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6 初めて衣装作ってみる

七との勉強の成果もあって、テストでそれなりの点数を取ることができた。

今日はテスト開け初めての休日なので、気持ちが楽。

せっかくの休みなのに何もしないでゴロゴロしているのはもったいない気がするので、紅紫兄の高校生最後のコスプレイベントについて考えることにする。


紅紫兄は今、高校三年生だ。私たちが通う学校は、進学校なので進路はほとんどが大学進学になる。

つまり今年は、紅紫兄の大学受験があるということだ。

それなのにイベントに出るのって大丈夫なのって思うかもしれないが、紅紫兄は物事をきっちり計画立てていくタイプの人なのだ。

あらかじめ参戦することを決めていて、それを見越してから勉強をしているらしい。

さすがですお兄様!とでも言っとけばいいかな。


今回のイベントは千秋さんが一緒に来れば?と提案してくれたので、行ってみることにしようと思った。

純粋に紅紫兄がどんな感じでやってるかも気になるし。

面白かったら、大事な趣味になるかもしれない。

何か趣味とか無いの?と聞かれたときに堂々とこれ!と答えられるものが欲しい……。


そしてせっかくそのようなイベントに行くんだから、私も何かしようかなと思う。

私がコスプレをするんじゃなくて、私がコスプレ衣装を作ってみるのだ。

さすがに、人前でコスプレするというまでの精神は私は持ち合わせていないからね。


ネットで何か作りやすそうな衣装のキャラクターがいないか検索してみる。

すると、国民的人気魔女っ娘アニメのキャラクターが出てきた。


「おお、これならいけるかも」


私は机からペンタブを出してちょっとイメージイラストを描いてみる。

うーん。まあまあ良さげだ。黒を基調として、赤の大きなリボンが特徴的。


始めて作る私にはちょうどいいくらいかもなと思う。

そうと決まれば材料を買いに行かなくちゃね。


「あー、誰かに聞いたほうがいいかな」


私は初心者だから勝手がわからない。


「こんな時は千秋さんかな」


スマホを取り出し連絡を送ってみる。

私と千秋さんは、知り合ってから何度か連絡を取り合っている。

紅紫兄のこととかを観察して報告したり、趣味の話をしたり。

…………あれ?これって、黄と七の関係と同じでは?


こういう気持ちだったのかなー。やっぱり自分のいないところでどんなことしてるのか気になるからね。仕方ないね。

そんなことを思っているうちに既読が着いた。


『ちょっとコスプレ衣装作ってみようと思うんですが、もし時間があったらいろいろと教えてくれないでしょうか』


『こちら側へようこそ。私はいつも自分で作ってるから何でも聞いて!紅ちゃんと一緒に来るときにしてくるの?』


『今のところは作ってみるだけかなと。まだ初めてなもので』


『分かった。初めて作るなら簡単にできる奴がいいよね』


『私的には、あの魔女っ娘アニメ映画の衣装にしようかなって思ってるんですけどどうですかね』


『空飛んで配達するやつだよね。あれなら作りやすいと思うし、いいんじゃないかな。いつから作り始めるの?』


『土日が二日ともフリーだから今から材料買って始めようかなって感じです』


『おk。じゃあ今から藍ちゃんの家に行ってもいいかな?』


『いいんですか!?』


『もちろん!私も手伝いたいし。今から材料買いに行くんだよね。そこで待ち合わせにしない?』


『分かりました!』


とっても心強い味方を得ることができた。これはとってもありがたい。

先人の知恵を借りれるなんてラッキーだなと思っちゃう。

それにしても、千秋さんめっちゃフットワーク軽いんだなと実感したよ。





◇◆◇◆◇◆◇


「やっほー。おまたせ、待った?」


千秋さんが待合をする時のお決まりのセリフを言ってきた。


「ううん。待ってないよ、わたしも今来たばかりって言ったほうがいいんですかね」


「そのセリフが聞けたら私はとっても幸せ」


「じゃあ改めて、ううん。待ってないよ、私も今来たばかりなの」


「パーフェクト!!」


まだ会って二回目なのにとっても息が合う。

これが紅紫兄見守り隊の結束の力なのか……。


「紅紫兄見守り隊の結束の力ですね!」


「え……?あーそうだね!私たちは紅ちゃん見守り隊だ!」


これを期に三条紅紫の監視がさらに強まるのだった。

めでたしめでたし



私たちが待ち合わせにしたのは市内でも有数の布地屋さんだ。


「ここすごいですね。私始めてきました」


「そうでしょー。たくさん種類があるからここばっか来てるの」


私たちはお目当てのものを見て回る。

欲しかったものはすぐにそろったのでちょっと千秋さんとおしゃべりすることにする。


「藍ちゃんが衣装作ってみたいって言うなんて驚いたよ」


「そうですかね」


「うーん。藍ちゃんて少し一歩引いていろいろ見てる感じ?がするのかな」


「あー、あり得ますね」


小さいころから、多少成熟した視点を持っていた私は他の人よりちょっとシャイになっちゃったのかなって思ったりしてた。


「だから、今日誘ってくれてほんとにうれしかったんだ!」


「私も千秋さんのこと誘っていいか、ちょっとドキドキしてたんですからね!」


「いいに決まってるよ!いつでも私のこと呼んでいいんだからね」


「ありがとうございます」


「それにしてもなんで衣装作ろうと思ったの?」


「紅紫兄から何かしたいことを見つけてみろって言われたんです。黄も最近新しく挑戦することができたみたいで、私だけ取り残された感じがして」


「紅ちゃんかぁ。確かにそんなこと言いそうだね。でもファインプレーだよ。私が藍ちゃんと直接会えたんだから。あと、これからも藍ちゃんを誘う理由ができたしね。」


「ふふっ。お褒めに預かり光栄です。少しずついろいろやってみることにします」


「そーだよ。そんなのはゆっくり見つければいいんだよ。時間はたくさんあるしね!」


私たちは私の家に向かう。

鍵を開けて家に入ると、紅紫兄がいた。


「たのもー。紅ちゃん、ちょっと手伝ってよ!」


「……ん?なんで千秋がここにいるんだ?」


「買い物に付き合ってもらったの」


「おお!そうか。ところで何を手伝うんだ?」


「もちろん、藍ちゃんの初コスプレ衣装作りの手伝いだよ」


「まじか!ついに藍もこちらの世界の仲間入りか~」


「早く引きずり込まないと逃げられちゃうよ!」


「そうだな!速攻で沼にはめて抜けられないようにしないと」


「それじゃ―レッツゴー」


「お――——————!」


紅紫兄と千秋さんが、どんどんと進んでいく。


……紅紫兄と千秋さんが私をとらえようとしてるみたい。

そんなに沼にはまってほしいの!?

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