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20 田中七の記録帳

私は田中七。

私の親しい人はほとんどの人が七と呼ぶ。

自分のものには名前を書いておきなさいと一般的に言われている。

だけど表紙に書くのは少し恥ずかしいからノートの中に書いてみた。

私はこのノートをなくすつもりはないし、誰かに読ませることもない。

もしこのノートが全部埋まったらシュレッダーにかけて処分をするので私自身がこのノートのことを忘れてしまったとしても大丈夫なはずだ。


いろいろここに、日ごろ言えないようなことをぶつけていくだろうけどまず最初は私のことについて書くべきかなと思う。


私は食べることが好き。甘いものだって好きだし苦いコーヒーとかも好き。

だいたいなんでも食べれるし好きだ。

だから、食べたことのないものを食べるのは新鮮で楽しい。

休みの日もそうやっていろんなところに食べ物を食べに行ってる。

最初は近所から電車とかバスとかで行ける範囲をまわっていたけど、次第に行くところがなくなったから遠出をするようにもなった。

連休があれば沖縄とか北海道、スペインとかイタリアあと、イギリスなんかの海外にも行った。

私はだいたいその地の料理とかを食べる。

私がイギリスに行ったときはかの有名なスターゲイジー・パイとウナギのゼリーよせを食べた。

美味しくなかった。

だけど、ホテルの朝食で食べたイングリッシュブレックファーストはおいしかった。


帰国後イギリス料理を食べた記念に動画にとっておいたものを適当に編集して動画サイトにあげたら何故かバズった。

だからたびたび動画をあげたりしてそれなりに収入がはいるようになった。

これで思う存分いろんなものを食せる。

休日はとても充実しているし楽しい。


私のことを書くと休みの日のことしか書かないので平日の日のことも書くことにする。


平日の私の生活で楽しい事といえば、藍ちゃんと一緒にいること。


藍ちゃんについてここには何も書いていないので書いておく。

藍ちゃんを一言で表すとするなら可愛い。

初めて入学式で見たときは芸能人かなと思うほどかわいかった。

みんなもざわざわして藍ちゃんの方を見てた。


そして入学式からしばらくして、高校での友人関係はどのグループに入るのが一番いいかを考えているところに藍ちゃんが目に入った。

あれだけ可愛ければ社交的でキラキラしてるんだろうな~と思ってた。


だけどそうじゃなかった。一人でいたのだ。

新しい友達を作り、グループが形成されるこの時期に。

私は藍ちゃんに話しかけることにした。

何度も話しかけているとわかったことがある。

それは、藍ちゃんは男子みたいだということだ。

ボーイッシュとかそういう事じゃない。話し方やしぐさ見た目はもちろん骨格も女子。だけど根本的なところでなにかが違うような気がした。

あぁ、だからか。と納得することができた。


私は藍ちゃんの中学生時代を知らない。

だけど何となく想像はつく。おそらくは女子より男子の方が気が合うのだろう。

そうしていれば、周りに残る人は少なかっただろうと。

この場合、藍ちゃんの可愛い容姿も足かせとして働いただろうなと勝手に想像してしまう。

昔からこう、人のことを推測するのは私の悪い癖だ。


私は学校にいるとき、いつも人の顔色を見て過ごしてきた。

みんなとはそれなりに仲良くしてきたし、それに応じるくらいの楽しさがあった。

いじめられてきた過去もないし、誰かをいじめていた記憶もない。

私は今思うと、その時の現状から平穏の水準を動かしたくなかったんだろうなと考えている。


だけど、そのときの私は藍ちゃんに何時も話しかけているうちに、普段より楽しいって思うようになった。

もっと話したり笑ったり遊んだりしたいと思うようになってしまった。


私は、一緒にいろんなところに行っていろんなものを食べた時も、私の家に招いたり、招かれたりしたときも、そのすべてが楽しかった。

心から楽しいと思えることにたくさん出会うことができた。


私と藍ちゃんは一緒にいることが増えた。

だけど、ここで藍ちゃんを私が独占してしまったら、何かがあったときによくないと思った。

私がいなくなった時とか、私が助けれないときとか。


だから私は藍ちゃんに友達を増やしてもらいたかった。

出来るだけたくさん。できるだけ好感度が高くなるように。

だから、話し方、性格の見抜き方、性格による対応の仕方。いろんなことをさりげなく教えた。

その試みはうまくいったみたいで、私がいないときにほかのみんなが声をかけて、助けてくれていた。


クラスでの地位は高くなって、藍ちゃんは何時でもクラスのリーダーになれるくらいの場所を手にした。

私はその様子を見て安心した。

だけど、少し遠くへ行ってしまった気もした。

私はいろんなことを藍ちゃんに教えたけど、それを使っても結局人も顔色をうかがうだけだから、そこまで行ってしまえるのは藍ちゃんの力があってこそだ。私はその場所まで行くことはできない。


それなのに藍ちゃんは、私のところまで来てくれた。

どんどん学校中で人気が高まって、告白とかもされて、いろんなことができて、とってもかわいいのに。

最後には必ず私のところへと戻ってきてくれた。


私がにあげたものは少ししかないのに、藍ちゃんはもっと幸せを返してくれた。

こんな経験は初めてだった。


私は他人というのは自分が与えた分だけ返してくれる、自分の鏡の様なものだと思っていた。

だから私は藍ちゃんにそれとなく聞いた。


「どうして藍ちゃんは私にいろんなことをしてくれるの?私は何もしてあげてないのに」って。


そうすると藍ちゃんはこう返してくれた。


「私は何もしてあげられてない、七に貰ってばっかりなの。もし七が私から沢山何かをしてもらってるような気がしたのなら、それは私たちがとっても仲良しな友達ってことなんじゃないかな?」


そう答えられた時私はうれしくなった。

このうれしいって思った気持ちは藍ちゃんが与えてくれたものじゃなくて私と藍ちゃんで共有しているものなんだ。

私がうれしいと思っただけ藍ちゃんもうれしいって思ってくれてるんだって。


その考え方はすとんと理解できて、藍ちゃんと一緒にいてもいいんだと信じることができた。

だから私は今日も楽しいし、きっと明日も楽しい。

何時もしっかり目を見て言うことはできないけどここになら書ける。




























ありがとう。藍ちゃん。

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