第二章 第七話
物部たちの密会の翌日。再び所変わって、都内にある名門校、世良田大学附属中等学校では…
「調べれば調べるほど、春本と運営陣にあくどさは呆れる」
「今や政権とつるんで、やりたい放題」
「この前も桜を見る会に招かれて、昨日は首相と官房長官と、首相の自宅で密会と来た」
中等学校5年生の、玉川芳彦、立川尭久、萱野光洋の三人は、春本の『悪行』に義憤を覚えていた。
「噂によれば、幾つかのUENのイベントに、官邸からお金が流れてきているらしい」
「そうなると、下手すると春本は、政府に雇われた芸能界の監視役ってわけか」
「まぁ、流石にそれは考えすぎかもしれないけど、官邸から頼りにされているのは確実だろうな」
「アイドル達は今でも、未成年でもお構いなく、過労になる迄働かされ続けている。こんなことがあっていいのか」
「搾るだけ搾り取ろうとしているのは間違いないだろう。所詮は、官邸にすり寄る金の亡者」
「そこに、新自由主義者の権化の竹内蔵之介も絡んでいる、と」
竹内蔵之介は、2001年から5年間続いた大泉政権で経済方面のブレーンを務めた慶明大学教授である。この政権下で新自由主義政策が進められ、経済格差が拡大したのは言うまでもない。因みにこの政権の最後に一年で官房長官を務めたのが、当時まだ51歳だった物部泰三であった。それ以降、物部と竹内の関係は一貫して親しい。
「それにしても、昨日のクイズ番組で、中学校レベルの問題に答えられていないアイドルが多かったのはびっくりした。おバカっていうレベルじゃないぞ、あれは。基礎的に学校教育をおざなりにして、運営が彼女たちに仕事をさせていることに呆れる」
「もしかしたら、わざとバカそうな子を採用している可能性も否めないだろうね」
「搾取されていることに気付かない人も、世の中に沢山いるからなぁ」
「なぁ、立川、萱野」
「「おう」」
「俺たちで秘密結社を作らねえか」
「人数が欲しいわけか」
「立川、話が早いな」
「ただ、こんなことを真剣に考えている人間自体、世の中でもごく少数。学校単位だと数人単位じゃないか?」
「萱野、皆が皆真剣でなくてもいい。共感さえしてくれればいいんだ。俺たちが上手く、強引に動かせば、半強制的に巻き込まれるようにして動いてくれる」
「それはどうだろう」
「人望が、なぁ」
この当時の玉川は、その『独特な』思想の為、クラス内はおろか、学年内でも孤立気味だった。
「奇兵隊の高杉晋作も、長州藩の政権を奪取するクーデターを起こそうとした当初、同志は数十人だった。しかしそれが、強引に仲間達を引きずり込んだ結果、あれよあれよと数千人の勢力になって、藩主流派を放逐した。ここは、急ぎつつ地道に、俺たちの考えを伝播していかなければ、いつまで経ってもアイドル達を『解放』できない」
「なるほどな」
「なら、やってみるか」
「君たちとならできる気がする。俺についてきてくれ」
こうしてできた名無しの秘密結社は『玉川党』と、半ばクラスメートからからかわれることになる。しかしこの結社が、後に大化けして世間に衝撃を与えることになる。




