第四章 第二話
2月14日、沙織はとある場所へ飛ぼうとしていた。
「緊張するなぁ…。というか…」
「ん?どうしたの?」
「奈穂ちゃん…、行きたくないよ~!」
「あはは、でも自分で決めたんでしょ?」
「そうだけど…」
沙織は、側近の奈穂に泣き言を言っていた。
「あんなコワい人…、何を言ってくるか分からないし…」
「そんな、少なくとも私達を殺そうとはしないわよ」
「だけど…」
「沙織ちゃん、そろそろ出発するぞ。シートベルト閉めろー」
岩松正純が、パイロットに離陸を指示した。
「大丈夫だ、俺が居る限り、周陣兵は何もしてこない」
沙織一行は、一路、中華人民共和国の首都、北京へと飛んで行った。
その頃、北京では…。
「南南興め…、この二十年あたり、我が国がどれだけ支援してやったと思っているんだ…」
「というより、楠木正興があんなに早く死ぬとは」
周陣兵国家主席と李国強首相が話していた。
「聞いたところによると、あいつ、重篤になってから尚数日生きていたらしいではないか。どうせ死ぬなら、文字通り『急死』してくれれば良かったわ。そうすれば、そのまま正朝が跡を継いで、我が国との友好関係を強化してくれていただろうに」
「まぁ、確かに…(故人に対して相当に失礼なことを言うなぁ…)」
「それがどうだ、今は。日本贔屓の小娘が跡を継いで、初めての外遊先にも日本を選んで、我が国を警戒する保守党や改新党の幹部達と仲良くしているらしいじゃないか。わしへの当てつけか?」
「いずれにしろ、今回の会談では、ある程度宥めることが必要かと思う。くれぐれも、威圧的になりすぎないよう…」
「分かっとる!君までそこまで言うな!」
そう言って部屋から去っていく周を見ながら、李は彼に聞こえないように溜息をするのであった。
また所変わって、ワシントンDCでは…。
「ふぅ…、やっぱりマクドナルドのビッグマックは美味いなぁ!」
ロナルド・ジョーカー大統領が、大好物を楽しんでいた。
「大統領…(苦笑) どんだけ好きなんですか…?今月でもう3回目ですよ?」
彼のマクドナルドへの執心ぶりに、テイラー・マルティネス国防長官は少し呆れ気味である。
「どんだけ食おうと勝手だろう?美味いんだから」
「まぁ、一応レタスも入っていますしね」
「それはそうと、南南興は、何を考えているんだ?」
「確か、今日から中国へ行くようですね」
「それよ、まさか中国に近づくなんてことは…」
「彼女に限って、一切ないでしょう」
マルティネスは断言する。
「ほう?」
「彼女は、反中派に推されて大統領になった娘です。万が一にも、中国にはもう近づかないでしょう」
「大分自信ありげだな」
「ただ、後継者から外された正朝は極度の親中派。彼は未だに一定の地位を保持していて、彼に近い党幹部もそれなりに居ます。彼らが暴発しない限りは、あの国は日本への接近を止めないでしょう」
「なるほどな」
「但し、我が国との関係修復まで踏み込んでくるかは、まだ分かりません」
「う~ん…。やはりあの島は、一筋縄ではいかんな…」
そう言うとジョーカーは、フィレオフィッシュに手を伸ばして、そのままパクつくのであった。




