第四章 第五話
2月16日夜、沙織と奈穂は成田空港に到着した。出口では、森田正好、このみ親子が待っていた。
「森田さん、またお邪魔します」
「今回も、遠慮なくのんびりしてください」
「今回は3泊4日だったっけ?」
「そのつもり」
すると、沙織の携帯に着信が入った。
「もしもし、お久しぶりです」
「どうもお久しぶりです、沙織さん。今大丈夫ですか?」
「はい、少しなら」
「今、モンゴルに居るかと思うのですが」
「あぁ…。内緒にしてほしいのですが、実は今日本に…」
「おお!それは丁度いい!大変申し訳ないのですが、明日朝、私の屋敷に来ていただけますか?」
「どうなさいましたか?」
「実は………」
その内容に、沙織は驚いたが、直ぐに用件を承諾した。
「どなたから?」
「宇喜多さんからです」
「おお、なるほど」
「どうやら会わせたい方が居るらしく」
「ほほう」
「その方というのが………」
「ええっ!?」
「私もビックリしました」
「それは是非行った方が良いかと。できれば後程、あの家の動きを教えていただければ」
「分かりました」
「明日の物部さんとの朝食会ですが、こちらから断っておきますので、お気になさらず」
「いや、もし物部さんが良ければ、奈穂を代わりに出しますので」
「なるほど、私は構いません。物部さんにもそう伝えておきます」
その日の夜は、森田邸で、岸本勇雄保守党政調会長、佐々木正敏議員らとホームパーティーを楽しんだ。岸本は、森田が所属する派閥の長であり、物部とはライバル関係にある(と同時に、信頼・重用もされている)。
「森田からは、度々沙織さんの話を聞いております。わが岸本派としても、南南興との関係を重視しておりますので、何卒宜しく御願いします」
「こちらこそ、森田さんには良くしてもらっております。両国の発展の為、協力してやっていければと思います」
そのような会話はパーティーの冒頭のみで終わり、それ以降はあまり政治的な話題にはならず、終始和気藹々とした雰囲気であった。
翌朝、沙織は宇喜多秀和邸に来ていた。
「突然呼び出してしまい、申し訳ございません」
「いえいえ、大丈夫です。それより、俄かに信じられないのですが…」
秀一と沙織が会話し始めて間もなく、インターホンが鳴った。
「お、思ったより早かった」
そう言って、彼が客人たちを出迎えて、応接間に連れてきた。
「ご紹介しましょう。こちらが、加賀前田家次期当主:前田利宣さん、そしてこの女性が、管領斯波家当主:斯波睦子さんです」
「お初にお目にかかります。前田利宣です」
「斯波睦子といいます」
「南興楠木家当主:沙織と申します」
驚くのも無理はない。やってきたのは、(徳川将軍家を除く)江戸時代最大の大名家である前田家の当主と、度々話題に挙がっていた、あの斯波家の当主だったのである…。




