第二章 第六話
所変わって日本国、東京。物部泰三首相私邸。
「この前は『桜を見る会』に、私もうちのアイドル達もお招きいただき、有難う御座いました」
「なんのなんの、春本さんたちとは、これからも協力していきたいので」
「UENグループと坂グループは、今や日本を代表する二大アイドルグループ。官邸一同、これからも頼みにしています」
春本健一は、UENグループ、坂グループなど、幾つものアイドルグループのプロデュースと歌詞の作詞を手掛ける大物プロデューサー兼作詞家である。彼は、昭和後期の20代から活躍しており、昭和を代表する歌手であった青空つばめの遺作を手掛けたことでも有名である。そんな彼は、長きに渡り保守党との関係を持ち、特に2012年に発足した物部泰三政権になってからは、2020年東京オリンピック組織委員会の理事、その他政府主導の顧問会議に列席するなど、官邸とも緊密な関係となっていた。更にプライベートでも、このように物部私邸に招かれるなど、物部、羽賀信義(官房長官)、春本の3人は昵懇の関係になっていた。
「春本さん、今年のUENグループ選抜総選挙は、新潟での開催でしたね」
「そうです。良い場所を押さえることができました」
「次やるときは是非、官邸もお手伝いできれば」
「物部さん、羽賀さん、良いんですか?」
思わぬ申し出に、春本は目を輝かせる。
「まぁ、大っぴらにはできませんから、どこかしらを経由させる形になるとは思いますが」
「それでも構いません!」
「地域振興は、過疎化が進む日本にとって必要なことです。アイドルイベントが開催されれば、オタクの方々も、全国各地から集まってくるでしょう」
「確かにその通り」
「私と春本さんの仲です、来年やるときは、予算気兼ねなくやっちゃってくださいよ。地方も盛り上がるし、広告代理店も、その他企業も盛り上がります」
「そこは重々承知。保守党政権、というより物部政権が長く続かなければ、私達もどうなるか分かりませんしねえ」
そう言うと、三人は笑い合った。
「流石、春本さんも分かっておいでで」
「私も、物部さん同様、まだまだ『働きたい』ですからね」
「可愛いアイドル達の為ですか?」
「それもそうですが、やっぱり今の立場が、ね(笑)」
「春本さんも、ワルよのぉ」
すると、また3人は笑いあう。
「政権が長続きするために、また春本さんに引き続き芸能界で睨みを利かせていただくために、この羽賀信義もまだまだ働きます」
「ここまで政権を続けられるのも、官房長官として羽賀さんが頑張ってくれているお陰です。これからも宜しくお願いしますよ」
「この春本からも、お願いします」
そしてこの3人の密議は、深夜まで続いた。
翌年、物部政権は、UENグループ選抜総選挙に、官邸の資金で沖縄県の某会場を提供するなど、裏から全面協力をしている。しかしその会場は野外であり、イベント当日に大雨で中止になった。そして当時、物部政権に冷や飯を食わされていた保守党青梅派の奥羽太郎が、この『裏支援』を国会で取り上げ、野党は勿論、保守党内も一時騒然とすることになるのだが、これはまた別の話。




