22 ゲームと金髪とイケメン
日差しが少し眩しいくらいの昼間、私は今大手ショッピングモールにいる。
今日は平日で学校の帰りに寄りに来たのだ。
家に帰っていないので制服のままである。こういうのって高校生っぽくていいよねと思う。
なんで今日ここに来たのかというと、新作のゲームが欲しかったからだ。
モンスターを狩るやつだ。
かなりシリーズが続いていて、私も思い入れのあるゲームの一つになっている。
なので発売前から店頭予約をしていた。それを取りに来たのだ。
最近はダウンロード版で買う人が多かったりするらしいけど、私はパッケージやソフトを飾っておきたいタイプの人なので毎回店に行って購入している。
因みに漫画や小説とかを買う時も紙媒体のを買ってるよ。
ずらーって並んでるのを見るのが楽しいんだよね。スペースを取って邪魔な時も多々あるけど……。
ゲーム売り場に着いた。
とりあえず最初は予約していたのを受け取りに行く。
「すみません、これ予約してたんですけど」
店員さんにこういう所で話しかけるのってほんの少しだけ緊張する。……するよね?
前もって予約していたのでスムーズに手に入れることができてうれしい。
店頭販売限定のアイテムとかもゲットできたので気分は上々だ。
せっかくゲーム屋に来たんだから、他にも売ってあるものを見ていくことにする。
それにしても久しぶりにゲーム屋に来た気がする。
小学生とかのころは頻繁に着て多様な思い出があるけど、中高生くらいになってから来た覚えがあまりない。
きているんだろうけど思い出せない感じだ。
店の中のレイアウトとかも変わっていて、始めてくるような感じがする。
「おっ、これは」
面白いものを見つけた。
ドラゴンなクエストのソフトが並んでいた。かなりシリーズが続いていているからやったことのないものもある。
このゲームの話をすれば話相手の世代がばれちゃうこともあるよね。
ちなみに私はⅨだよ。
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懐かしいゲームとかもたくさん売ってあって、見ているだけで想像以上に楽しかった。
ドラゴンなクエストのⅢがリメイクされたものがあったので買ってみた。
Ⅲとかは発売が昔過ぎてやってみる機会がなかったからうれしい。
自分でも口角が上がっているのがわかるくらい、わくわくしてる。
早く帰って遊びたいなぁ。
今日買った日本のソフトがあれば数百時間は遊べるね。
みんなはどれくらい一本のゲームに時間をかけるのかな?
ゲームってしてるとあっという間に百時間とか超えちゃうから寝不足にならないか心配だなー。
「ねぇ君、今って時間ある?」
何か隣から聞こえてくる。男の声だ。
口調からして明らかにナンパだ。
十数年の人生を送ってきて、おおよそ一般的ではない数の被害を受けてきた私が思うにこういうのは無視するのに限る。
ちょっとでも話しちゃうと粘着されるから気を付けたほうがいいよ。
「ちょっとまってよ。今学校帰り?俺とそこのカフェ寄ってかない?」
「えぇ……」
コイツ!?私の前に回り込んできやがった!?
私がいつも相手にしているやつらよりレベルが高いぞ……
普段ならちょっと無視すればいなくなっていたのに、根性あるなコイツ。
「少しだけでいいから。五分だけ!」
ゲーム買ってわくわくしている女子高生を狙ってナンパするとかコイツ正気なんですか!?
目の前にいるナンパ野郎は典型的な金髪で顔は特別悪いわけではない。
普通にやってれば彼女とかできそうな感じなんだけどなぁ。
「そんなに俺の顔見てどうしたの?もしかして惚れちゃった?」
「……マジヤバくね?コイツ」
「おっ、俺としゃべる気になってくれた」
……思っていたより想像以上にヤバい。いろんな要素が絡み合って怖くなってすらいる。
フィールドボスとエンカウントしたみたいだ。
どう対処しようかなぁ。生半可な方法じゃあきらめてくれそうにない。
「おい、俺の藍に手出すなよ」
私は突然誰かに肩を引き寄せられた。
私を引き寄せた人を見る。するとそこには、さわやか系のイケメンが立っていた。
ふわっといい匂いもする。
なんだこれぇぇぇ!???ラブコメか!?
私がそのイケメンの方を見ると、私にさりげなくウィンクをする。
このひと……絶対ウィンクしなれてるよ。
もうやり慣れてますって感じの洗練された職人ウィンクだよ!
しかもさっき私の名前言ってたよね……。この人と会った覚えないんだけどな。
「おぉ、まじかー彼氏持ちかー。やっぱ、こんなかわいい子は彼氏いるよなぁ」
「そうだ。だからナンパなんかしてないで、もっとそのやる気を別のことに使え」
「そうだよなぁ、悪かった」
金髪は頭に手を当てながら人ごみの中へ去っていってしまった。
「じゃあ、そこのカフェ行こうか」
「えぇ……」
このさわやかイケメンももしかしてナンパなのかな?
もしかしてさっきの金髪とグルとか?
「ああ、これじゃあやってることと同じだね。う~ん、どう伝えるのがいいのかな」
「あの、私たちかなり見られてるんですけど」
もはやドラマとかの中でしか起こることのないようなものが起こったからだろう。
周りに人だかりができている。
「そうだ!これでどう?」
イケメンがスマホを取り出して操作する。
すると私のスマホが振動した。取り出してみると、メッセージが届いていた。
送信してきたのは……
「千秋さん!?」
「おどろいた?私なら一緒に行っても安心でしょ」
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なぞのさわやかイケメンが、紅紫兄のコスプレ仲間の千秋さんだったので、一緒にカフェによることにした。
「千秋さん、めっちゃカッコいいです」
「ありがと。それにしてもさっきの金髪すごかったね」
「あそこまで格の高い奴には初めて会いましたよ」
「すぐに退いていってくれたからよかったけど、もっと強引な人とかもいるから気を付けてね」
「はい!それにしても、千秋さんは何で男装してるんですか?」
とりあえず一番気になっていることを聞いてみることにする。
声も完璧に男の人だったし、気になって夜しか眠れないよ。
「それはねぇー、紅ちゃんと同じ理由かな」
「紅紫兄ですか?」
性別逆転のコスプレかぁ。
だからあの時、紅紫兄が男だったってことを知っても最初だけしか動揺しなかったのかな。
「そうそう高2くらいの時にね、普通のコスプレはだいたいやり切ったなって思ってたから始めたんだけど、これがまた面白くて。気づいたら男装の専門になってたんだよね」
「へ~。普段からそうやってるんですか?」
「時間があるときはね。今日は講義が午前中だけだったから。藍ちゃんは?」
「今日はゲーム買いに来てたんですよ」
「えー、どんなやつ?」
千秋さんとのカフェトークはとっても盛り上がった。




