第三章 最終話
その夜、沙織と奈穂は、青梅一郎副総理兼財務相の邸宅に招かれ、森田正好農水相、荒垣健防衛相、そして秋津文彦・保守党政策調査副会長の六人で、会食を行った。
「今回は色々な方と会われたようで」
青梅が沙織に話しかける。
「はい、物部総理との会談の後、改新党本部に招待されたり、アイドル達と会ったり、宇喜多公と会ったり、濃密な4泊5日でした」
「荒垣君は、なぜかあなたにご執心のようだね」
そう言うと、荒垣は慌てて否定する仕草をした。
「私はあくまで、この国の為に、改新党の為にできることをしたいと思っているまで。決して、沙織さんを狙っているわけでは」
「ハッハッハ!やっぱり何か思っておいでかな?」
「冗談はよしてくださいよ…」
「荒垣さんの言う通りです。確かに荒垣さんはダンディーでかっこいいなと思っていますけど、私は一切、変な感情は持ってませんので」
「いやぁ、恋ってどうなるかわからんからねえ」
青梅は、尚もおちょくる。
「このご時世、年の差婚とか市民権を得ているでしょう。もし、年が離れていたり、元々住んでいる世界が違っていたりしても、好きという気持ちがあれば、それを相手にぶつけてもいいんじゃないかしら」
「そう考えると、うちの立花も、まだ可能性があるのか…?」
「そうよ、立花君なんてイケメンじゃない。まだまだ諦めちゃいかんよ、って彼に伝えておいてよ」
「わかりました(笑)」
次いで、秋津が沙織に話しかけた。
「沙織さん、次こそ、東京ドイツ村へ来てくださいね。それと、私の選挙区にも」
「ハハハ、考えておきます(苦笑)」
「私の選挙区は工業も商業も漁業も盛んです。小さいながらも暮らしやすい町です。千葉にも1時間弱で行けますし」
「なるほど」
「私は何も言っていなかったんですがね、うちの悠斗は小学生の頃から政治に興味を持っているんでね。いつか沙織さんのところで短期留学させたいと思っているんですが」
「ちょっと、秋津君…(汗)」
森田は抑えようとしたが、
「いえ、大丈夫ですよ。といっても、うちの国は色々特殊ですから、少し窮屈な思いをさせてしまうかもしれませんが、それでも良ければ」
「構いませんよ。政治家になるなら、日本だけでなく、色んな国のことを、悠斗に知ってほしいんでね」
翌朝、羽田空港には、帰国の途につこうとする沙織たちと、彼らを見送る遠藤通明・駐日大使がいた。
「沙織ちゃん、南南興を頼みます」
「こちらこそ、日本政府との付き合いと、美桜ちゃんの見守りを頼みます」
「お任せください。美桜ちゃんも、庶子とは言え楠木の一門、『姫君』です。『姫君』を守ることも、党員の責務ですので」
「遠藤さん…」
「沙織ちゃん。くれぐれも、正朝様には十分お気を付け下さい。関首相が、これからも何とか宥めてくれると思うのですが、万が一のことがあるかもしれません。大変かと思いますが、彼の不満を、少しでも和らげて差し上げてください。私は、それだけが心配です」
「分かりました。私も、血のつながった兄を、粛清したくありませんので」
「では、委員長閣下、御達者で」
「遠藤さんも、お元気で」
こうして、沙織たちは、一路南南興へと帰っていった。
(第三章 完)




