁ、赴任は来年以降になるだろうけどな。それまでは、衣食住はこちらで支援しよう」
「何から何まで有難う御座います!」
「但し、全てタダというわけにはいかん。赴任までは、わしの息子たちの家庭教師になってくれ」
「分かりました!」
こうして、暫くの食い扶持を確保した実森であった。




