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18 体育祭③

しばらく歩いていると、体育館の入り口に紅紫兄がいるのが見えた。

私たちのことを探していたのだろうか。

ちょっと歩いていくと紅紫兄も私たちの方を見つけたのか、笑顔で手を振ってくる。

その笑顔、イケメンだぁと思いながら手を振り返す。

あれで何人の女生徒を落としているんだろう?真面目に気になっちゃいます。


「お疲れ、二人共だ頑張ってたな。しっかり監……応援してたぞ」


んん?今、監視してたって言おうとしてなかった?

黄の方をちらっと見ると、肩をすくめてどうしようもないというような表情をしていた。


「そっちこそ、お疲れ」


「ああ、おなかすいたから早く弁当食べようぜ。母さんが作ってきてくれてるからな」


「朝からお母さん頑張ってたもんね。楽しみにしてたんだ~」


お母さんの料理の話を聞くと、黄はさっきの表情からコロッと笑顔になった。

とても楽しみにしていたのがよくわかる。

かのいう私もお母さんの手料理を楽しみに今日を頑張ったといっても過言では……ちょっと待てよ?

障害物競走の時は七のために頑張ってたから、過言なのかもしれない。

だけどここでそれを受け入れてしまったら少しだけくやしい気がするなぁ、とどうでもいいことを考えてしまうTS娘であった。


「二人とも、早くいくよ!」


どうでもいい考えは気にしないことに限るね。

紅紫兄と黄の手を引っ張ってお母さんがいる所に行こうとする。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


体育館で人を探そうとすると、人が混雑していてどこに目当ての人がいるのかが分からないことがあると思う。

だけど、私のお母さんはすぐに見つかった。

何故かって?言わなくてもわかるよね。

私たち三人のお母さんだからね。もちろんとっても美人だからだよ。


三条夜琉(よる)名前からもわかる通り、深く静かでそれでいて壮大で流れるような雰囲気を纏っている。

何を言ってるのか分からないと思うけど、とにかく近くにいると安らげるような、そんな人だ。


腰近くまで長く伸びた黒髪はつやを持っていて、周りの人を圧倒するようだ。

頑張りすぎでもなく、かっこ悪くもない服をまるで最新のトレンドのように着こなしている姿はまるでモデルさんみたいだ。


てくてくと二人を引っ張って、お母さんのところに近づいていく。


「お母さん、私の活躍みてた?」


「ええ、とっても良かったわ。ふふふ、写真も動画もたくさんとれたし、去年のと見比べてみようかしら。ああ、黄と藍と紅紫が頑張っているところを見るのは最高ね。いつも私の想像を超える興奮と感動を与えてくれるのなんて、ん~~大好き。写真は額縁に飾って、動画は百回以上見て目に焼き付けて、生で見たものは常に脳内再生できるわ」



ここにもいたか変態。


私は、黄と紅紫兄の方を見ると、やれやれというような表情を浮かべていた。

もしかして、私の家族は変態一家なのかな?

周りの人がちょっと引き始めてる。逆にこれで少ししか引かれないのはすごいよね。


「お母さん、お腹すいた!」


「っ!そうね、みんなで食べちゃいましょう」


お母さんを現実世界に戻せたみたいだ。

そしてそのままバックから重箱を取り出して私たちの前に置いた。


「「「おおぉ」」」


重箱を開けると、ハンバーグ、エビフライ、チキンナゲットみたいな、見るだけで美味しいとわかるものから、初めて見るものまで入っている。


「旨そうだな」


紅紫兄が、早速エビフライをパクパクとしっぽまで食べてしまった。


よくエビのしっぽは成分が漆黒の暗殺者Gと同じだという話があるけど、完全無欠の美少女である私は食事中にそんなことは……


「紅紫、エビのしっぽって、ごk「お母さん!?」」


不意打ちだ。見事に不意を突かれてしまった。


「……え?どうしたの?藍」


「むー、奴の名前を言わないように頑張ってたの」


「それってごk「お母さん!」」


私のお母さんはとっても美人で何でもできるんだけど、ちょっと残念な人なのだ。


「これって何?」


「それはな、からすみっていうんだ」


「じゃあこれは?」


「んー、何の肉だ?これ」


黄が謎の肉の様なものを箸でつかんでいる。

紅紫兄も分からないみたいだ。これっておいしいのかな?

そんなことをしていると、お母さんが正体を教えてくれるみたいだ。


「それはね、ウミガメのチャーシューよ」


「ウミガメ?ウミガメってあのウミガメだよね?ほんとに食べれるの?」


「もちろん。絶滅危惧種だから、保護しなければいけないのよ」


「えー……、じゃあ何でここにあるの?」


「年に百匹くらいなら捕獲してもいいことになってるの」


私はウミガメの肉を取って食べてみる。

それにしても見た目はほとんど普通の肉と変わらないのに、よく気づいたなぁ黄はすごいなぁ。


「美味しい!」


ウミガメって海で泳いでいるのに、魚とかじゃなくて豚みたいな陸上の獣系の肉って感じがする。

なかなかにおいしい。


「この肉はどこで買ったの?」


「それは秘密よ」


「……この肉って本当に大丈夫なの?」


「おいしかったでしょ」


「美味しかったけど……」


「美味しかったならそれでいいのよ。ウミガメの出どころなんて大したことないじゃない」


それってホントに大したことない事なのだろうか……

ともかく、私のお母さんはいつもこんな感じだ。

ほかの料理には特に法的に危険なものは入っていなさそうだった。(ゲテモノ料理とかが入っていたけど)







いつかウミガメ料理を食べてみたいものですね。

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