第三章 第八話
羽田国際空港に降り立った楠木沙織を、日本の荒垣健防衛相が直々に出迎えた。
「防衛大臣直々のお出迎え、有難う御座います」
「いえいえ、私達もお待ちしておりました」
「今回は宜しくお願いしますね」
「勿論。荒垣健、身命を賭して会談成功に尽力します」
東京駅近くのホテルのスイートルームに宿泊することになった沙織であったが、そこに客人が現れた。
「お姉ちゃん!」
「美桜ちゃん、来てくれてありがとう!」
勝村美桜が、一人でやってきたのである。
「あれ、お母様は?」
「今日は二人で楽しんできなさいって言われたの」
「そうなんだ。じゃあ二人でのんびり過ごそうっか」
夜7時になると、部屋に沢山の食事が運ばれてきた。
「こんな豪勢な食事、初めて見た…」
「私の家でも、ここまで豪華な食事は中々出ないよ」
「そうなの?」
「うん、こういう豪華なものは、党の宴会の時くらいしか食べないよ」
「そうなんだ…」
「意外と南興は経済が厳しいからね…。党幹部だけが、いつもいつも豪華な食事をしていると、国民が不満を持つでしょ?」
「確かに…」
「とりあえず、冷めないうちに食べちゃおうっか?」
「うん、いただきます!」
姉妹は、お腹いっぱいになる迄、その豪華な食事を堪能した。
暫く、二人で他愛もない会話をしていると、再びインターホンが鳴った。
「もう8時過ぎなのに、誰だろう…」
そう言って、沙織がドア前のカメラを見ると、意外な人たちがいた。
「沙織さん、お久しぶりです」
「沙織姉貴、お久しぶりです」
「(笑いながら)おう、二の姫様、いや、委員長閣下」
森田正好農水大臣と、秋津文彦・保守党政務調査副会長、その息子の悠斗がやってきたのである。
「皆さま、ようこそ…」
「あれれ、可愛らしい先客がいらっしゃるようですが」
森田が、後ろの美桜の姿を見つけた。
「あ、はい。ちょっと一緒の夕食を食べていました」
沙織は、どうやって話題をそらそうかと考えていた。この時、美桜が沙織の異母妹であることは秘密のことであった。
「あ、じゃあ私帰るね」
気を利かせて、美桜が帰ろうとした。
「あ、いやいや、大丈夫だよ。私たちの方が突然来たのだから」
と、文彦は彼女を帰りを止めようとした。沙織と美桜も了承し、このまま5人で歓談することになった。
「なるほど、道理で可愛らしいと思った」
「アイドルになってまだ4か月か…。お仕事は慣れたのかい?」
「はい、先輩方も優しくて、ダンスとか色んなことを教えてくださいます。同期も気の合う子たちばかりで、楽しいです」
その中で、悠斗は黙ったままであった。
「悠斗君、どうしたの?」
「い、いや、何にも」
「何か気になったことあった?」
「いや、大丈夫」
「あらそう…」
そうは言いながら、この時既に、沙織と美桜の雰囲気が何となく似ているような気がしていた悠斗であった。




