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南興の赤星  作者: KKKI
第一章
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第一章 第八話

 数日後、首相官邸。物部泰三首相(保守党総裁)が、多田広明国土交通大臣(公民党最高顧問)、荒垣健防衛大臣(改新党代表)、森田正好農林水産大臣を招いて、昼食会を開いていた。

「憲法改正論議、なるはやに進めたいのは理解致しますが、我が公民党の中にも『護憲派』が居ることはご存じのはずです」

と、多田。多田は代表経験者で、自身も憲法九条改正にはやや慎重な立場である。

「多田さん、いつまでそのようなことを…。昨今の海外情勢、特に中国・北朝鮮に関して言えば、強硬路線に転じてきています。申し訳ないですが、公民党さんには腹を括ってもらいたいのですが?」

荒垣が、語気を強めながら言った。彼は元自衛隊幹部であり、その影響で改新党自体、社会面は保守党より若干リベラル(と言っても中道右派である)である一方、外交・安全保障面では総じてタカ派であった。

「まあまあお二方とも。だからこそですね、先ずは『解釈改憲』で手を打ってはと、私は思うのですよ。急いで憲法改正をしても、消極的な支持層を逃がしかねませんし、我が党のリベラル派からも反発が出かねません」

森田が言った。彼は防衛大臣経験者であり、保守党内穏健派とされる岸本派の中ではややタカ派と見做されていた。

「しかし、保守党は憲法改正の為に結成されたと言っても過言ではない。今年で立党60年だが、未だに憲法改正できていないこの状況は、私としては由々しき事態。それに、荒垣さんが言った通り、中朝の動きが活発化しているこの状況で、万全の体制を整えるのは当然だと、私は思う」

物部にとって、憲法改正は外祖父(首相経験者)の代からの悲願である。第一次政権で『美しい国』を掲げるなど、伝統と国益の保護、そして安全保障の強化は、彼にとっては最上のライフワークであった。

「それはそうと、森田君」

「何でしょう?」

「今あなたのところに、南南興の大統領の娘さんが泊っているんだってね」

「はい、まぁ、お忍びですので、内密にしていただければ」

「勿論」

物部に続いて、多田は頷き、荒垣は親指を上げた。

「確か名前は…」

「沙織、と言います」

「その沙織さん、どうやら大分日本文化に入れ込んでいると聞いたのだが」

「はい、特にアイドルとか、日本食とか」

「なるほどね」

「昨日は秋津国交副大臣の息子と、私の娘と三人でお茶をしたそうです」

「随分楽しんでいるようでよかった」

「もしかしたら何か使えるかもしれませんな」

荒垣が言う。

「ハハハ、お得意の謀略ですか?荒垣大臣」

「いえいえ、そんな大それたことでは。ただ、確か楠木沙織さん、南興労農党の中央委員候補のはず。ゆくゆくは南南興の指導者層に食い込む可能性が大きいかと」

「それは私も思いますよ」

森田も同意した。

「実は、最近、楠木大統領と電話をしましてね。沙織さんの話が出たのですが、正直沙織さんのことを大分高く評価している様子。もしかしたら、彼女が末っ子故に、親バカが出ているかもしれませんが、私から見ましても彼女は大変聡明な方だと思います」

「可能な限り、森田君経由で楠木沙織さんとの関係を続けてくれないか?」

「分かりました。お任せください」

「ここは、選挙区絡みのいざこざは棚に上げて頼む」

「無論。もしかしたら、南南興全体が我々の方に振り向いてくれるかもしれませんからな」

物部と森田は、お互いニヤリとしながら言った。

「(南南興か…、俺も何かやってみるかな)」

物部の横で、荒垣がハンバーグをパクつきながら、思考を巡らせていた。

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