第四章 第七話
翌日朝、沙織たちは送迎の車を待っていた。
「沙織ちゃん、大勢で移動するのって、バレたりしない?」
「私は大して変わらない思うなぁ。結局変装次第だと思ってる」
「まぁ、それもそうですよね」
沙織と奈穂が話しているところに、二台の車が到着した。それらの車から、ぞろぞろと降りてくる。
「おはようございます、沙織姉貴!まさかこんなに早く日本に来てくれるとは思ってませんでした!」
「沙織さん、今日はよろしくお願いします」
と、秋津悠斗と東城洋介。そして、その横に、勝村美桜、宮川萌恵がやってきた。そして、洋介と美桜の間に、もう一人少女が入ってきた。
「お姉ちゃん、紹介するね。この子が、西村美咲さん。洋介さんの幼馴染で恋人!」
そう言うと、美咲が照れながら、
「初めまして、西村美咲と申します。今日はご一緒させていただきます」
と言った。
「楠木沙織です、宜しく御願いします。いつもテレビで活躍を見させてもらってます」
「有難う御座います!」
「ソロで良くここまで頑張ってるね。応援してます」
後に、沙織と美咲も親友となるのだが、暫くは単なる『沙織の知り合いの恋人』という関係に留まることになる。
「ささっ、とりあえず車の中へ」
洋介の言葉で、皆、車へ乗り込んだ。
20分くらい車を走らせた後(因みに運転しているのは、秋津文彦と東城幸一)、靖国神社へ到着した。
「ここが、靖国…」
「そうです。ここに南興出身者含めた英霊たちが眠っておられます」
「凄く、緊張してきた…」
悠斗の先導で、沙織たちは境内へ入っていった。ゆっくり参道を歩いていたが、誰も彼女たちの正体に気付く気配はない。
「雰囲気が荘厳。興城神社よりも…」
「そうね…」
奈穂も、その雰囲気に圧倒されていた。そして、沙織たち9人は本殿で参拝をした。
「南興出身の軍人達に挨拶できて良かった」
「何よりです」
「両国の為にも、また来たいわ」
「そうしてください」
その後、靖国神社に隣接する資料館『遊就館』を、二時間かけて回ったのであった。
その後、料亭に移動した。そこには、大物三人が待っていた。
「楠木大統領、ようこそいらっしゃいました」
「こんにちは。昨日はドタキャンまがいのことをしてしまい、申し訳ございませんでした」
「いえいえ、事情は森田から聞いております。あそこの家もなかなか大変そうですねえ。私も若いころから、その家の存在は知っているのですが」
物部泰三は言った。
「そうだ、ご紹介しましょう。こちらが、株式会社パーソナルリクルートサービスのオーナー、竹内蔵之介さん。そして、その隣が、坂グループ等のアイドルグループや美咲さんのプロデュースを手掛けている作詞家の春本健一さんです」
「初めまして、竹内です」
「春本健一です、この度は楠木大統領のお目にかかることができ、光栄です」
竹内は、軽く会釈したのみで、やや高慢な感じであったのに対し、春本はある程度弁えているのか、控えめな態度をとった。
その後、豪勢な料理が並ぶ昼食兼小宴会となった。その光景に、若い悠斗や洋介、そして3人のアイドル達は目を白黒させていた。
「皆さん、遠慮せずに食べて。ここは私たちと、秋津議員、東城一佐が持つから」
そう物部が言うと、皆礼を言って、料理を食べ始めた。
「さて、悠斗君や美桜たちの前ではありますが、敢えて例の話をしましょうか」
「大丈夫ですよ」
「私たちも、ちゃんと内緒にするから、お姉ちゃん遠慮なく話して」
美桜の言葉に、萌恵や悠斗たちも同調した。
「では、私の方から」
春本が話を始める。
「今年の9月あたりに、興城ドームで児玉坂34のコンサートをやりたいのです」
「はい、是非とも開催してもらいたいと思っています。私の方から政府に話をしておきますよ」
「おお!それはありがたい!」
「設営などは、私の会社が担当したいと思っているのですが」
竹内が言うと、これも沙織は了承した。
「我が日本政府も、これを機に貴国に気持ちばかりの支援をしたいと思っておりますが、大統領、いかがでしょう?」
因みに、こういう金銭支援は、下手をすると大国の経済的支配下に置かれてしまう危険性がある。しかし沙織は、物部が提示した金額や意図を聞き、危険性は無いと判断し、これを受け入れた。
「では、我が南興としても、国を挙げてコンサート成功に向けて尽力しますので、宜しく御願いします」
「「こちらこそ」」
「宜しく御願いします」
こうして、小宴会を兼ねた密談は終わった。




