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南興の赤星  作者: KKKI
第二章
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第二章 第五話

 11月23日、青少年団主導の『蜂起記念祝典』が開催された。懸念となっていた演奏会も無事に終わり、祝典そのものも成功裏に終わった。これにより、沙織は若き幹部候補として(大統領の娘というアドバンテージはあるが)見なされることになった。

それに対し、大統領に後継指名されている正朝も負けていられない。10月初旬に提案し、中央委員会に実施が承認された『全国学生演説大会』は、翌年1月11日に開催された。各地から優秀な学生が集い、未来への『革命的』展望を思い思いに披露し、改めて党・国家・国民の団結を知らしめた。

「正朝様がいれば、この国の未来は明るい」

このような声が、各地方からも上がるようになった。党地方幹部からも認められた正朝は、さらに自信をつけることになった。

その一方で、沙織・正朝の父である楠木正興大統領は悩んでいた。

「あの正朝の性格で、人々は付いてくるのだろうか…?下手をこいて革命を引き起こさなければ良いのだが…」

「大丈夫ですよ、お義父さん。学業でも優秀な成績を修めていますし、何より、あの大会で正朝君の手腕は確かなものだと、皆分かってくれているはずです。正朝君の演説も力強かったです。熱血漢で優秀、これほど人民を安心させるものはないでしょう」

「孝也君。確かにな、最初の方はいいかもしれない。しかし正朝はああいう性格だ。数年経てば油断して、はちゃめちゃをやりだしかねない。北朝鮮の二代目でさえ、後継者時代から青瓦台襲撃未遂とか大韓航空爆破とか、暴走しているではないか」

「それはその、傘下に置いていたの組織の問題もあるのでは…?」

「その上三代目はどうだ。最高指導者になって1年くらいで、自分の叔父を処刑したり、軍幹部が『居眠り』しただけで粛清されているではないか。そのようなこと度々起きて、国内は恐れおののき、一部不満分子が出てきている話がある」

「確かに金正運氏は、やり過ぎ感は否めませんね。あれは、父親が不健康で早めに亡くなってしまわれて、指導者としての教育や職務の引継ぎが上手く行かなかったという側面はあると思います。その点、お義父さんはまだ55歳ですから、まだまだ正朝君に色んなことを教える時間があるはずです。そこまで心配しなくても、数年すればきっと落ち着いてきますよ」

「だといいのだがねえ…」


 4月、正朝は興城大学政治経済学部を卒業、党政治局員候補兼書記、そして党宣伝局長代理に任命され、いよいよ権力中枢に入ることになった。沙織も、党青少年団総長及び外務省企画・式典部長代理に任命された。まだ19歳ながら、異例の大抜擢であった。

「沙織ちゃんに、ここまで仕事を任せるとは思いませんでした」

中央委員会会議の後、副大統領兼党副委員長の遠藤通明が、大統領に話しかけた。仕事をそつなくこなす官僚タイプである遠藤は、その仕事への忠実さとバランス感覚が認められ、国のNo.2に抜擢されていた。しかし、権力には元々無頓着だったことが影響してか、影がやや薄かった。

「まぁ、念のためだ。本当はそこまで抜擢するつもりはなかった」

「と言いますと…?」

「彼女にも、ある程度の『教育』をしておきたいと思ってね」

「もしや…、正朝君の御性格を、かなり気にされていますか?」

「分かっているではないか」

「私も気がかりではあります。しかし、差し出がましいこと承知で申し上げますが、贔屓のし過ぎにはお気を付け下さい。兄妹での嫉妬、権力争い程、醜いものはありません」

「それは何とかする…」

そう言いながら、大統領は心臓辺りに手を置いた。

「大丈夫ですか?よく見たら、顔色が少し悪いように見えますが…?」

「う~ん、最近不整脈気味なんだよなあ。それに、頭痛や疲労感もある」

「少しゆっくりしてくださいよ…。あの経済危機以降、何とかして立て直さないとという気持ちは分かりますが、働き過ぎで倒れたらおしまいですよ」

「ああ、心配してくれてありがとうな。でも、休む暇は、余り無い…。ここで気を抜いてしまったら、米中に挟まれているこの国は不味いことになる」

そう言って焦り隠し切れない大統領を、遠藤は心配せずにいられなかった。

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