14 ゲームセンター②
プリクラをもう一度撮って、新境地に達した気分の私はウキウキだ。
「黄、次は何にしようか」
「じゃあ、次はメダルゲームじゃない?」
「それこそゲーセンのメインディッシュって感じだよね」
「時間も使うからね。メダル下ろしに行こうよ」
私たちは、メダルのATMみたいなところに行く。
そう、私たちは一度盛大に大勝利をし、たくさんのメダルを手にしたことがあるのだ。
それの貯金をゲームセンターでしているので、それを下してからするのだ。
その時から、メダルゲームはよくやるようになった。
「この台にしようよ」
黄がプッシャーゲームの台に座る。
メダルを入れて、台の中にあるメダルを押し出すタイプのやつだ。
これってうまくいく時と行かないときが激しいんだよね。
私もカップにメダルを入れて黄の隣に座る。
「黄、どっちが多くメダル取れるか勝負しようよ」
「いいね。時間はどうする?」
「一時間でどう」
「おっけー。じゃあ今からスタート!」
メダルを投入してゲームをスタートさせる。
プッシャー型は時間と軍資金がないと価値が見込めないゲームだ。
一時間くらいで一回大当たりを引ければ勝てる!
◇◆◇◆◇◆◇◆
あっという間に一時間が経過する。こういうのをしている時って時間がものすごく短く感じるよね。
授業の一時間だったらものすごく長く感じるのに、ここだったら瞬きをする間に終わるレベルで早い。
この一時間で私は百五十枚くらいメダルを増やした。
かなりよさげな結果だと思う。
早速、黄とメダルの数を対決する。
「調子はどうだったかね、黄」
ちょっとうざい博士みたいな口調で話をする。
「それなりだったよ。藍姉ちゃんこそどう?」
それなりって言われても、どちらでも取れるから、分からない。
多いかもしれないし、少ないかもしれない。まだ勝利を確信するには早い。
「私もそれなり」
「じゃあ、お互いにどれくらい増えたか見せるしかないみたいだね」
なかなか強気みたいだ。
「私に勝てるかな?黄」
「そっちこそ。じゃあ、もしこれで負けたらクレーンゲーム奢ってよ」
「おっけー。お姉ちゃんが負ける道理はないんだよ」
「ふふっ!その強気がいつまでもつかな!?」
「私は決して負けはしない!」
魔王と勇者の会話みたいなことをしながら、お互いの稼いだメダルのカップを出す。
「僕の勝ち!」
「うおぉぉぉ」
結果は黄の圧勝だ。我ながら即堕ち2コマみたいだなと思っちゃう。まあその通りなんだけど。
メダルの枚数は見てわかるほどにある。カップ一杯分くらい黄の方が多かった。
百枚くらい増やしたときには勝ったぞ!と、確信を持っていたんだけどそれ以上の力でねじ伏せられてしまった。
「じゃあ藍姉ちゃん、クレーンゲームのコーナーに行こうよ!」
黄が私を見ながらちょっと背をかがめて上目遣いをしてくる。
黄と私の身長は同じくらいだから、少しかがまないとそんなことはできない。
その仕草はそれを理解しているようにしか思えない。
こんなんじゃ、どこかの野郎につかまるんじゃないかと思うんだ……私は。
出来るなら止めさせたほうがいいんだろうなと頭の隅っこで考える。
「うーーーーん!行こっか!」
残念ながら私は黄の誘惑に負けてしまったよ。
私ってかわいい子に弱いんだ~
クレーンゲームのコーナーに歩いていく。
このゲームセンターには入り口から入ったすぐの所に位置している。
ここだけじゃなくても、私が行くところは入口のそばばかりな気がする。
そうするのが利益的に効果があるのかな?
「この糸を切るタイプってクリアできたところ見たことないんだよね」
黄が指をさしたのは、糸で景品が吊り下げられていて、それをはさみで切るやつだ。
糸がくにゃ、ってなって、うまくいかないんだよ。
糸には、ゆるいキャラのぬいぐるみがつけられている。
「分かる。そもそもこれってクリアできるのかな」
「確立機だしねー。お金入れまくれば獲れるだろうけど」
そう、この糸のタイプというか、クレーンゲームはほとんど確立機だ。
店側が設定した金額までお金を入れまくらないとほとんど獲得できない。
あと少しで取れそうだな……、みたいな演出までしてくるから、なおさらたちが悪いのだ。
無邪気に遊んでる子供たちがかわいそうになってくるよ。
「やってみてよ」
「えー、これって絶対鬼畜設定になってるでしょ」
「藍姉ちゃん、さっき負けたでしょ。約束を果たす時だよ」
「うーー、やってみるかぁ」
私は百円を投入しゲームをスタートさせる。
「これで取れたらいいんだけどなー」
ボタンを押してハサミを移動させる。
そしてそのまま刃で糸をカットしにいく。
「こい!」
音楽とともに閉じていくはさみに糸はしっかりととらえられ、プツンとゆるいキャラが落ちてくる。
「「おーーー!」」
景品取り出し口からゆるいキャラを取り出す。
ビミョーに可愛くない。エビに手足が生えたキャラだ。
「前の人が頑張ってくれたのかな」
「うーん、どうだろ。僕もやってみようかな」
黄が私のとったエビ怪人(仮称)の隣につるされているもう一つのエビ怪人(仮称)に挑戦するみたい。
百円を入れてゲームをスタートさせる。
さっき私がやったのと同じように刃が糸を挟む。
「あー、やっぱりそうなるよね」
刃が滑って、くにゃっとなり糸を切断することはできない。
「設定金額がいくらか調べてみようかな」
「本気だね……」
黄がやる気になったみたい。
景品のエビ怪人(仮称)自体の値段があんまり高そうじゃないから、設定金額はそんなに高くなさそうだなぁと思っちゃう。
黄は次の百円を入れて、ゲームをスタートさせる。
数十秒前と同じ場所に止まり、刃が糸を挟む。
するとプツンと糸は切れ、エビ怪人が落ちてくる。
(仮称)がなくなったのは、めんどくさくなったからじゃないからね。…………ホントダヨ。
「ゲット!」
「ナイス―」
黄と私はハイタッチをする。
「やっぱり、あんまり設定は高くなかったみたいだね」
「エビ怪人だしねー」
「エビ怪人って……」
うむ、あまり黄へのウケはよくなかったみたい。
話題を無理やり変えていくしか私は思いつかないので、そうすることにする。
「それより、これでお揃いだね」
「うん!そうだね。藍姉ちゃんとのお揃いって少ししかないから、うれしい!」
「バックにでもつけとこうかな」
私は今、手に持っているバックにつけることにする。
黄とのお揃いグッズは肌身離さず持っておきたい。
「僕もそうしようかな」
黄もそうするみたいだ。
「久しぶりだったけど楽しかったなー」
手に付けている時計を見ると、もう夕方だ。
そろそろ、私たちお子様は帰らないといけない。
「そうだねー、僕も藍姉ちゃんと遊べて楽しかったー」
「また一緒に来れたらいいなぁ」
「そうだね、次は紅紫兄と一緒に来ようよ」
「それいいね!はぁー、次が楽しみだなぁ」
こうして久しぶりに来た、ゲーセンでの遊びは幕を下ろしたとさ。ちゃんちゃん!