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4 ひとり時々、百合

今は平日のお昼時。世の学生たちは昼休みの時間である。

私は屋上で毎日食べている。え?誰と一緒にって?

やだなぁー。この世は今私の目に見えている空でずっとずっとつながっているんですよ。

これなら、常に世界中の人たちと一緒といっても過言ではないよね。


うちの学校は屋上の鍵が開いているから私はここに逃げ……戦略的撤退をしているけど、最近は北上の開放をしていない学校も多いとネットで見た。

そんな学校に行っている私の同志たちはどうしているんだろう時になって仕方がない。

うわさに聞く、かの有名な一人専用の食事場所なのかな?

あまり、そんなところで食べたいとは残念ながら思わない。

どこかに心のよりどころがあるといいなと願っておくことにする。


私は教室から持ってきたカバンの中に手を入れる。

ピンク色の可愛いお弁当箱だ。


私は今日は朝にお母さんがお弁当を作ってくれた。

みんなのお弁当を作ってあげようと思って、私が早くに起きたらもうすでに出来上がっていたのだ。

お母さん曰く、あんたに料理をさせたら食材が謎の物質へと変貌を遂げてしまうからやめろとのこと。

解せない……。


私のお母さんはご飯を作るのがとても上手だ。

お父さんも黄も紅紫兄も、私のお弁当と違って倒れる心配がなく食べれると安心してた。

みんな私の料理を何だと思ってるんですか。

それじゃまるで生体兵器みたいじゃないですか。


いずれ私がプロをもうならせる料理を作ってやるぞと意気込む。

料理をマスターできれば私は完璧美少女へと進化を遂げるでしょー。



そんなことを思っていると、私の後ろにある屋上への入り口の扉が開いた音がした。

ギィィィっとあまり耳によろしいとも言えない音だ。


コツコツと誰かが歩いてくる音が聞こえてくる。

私の方に近づいてきているみたいだ。

誰が来ているかは、わざわざ後ろを振り向かなくともわかる。

この屋上の常連さんだ。



「藍ちゃんは、今日も一人でお弁当ですかぁ。親愛なる藍ちゃんの友達の哀憐により、あなたに愛のプレゼントをしてあげましょー。プレゼントは私と一緒にお食事券です」


私の肩にポンと手を置いて、野生の私のことをあおってくる奴が現れた!

ちょっと、韻を踏んでいるようなセリフを使って挑発してきている。


「くっ!私をかわいそうなぼっちだというのか。七ァァ!」


私は己の敵に目を向ける。

田中 七

ちょっとたれ目で優しそうと男子の間では人気があるらしいと風のうわさで聞いたことがある。だけどその実態はこの通り。私のことをあおり散らかしてくる厄介な奴だ。

髪は肩よりちょっとしたまで伸ばしていて、身長は女子の平均ちょうどくらい。

正直に言うと、おっとり系で可愛いと思う。


「今日も一人で屋上だなんて、藍ちゃんは人と話すのが苦手なのかなぁ?」


「苦手じゃない!」


「なのにどうして一人でご飯を食べようとしているのかなぁ?」


「ぬうううううううぅ、女子は話すのが難しいというか……なんというか……」


「あー、苦手だもんね。女子のグループは入って話すの」


そう、私はあまり女子グループで話すのが得意じゃない。一対一なら抵抗はないんだけど。

前世の記憶に引っ張られるというか……ね?

小学生のころまではよかった。だけど違和感を覚えたのは中学生くらいのころからだ。

周りの友達との会話で出てくる言葉の意味や感性とかが理解できなくなってしまった。

分からない言葉を調べるとか、女子の気持ちをもっと理解するとか、努力をすれば解決したのだろうなとは思う。。

だけど、正直に言ってさ、誰かと気楽にしゃべるだけのことに努力をするって、ちょっと違うんじゃないかなって。


「藍ちゃんって男子っぽい話題の方が好きだもんね~男子と話すときの方が、女子と話す時よりうきうきしてるのがわかっちゃうもん」


「……そうなんだよね」



だからと言って男子のグループにいたとすると、それはそれで多くのヘイトをかってしまう。

それぞれとの関係性のちょうどいい塩梅を見つけるのにかなり苦労する。


これにより私は、友達が少な……私は少数精鋭の仲間とともにやっていくと決めたのだ。


「……少数精鋭だから……少数精鋭だから」


「わ!なんか変なモードに入っちゃった」


おっと、心の中でのつぶやきが外に出てしまっていたみたい。


「そもそもさぁ、学校の中で出来た友達で学校を卒業してからも連絡を取り合うような友達って将来何人いると思う?私が思うにね、一桁くらい、よくても二桁にぎりぎりの届くか届かないくらいだと思うんだよね。だから、これから先に失ってしまう仲間のことを思うのではなく、ずっとともに歩き続けられるような仲間が必要なわけ。初めから少数に絞って、仲間との絆のレベリングするほうが断然いいと考える!」


仲間とは質より量なのだ。

無双ゲーとかをやってるとよくわかるよね。いくらたくさんの人数がいても、強大で圧倒的な個には逆立ちしたって勝つことはできないからね。

そんな戦況を一人で帰ることげできる個を私は求めているんだよ。


「うわぁ……ちょっと引いちゃうくらい、ひねくれてる」


この『わたしのかんがえたさいきょうのりろん』をひねくれているだと!?

正直自分でもひねくれてるって思います。すみません……。


「ひねくれたっていいんだよ。幸せに過ごすことができたらね」


「へ~。じゃあさ、その少数精鋭ってやつの中に私は入っているのかな?」


ドキンと心が波打つのをしっかりと感じることができた。

なにぃ!?そのセリフは卑怯だぞ!と私は心の中で叫ぶ。


「…………もちろん」


「ん~?聞こえなかった。もう一回お願い」


「……七は、私のパーティーの中でも高いレベルを誇っています……」


「ん~?よくわからないなぁ~私にはその比喩が難しいよぉ」


くっ…………こいつ、やりやがる。

ここは腹をくくるしかないかな。




「七はずっとずっと友達です!!これでいい?」


「はーい、よくできました~。私も大好きだよ」


七は手をぱちぱちさせながら私のことをほめた。

私は恥ずかしくなって顔を下に向ける。

ここで恥ずかしがっているところをはっきり見られたら1か月はネタにされちゃう。


これが私の最強の仲間だ!みたか!圧倒的な質というものを!


「よーしよしよし」


七が私の頭をなでる。

七に撫でられてもっと恥ずかしくなってきた。

いつもは私がなでなでする側なのに。


「あぅーっ!やめやめ!」


七の手を振りほどく。これ以上死んじゃいそうなくらいだ。


七と目が合っちゃった。


「「あっ」」


七が私の真っ赤になった顔を見る。

私が七のどうしようもなく楽しそうな笑顔を見る。


「「ふふっ」」


この後は二人でどうでもいい話をしながら昼食をとった。

あの店のご飯がおいしいとか、兄弟がどうだ~とか。

内容自体は平凡なものばかり。

だけど、この日常こそが私たちのレベリングなのだ!





私が友達であることを許してくれた七の気持ち





七が言ってくれた大好きって言葉










ちょっと、ちょっとだけだけど、絶対にちょっとだけど、とっても嬉しかった。…………ありがと。



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