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27 文化祭の準備


学校のイベントってたくさんあるよね。

でもその中で体育祭の次に来るイベントってなんだと思う?

体育祭がある時期にもよるけど、私の学校は文化祭だ。

受験生に配慮して早めにあっているらしい。


文化祭。

つまりはクラスごとに出し物をする高校生活においての一大イベントだ。

体育祭は運動部の人たちが特にやる気を出していたけど、文化祭では文化部の人たちが張り切っている。

みんなにこれまでの活動の成果を見せる場だからだろう。


そんな期待値が高まっている大きなイベントだと、出し物を決める時とか準備の時とかがとっても楽しい。

みんなでワイワイとやるのが青春のピースの一つって感じがする。


「何か意見のある人いますかー?」


私は教室の席に座ってクラスの委員長が仕切っている話し合いを聞く。

委員長は委員長だよって感じの見た目だ。

いまはクラスで何をするのかを話し合っている最中だ。


「はいはい!俺、意見ある」


クラスに一人くらいいそうな雰囲気の男子が手を挙げている。

新田君だ。

クラスのお調子者枠。

なんやかんやとみんなに愛されている。


「やっぱり高校の文化祭と言ったらメイド喫茶だろ!」


……それってどこの常識なんですかね。

模擬店とかならメジャーだけどメイドは無理でしょ。

それは漫画とかアニメの中だけの夢の世界だよ。


「うーん。それはちょっと厳しいんじゃないかな」


ほらほら。委員長だって無理そうだと考えてるみたいだ。

職員会議とかに回されたときにはじかれそうだしね。


「やってみなきゃわかんないだろ?」


新田君の目の中には不屈の闘志の様なものが輝いているように見える。

これは絶対にあきらめたくないって感じの輝き方だ。


「じゃあメイド服とかはどうするの?」


「それだと女子ばっかに負担が行くでしょ」


「そもそも先生の許可ってもらえるの?」


最初はぽつぽつとだったが少しずつ意見が増え始めた。


新田君があらゆる方向から総攻撃を受けている。

本人も「うっ…」と言葉に詰まっているみたい。

こんなに追及されたら心が折れてしまいそうだ。


「難しいのは分かってるよ……でもなぁ、お前らはみんなのメイド服見たくねーのか!」


新田君が加賀をするんじゃないかと思ってしまうほどの強い力でこぶしを固めて心の内に秘められた思いを演説している。

……そんなにメイド服みたいのか。

もはや呪いの域に達するくらいメイド服に執着してそうな形相だ。



「なあ、お前ら……隠さなくったっていいんだ。立ち上がってくれないか。この場の羞恥はすべて俺が引き受ける。だからよぉ……お前らの魂の声を聞かせてくれ!できる出来ないじゃなくて、好きかどうかで語れよ!」


周りで息をのむ音が聞こえる。

その時にはすでに教室の中が静まり返り、新田君の叫びに全ての人が耳を傾けていた。

一人残らず、もちろん先生もだ。



「見たいって言え!!」



みんなが机をドン!と叩いて立ち上がる。



「「「「見たい!!!」」」」



この場にいる男たちと数人の女子がその音に呼応して叫ぶ。

クラスの半数以上が心の中の気持ちを吐き出した。

中には感動したのか恥ずかしいのかは分からないが涙を流している人もいる。



……なんだこれは!?


新田君の圧倒的なカリスマによってそれまで沈黙を貫いていた人たちの心を動かした。


……なんだこれは!?


多数の人たちの心を一分もない程度のスピーチで動かす?

その原因はメイド喫茶!?

何かとんでもないものの片鱗を見た気がする。

歴史に名が残るような時をリアルタイムで見たような、そんな感じだ。



「……委員長」


「……ああ、もちろんだ。必ずこのオーダーを成功させて見せる」


新田君と委員長が手を交わしている。

まるで長年戦ってきたライバルがお互いを認め合ったときみたいだ。



「メイド服は?」 「生地があれば死ぬ気で作る!」


「女子の負担はどうする!?」 「メイドだけじゃなくて執事も入れれば問題なしだろ」


「メニューは?」 「うちの親が喫茶店経営とかしてるから相談してみる」


「予算耐える?」 「今から生徒会に直談判してくる!」


「衛生基準とかどう?」 「確か保健所に相談すればいいはず」


「先生説得できる?」 「私が許可する!!」



一気に問題の解決をみんなで行い始めてる。

私たちの担任も乗り気で許可出してるし……

このクラス……恐ろしいな。


「メイド長は?」


「「「藍ちゃん/さん!!!」」」



「?????????」


私は傍観を決め込んでいたはずだったのにいつの間にかとんでもない役職につかされそうになってるぞ!?

これはやべぇ……

理外の外側からとんでもないものが襲ってきた。

なぜ私なんだ。


「私以外にもいい人がいるよ!なんで私なの!?」


「「可愛いから!」」


数人の人たちが私の問いに返答をしてくる。

ダイレクトにそういわれるとさすがにひるんでしまう。

顔が少し赤くなりそうだ。


「ほら……私のほかにも似合いそうな人いっぱいいるでしょ!七とか美海ちゃんとか佳奈ちゃんとか!」


「私たちはいいよ~」


「藍。ちゃんと現実を受け止めて」


「写真いっぱい取ってあげるからね」



……ああ、この世界は無常だったみたいだ。




そうしてうちのクラスの出し物はメイド&執事喫茶になった。








文化祭でメイド喫茶や執事喫茶をやっているところってあるんですかね?

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