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9 ランニング

今はまだ日が昇ったばかりで、多くの人がベットの上で夢を見ている時間である。

あまり地面が温まっていなかったり、風が吹いてきていたりして少し肌寒い。

私と黄は、ジャージ姿で家の近くにある公園にいた。


「さむー。もう春だから暖かいと思ってたけど、朝は相変わらず寒いんだね」


私は手をすりすりしてあっためようとする。

手ってなかなかあったまりにくいから困るよね。


「そうだね。けど、ちょっと走ればすぐにあったかくなるよ」


こんな朝早い時間に何をしているのかというと、運動だ!ランニングだ!

黄が、モデルになるからには毎日運動をして健康的な体作りが必要だよね。と言っていたので便乗して私もついてきたのだ。

黄が朝早くに変な人に連れていかれないようにするためにね!


私たちは準備体操をする。ちゃんと運動の前には念入りに体操しておかないと足とかひねっちゃうからね。

アキレス腱とか、切っちゃった日には目も当てられないよ。

あ、あと静的ストレッチ?よりも運動前は動的ストレッチ?のほうがいいらしいんだって。

学校で先生が言ってた。

あんまり学校で習う事って日常生活じゃ使わない気がするけど、今日は珍しく役に立ったよ。


「よし!これで準備オッケー。さあ、早くいこう。寒いったりゃありゃしない」


「僕もオッケーだよ。それにしても藍姉ちゃん、やけに張り切っているね」


私たちはさっそく走り始めることにする。

話しながら走れるくらいの速度がちょうどいいらしいので実際に話しながらランニングする。

これなら私でも続けられそうな気がする。


「朝にランニングなんて初めてだからね。ちょっとだけ意識高い系みたいになった気がしてね」


「あー、分かるかも。成功者の一日みたいなのの中に組み込まれてそう」


「でしょ!でもまねして始めよっかなって思っても、朝は眠すぎて体が動かないから結局しないんだよね」


「だけど今日は起きれてるから成功だね」


「そーだよ!私は睡魔に打ち勝ったんだよ」


暖かいベットの上ほど強い敵はこの世になかなかいないからね!

ソイツに勝った私はもはや四天王最弱くらいの強さはあるんじゃないかな。

え……?ないって?……アッ、ハイ。


「藍姉ちゃんは、ゴロゴロするの好きだからね。正直、起きれないと思ってたよ」


黄よ。そのくりくりした可愛らしいおめめに私はそんなにだらしなく映っているのか。

ちょっと悲しくなってきちゃった。


「今日からはもう大丈夫だからね。私は進化したんだよ」


「じゃあ明日も一緒に走ろうよ」


「……やっぱし進化はやめることにする。Bボタンを押して進化キャンセルだ!」


私は逃げることにした。黄との楽しいランニングの時間と睡眠を天秤にかけた結果こうなってしまったのだ。

黄とのランニングはとても貴重な機会だけど、ゆっくり寝るのも捨てがたい。

はっ!私はこのままでは黄を一人にしてしまう最悪な姉じゃないか!

このままいくと黄がグレて、『藍姉って、うざい!』とか言われる日も遅くはないかもしれない。

とっても優しくてかわいい黄がこんなことになってしまったら数年寝込むレベルで心が砕けちゃう。

ヤバい、この状況を回避しなくては……。


「黄、お姉ちゃんってどこかダメなところないかな……?」


「藍姉ちゃんのダメなところ?」


私はどこを改善したほうがいいか自分じゃわからないから、直接聞くしかないよね。


「うーん、ダメなところかー。藍姉ちゃんは何時でも最高のお姉ちゃんだよ!学校のみんなに自慢できるくらいね」


うおおおおおおお!最高のお姉ちゃんだって!こんなセリフを黄から直接聞けるなんてこんなことがあっていいんだろうか。

私今日死なない?大丈夫かな?


そして私はとんでもない勘違いをしていたようです。

それは当然のことなのになぜか見失っていたこと。

それとは、こんなに優しい黄が悪い子になるはずないよ。そうに違いない。黄は家族思いの最高の天使だよ!

という世界の真理。

今の時代小学生でも知ってるし古事記にも書いてあるからね。


「でも、もうちょっと料理ができるようになったらいいかな」


おおう……、それですか。黄が私の改善すべきところをふわっと挙げてくれた。心づかいが染みるなぁ。

黄の自慢できるお姉ちゃんになるためにはもっともっと頑張らないといけないね。


「じゃあ私、頑張って練習することにするよ!シェフも驚くくらいの物が作れるようになるまでちょっと待っててね。最強な黄のお姉ちゃんである私にできないことなんてないんだからね!」


「うん!わかった。いつまでも待ってるからゆっくりでいいんだよ」


私は料理の練習を休みの日にでもしようと決心する。

でも誰に習おうかな。お母さんかな?それとも七かな?


「そろそろ一周だよ。学校にも行かなくちゃ出し今日はこの辺にしとこうか」


「ふー。運動もたまにはいいもんだね」


「本当は継続することが大切なんだよ、藍姉ちゃん」


「それは私にとって暖かいベットの次くらいに強い敵だから私には難しいね」


私たちは、ゆっくりと体を伸ばして体をちょっと整える。

家から持ってきたタオルで汗をぬぐって、ちょうど公園にあった水飲み場で新鮮な水を飲むととっても気分がいい。

誰もいない静かな場所で心もかなり落ち着く。


「よーし、今日も学校だ!」


「藍姉ちゃんまだまだ元気いっぱいだね。まだ時間あるけどもう一周走ってみる?」


「……いや、やめときます」


私はこの日から三日に一回くらいは黄と一緒にランニングをするようになったのであった。








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