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8 食道楽

今日は七とショッピングモールに来ている。

ここはちょっと前に行った布地屋さんがあるショッピングモールなのだ。

市内でもトップレベルに広い敷地にはたくさんのお店が並んでいる。

新しくできた店もたくさんあって珍しいものがたくさん並んでいる店から、流行の品物を置いている専門店など幅が広い。


「さあさあ、何を手べようか」


「まずは手始めにクレープでしょ~」


私たちはついてから速攻でまず、クレープを購入した。

そしてちょうどいい所にベンチがあったので座って食べることにする。

二人ともイチゴのクレープだ。


「うまっ」


「おいしーね。よし、次はアイスかな。買ってくる」


七はもう食べ終わってしまったらしく、クレープを1分ほどでたいらげ、アイスを買いに走って行ってしまった。

はやっ!私まだ半分も食べてないよ。七って食べるの好きだよなぁ。


そう、七の趣味は食べる事である。

そして、ものすごく速いスピードで、とても多い量を食べてしまうのだ。

なのにいつも食べ足りなそうにしている。むかし、食べ放題の店でたくさん食べすぎて店員さんに頭を下げさせたらしい。

七の胃袋ってどうなってるんだろ……。


「そこのアイスクリーム屋はなかなかに良い味を提供してるみたいだよ~」


いつの間にか戻ってきた七の手には、四段に高く積みあがったアイスクリームのコーンが握られていた。

ぺろぺろと食べている姿はちっちゃい犬みたいで可愛い。


「ミント味はこの辺の店で一番おいしくて、チョコレートはそこそこ、バニラは……まぁ普通かな。イチゴ味は悪くはないけどわざわざ頼むほどでもないって感じ~」


アイスを食べて最後に残ったコーンを二口で消した後に、一つずつアイスの評価をしてくれた。

へ~。そこの店ってミントアイスがおいしかったのか。


「次はどこいこっかなぁ~」


七はもう次の店に行こうとしている。

私はまだ最初の店だ買ったクレープを食べきってないぞ。


「んー、甘いもの続きだからね~。次はタコ焼きにしようかな。ちょっと買ってくるから待ってて」


またてくてくと買いに向かってしまった。

異常な速度すぎるな。私は椅子に座ったまま残りのクレープを食べてしまう。

クレープなんてあまり食べないから、自分でも珍しいなと思う。

私は基本的に甘いものはあまり食べない。飲みの物とかもジュースとかより、コーヒーとかを選んじゃう。

本能的に避けているのかもしれない。

だけど食べれないほど嫌いでもないので、たまに七の甘いもの中心の食道楽に付き合っているのだ。


「おまたせー。どう?私のおすすめのクレープのお味は」


「おいしかったよ。あんまりクレープとか食べないからほかの店がどうなのかわからないけど」


「それはよかった~。お粗末様でした!」


「七が作ったわけじゃないでしょ……」


「あれ~?ひょっとしてバレちゃった?」


七がおどけたように言う。

そしてさっき買ってきた、一船のたこ焼きを人基地でポンポンと口の中に入れて行っている。

まるでポップコーンでも食べているみたいだ。

それホントにたこ焼きだよね……。


「七……それって熱くないの……?」


「ん~。熱さも味の一つ。みたいな、いい感じの刺激って感じかな?」


「それおかしいんじゃないの……」


七はやけどするような熱さを味の一つと誤認しているみたいだ。

体に重大なバグが起こっている気がするよ……。


「このたこ焼きもおいしい~。この辺の店はほとんどあたりだよ~。よし、最後の一つは藍ちゃんにあげちゃお~」


私にたこ焼きを近づけてくるのでもらうことにする。やったね!

私は七のたこ焼きをあーんってしてもらった。


「あっっっっつ!!!!」


なにこれまだまだめっちゃ熱いじゃん!!

口をハフハフさせて空気を送り込む。

やけどしそうなくらいの高温で、口の中に広がるたこ焼きの味も全く感じられなかった。

……このレベルの厚さをいい感じの刺激とは。人じゃないのかしら……。


「あはは~。もう冷めてるのにそんな反応するなんて藍ちゃんはドジっ子だなぁ~」


「おかしいのはお前じゃい!」


七にそう言うときょとんとしてこっちを見てきた。

まさか自覚なしだったの!?


七はスマホを取り出してSNSを始める。

『友達と遊びに来た!』

さっき食べていたクレープとアイスとたこ焼きの写真と一緒に電子の海に放ったみたい。

いつの間に写真を取ったのかはわからないけどどれもおいしそうに見えるようにとってある。


「これでおっけ~」


七がアップした画像と感想に次々といいねが付く。

七はSNS上でちょっとした有名人なのだ。

日本各地に出没し、いろんな店の食べ物を食べ歩いて評価をしていく。

いわゆる美食家みたいな立ち位置だ。

食べるスピードや量も半端ではないことからも注目を集めているらしい。

そこに人気に拍車をかけているのは、これらのことをしそうにもない小柄で可愛い七がしているという点なのだ。


日本各地に出没するためのお金はどこから出ているかわからない。

この間直接聞いてみたら、「女の子には秘密が付きものなんだよ」って言ってた。

……ほんとにどこから来てるんだよ。


「今日も七は人気者ですねー」


「そうでしょ~」


「今日はこの後どうする?」


「もうちょっと何か食べたい気分。付き合ってくれる?」


「おっけー……」


まだ食べるのか……。七の家のエンゲル係数どうなってるんだろ。

普通の女子高生とかだったら服を身に言ったりするんだろうけど、私たちはいつもこうだ。

まぁ、服屋をめぐるとかより色々食べて回るほうが私としても楽だからいいんだけどね。


そのおかげか私もこのあたりのお店にすっかり詳しくなってしまった。

穴場から秘密の裏メニューまでほとんど知ってる。

このあたりのお店じゃ行ったことのない店の方が少ない。

私も日本各地に連れまわされる日が来るのだろうか……。


「んー、じゃあ次はラーメンにしよう!その次はハンバーガーね!」


「りょーかい」


今日もまだまだ続くみたいだ。


「それじゃ~、お次に行ってみよ~」



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