第二章 第四話
「うちのこのみを、労農党のイベントに?」
「はい…」
「ちょっとちょっと沙織。党のイベントに他国の方を、参加者側で来ていただくのは…」
「それはそうなんだけど、ここはイベントを成功させることを最優先に考えたい」
「他国、しかも西側陣営の人を抜擢したとなると、東側の国々から何を言われるか…」
「でも労農党って、言ってしまえば日本の労働党の分家みたいなもの。日本の方に手伝っていただくは、そこまで問題には…」
「森田さんは保守党の方だ。流石に、保守党が…」
「いえ、大統領。本人が良ければ、私は構いませんよ?」
森田の思わぬ返答に、大統領は驚いた。
「ここは、これから労農党と保守党の関係の為にも、こうしたところからお手伝いできれば、私たちとしても嬉しいです」
「は、はあ…」
「それに、勝手な推測をして申し訳ないですが、一々、ピアノ担当者や指揮者などがどういう子だとか、あまり詳しく発表しないでしょう?」
「それは、そうすることもできます」
「それならば、私は大丈夫ですよ」
「森田さん…」
沙織の緊張が、一気に解けた。
「有難う御座います!本当に助かります!」
「日本と南南興の仲です。東西冷戦で距離ができたとはいえ、このような世界情勢ですから、協力できることは協力していきましょう。楠木大統領、そういうことですので、今度是非、込み入った話などできれば幸いです」
「分かりました。こちらもその時は、建設的な協議ができれば幸いです」
この後、沙織はこのみに、電話でお願いをした。既に父から話が行っており、このみも快諾した。
「沙織さん、良かったですね…」
「あとは、当日まで最終調整を進めるだけね」
「衣装の件は、本当に大丈夫ですか?」
「大丈夫。ついでに父にお願いして、ちょっと予算増やしてもらった」
「本当にすみません…」
「そう言って、申し訳なさそうにしているけど、ホントは私が大統領の娘だから、折れなくても何とかなるとか、思ってなかった?」
「い、いえ…、そんな滅相なこと…」
「(笑いながら)アハハ、ゴメンゴメン。変な冗談言っちゃったわ。気にしないで」
「は、はい(軽くお辞儀をする)」
「そうそう、これからは余り堅くならないでいいよ」
「?」
「何戸惑ってるの?一応、奈穂さんは私より年上なんだし。それに、これから私も否応なく出世させられると思うの。そういう時に、貴方が近くで支えてくれるなら、私は安心して仕事ができる気がするの」
「あ、有難う御座います」
「ほらほら、これからは少しずつでいいから、敬語なくしてよね」
「(やや言いにくそうに)はい、りょ、了解」
高宮奈穂は後に、大岡芽美と並んで、楠木沙織の最側近として知られることになる。




