5 テストべんきょー会
今日は私の家で七と勉強会をすることになっている。
普段ならそんなことするわけもないんだけど今は違う。
ついにテスト1週間前になってしまったのだ。これは由々しき事態。
私は基本テスト勉強は一人でするんだけど、七が私の家に行きたいからといったためこの集まりが行われることになっちゃった。
こういうのって、だいたいみんなとしゃべっちゃって勉強は進まないよね。
だけど、こういう集まりは絶対面白くなる奴だ!と思って急遽実施することにした。
これから先の未来が鮮明に見える。
……テストの点数があまりよくなくて苦しんでいる姿だ。
頭では分かってるけど、体は動かない。目の前に利益にすぐに飛びついちゃう。
仕方ないね!人間だもの。
ピンポーンと家のインターホンが鳴る音が聞こえる。
七が来たみたいだ。
私は急いで玄関に七を迎えに行く。
「おはよ~、今日もいい天気だね。藍ちゃん」
「おはよ、七もいつも通りみたいね」
いつも学校で会っている時と同じふわふわとした雰囲気を纏っている。
「さぁ、勉強を始めようか。入ってどうぞ」
「ありがとう。どこの部屋を使うの?」
「私の部屋だよ」
「お~、藍ちゃんの部屋。はやくはやく」
「そんなに急かさないでも大丈夫だよ」
早く私の部屋に侵入しようとする奈々を押さえつけて、私は黄の部屋に向かって叫ぶ。
今日は紅紫兄は学校で勉強、お父さんとお母さんはどちらも仕事と言っていた。
3人とも休日でも平日と同じような生活をしているような気がするからちょっと心配だ。
「黄ー、今から七と勉強するから、そこんとこよろしくねー」
「わかったー」
これで準備は整った。早速勉強会を始めようか。
「七、ここ教えてよ」
「いいよー」
私は七に英語の教科書を見せて教えてもらう。
七のやつはこんなのだけど秀才で、学年度もかなりいい順位にいるらしい。
私は普通より上くらいな感じ。完璧美少女にはまだ足りないところが残っていたみたい。
これじゃあ、自分から完璧美少女って言えないじゃないか!
声に出して読みたい日本語、完璧美少女を言うことができるようになるために、勉強と料理を頑張ってみようかな。
———————————2時間後
「藍ちゃん、藍ちゃん。なんでメイク道具がここにたくさんあるの?藍ちゃんってあんまりメイクしてるイメージがないんだけど。こんなに持ってたの?」
「ああ、それは紅紫兄のだよ」
紅紫兄はメイク道具を私の部屋にたくさん置いている。
普段使うのは、紅紫兄の部屋に自分でしまっているらしいんだけど、ここにはたまにしか使わない奴とかを置いているんだと。
友達を家に呼んだ時にメイク道具が沢山ある男友達ってなんか嫌じゃないか?って本人は言っていた。
確かにそうだとは思うけど、なんで私の部屋に置いてるんですかね。
その代わりといっては何だが、置かれているものはすべて私が使っていいと許可をもらった。
だけど、私ってな名の言う通り、あんまりメイクとかしないし、半ば物置になっている感がある……。
今度撤去してもらわなきゃ……。
めんどくさくて放置してた問題を七が掘り起こしてくれた。感謝感謝。
「あー、紅紫さんって、そういうの沢山持ってそうだもんね」
ちなみに七は、紅紫兄がいつも女装をしていることを知っている。
友達になったばかりのころ、家に呼んだ遊んだ時にメイク中の紅紫兄の部屋に間違って突入したのだ。
紅紫兄が女装好きというのを聞いて、七は「そういうことかぁ」と、案外落ち着いて情報を飲み込んでいた。
そういうことか、だけで済ますことができる人を初めて見たので心底驚いた。
私と七が紅紫兄のものを物色していると、ドアをノックする音が聞こえてきた。
「入るよー」
黄が私たちのために飲み物を持って来てくれたみたい。
「藍ちゃんと違って、黄君は優しいなぁ」
七が黄のことを私へのディスりを含めてほめている。
私のこともほめて、黄のことはもっと褒めなさい!
「七さん、紅茶でいい?」
「もちろん。私紅茶好きなんだぁ~」
「藍姉ちゃんが言ってましたから」
「ほー。藍ちゃんったら、私のこと大好きなんだから」
「そうですよ。いつも七さんのことを聞かされます」
「やっぱりかー。こんなに愛されてるなんて思ってもみなかったなぁ、藍ちゃん」
こっちを向いて、七が私のことをまじまじと見てくる。
「……黄との連係プレー上手くない?」
「そりゃー、私と黄君との仲ですから。ねー」
「「ねー」」
二人がなぜか、息のぴったり合ったトーク術によって追い詰められてる。
それにしても、黄と七の中ってなんなの。
二人ともたまにしか会ってないはずだよね。
はっ……!まさか二人は私の知らないところでこっそり会ってるのかも……。
「七に黄は渡しませんからね!」
「えー。相変わらず藍ちゃんはブラコンだなぁ」
「絶対に黄はお嫁に出しません!」
「……僕はお婿さんだよ」
「へ!?黄は七のお婿さんなの!?」
「「そうじゃない(よ~)!」」
二人の私を否定する声がぴったり合う。やっぱり、息ぴったりじゃん。
「藍姉ちゃん、七さんと僕はね、協力関係なだけなの」
「協力関係とは?」
「ふっふっふっー。私と黄君は、藍ちゃん見守り隊なのだー」
「……何それ?」
「藍ちゃんが学校でちゃんと楽しんでいるか、普段の生活の中で幸せを見つけているかを温かい目で見届けることを目的とした団体だよ」
なんか、なぞの団体が出てきた。怪しいにおいがします。
七はいいけど、黄には変な協力関係を結ばないでほしいなぁ。
ん?……もしかしてこれまでずっと観察されてたの!?
「いつからそれは活動しているのさ」
「んーそうだね。どのくらいだっけ?」
「一年くらい前ですよ。初めて七さんが、私たちの家に来た時です」
「お~、そうだったね」
そんなに前からしてるのか。気づかなかったよ。
じゃあ、ここ一年の情報は共有されてるってことかぁ……。
「学校での友達が何人とか、昼休み何をしてたーとかね」
「僕は、休みの日に何してたとかだよ」
「この子達、恐ろしいわー」
「藍姉ちゃんが、高校に入ってから友達ができてるか不安だったから、七さんはとっても感謝してます。これからも藍姉ちゃんの友達として支えてあげてください」
「りょーかい~。それにしても、黄君ってかわいいのに姉思いだなんて、藍ちゃんが羨ましいなぁ」
うっ……、黄に私はこんなに心配されていたのか……。
「ありがとうございます。じゃあ、お勉強頑張ってください」
黄が私の部屋から出ていく。
「黄君を心配させないように頑張らないとね。藍姉ちゃん」
「……黄にふさわしい立派なお姉ちゃんになって見せますからね!」
この後めちゃくちゃ勉強した。




