12 部屋の整理
今、私は私の部屋の中で片づけをしています。
何を片付けているかって?それはわかりきったこと。
紅紫兄が私の部屋にたくさん置いている服とか、化粧品とかの数々だ。
紅紫兄はぽんぽんと私の部屋を物置みたいに使っていく。
これを今日こそ突き返してやろうという算段だ。
もしここにあるものを一気に突き返したら、紅紫兄は困るだろーなぁ。なんて思いながら整理をしていく。
……おっと危ない、ちょっと。にやけてしまっていたようだ。
「うわこれ、いつ使うの」
頭につけるうさ耳を見つけた。これを紅紫兄がつけていたのか……?
恐ろしいものを感じる。ケモナーの人たちには需要があるのかな?
そもそも、これが私の部屋の中にあったことに驚きを隠せない。
なんてものまで押し付けてるんだ、あの兄は。
それを思っているのも、つかの間、次に出てきたのは背中が大きくあいた服が出てきた。
なんでこんなの持ってるの……。このままここに放置していなくてホントに良かったと思う。
この部屋にだれか来ることはないと思うけど、こんなものを私の部屋から発見された日には相手の目線一つで即死してしまいそう。
あれ?この間七と勉強した時この部屋使ったような……。
あっぶな!あの時七がこの地獄のアイテムたちを発見していたとしたら、私の命は今頃どうなっていたことか。
一刻も早くこいつらを処理しないと。
次々と出てくる珍品の数々に困惑しっぱなしだ。
だけど、変なものが私の部屋の中にあるということ自体が私の部屋のかたずけの意欲を飛躍的に向上させている。
てきぱきと処理しているとあっという間に私の部屋から病巣が摘出された。
かなり深刻な状態まで来ていたけど、これまで何事もないまま、今日無事に治療することができて本当に良かったと思う。
早速紅紫兄の部屋に、いろいろと持って行くことにする。
数十着の服と、段ボール一箱分のコスメグッズ、それに加えて、段ボール人一箱分の小物や謎の物。
かなりの量があるので持って行くのは大変だけど、頑張る。
私の家の二階に上ったところに、黄、私、紅紫兄の順で部屋がある。
つまり、私の部屋は黄と紅紫兄に挟まれているということだ。
すぐ隣なので、パッパッと運び込んでしまって、早く終わらせてしまおうというつもりだ。
段ボールを持って紅紫兄の部屋の前に立つ。
足でドンドンとノック的なものをして突入する。
行儀が悪いのはこの際目をつぶっておいてくれないかな。
「入るよー」
「藍は強盗みたいな部屋の入り方しか知らないのか……」
「わたしが強盗、失礼な。むしろ、お届け物をしに来た宅配業者だと言ってほしいね」
「違うな。お前が今やろうということは、宅配じゃない。押し売り販売だ」
「これは紅紫兄のものだから販売ではなくて、返品だよ」
私は紅紫兄に持っていた段ボールを手渡す。
「俺の物?」
「こんな危険物を私の部屋に置いておくわけにはいかないのです。もし誰かに見られたらどうなることか」
紅紫兄が机の上に段ボールを置き、中を確認している。
ようやく、何が渡されたのか理解したみたいだ。
「あー、これって勢いで買ったやつだ。ほとんど使わなかったんだよな。」
出てきたのは魔法少女のステッキだ。
勢いで買えるものなのか……。それにしてもこれ、使ったのかな。
「なんでこんなものを買っちゃたのさ。勢いで買えるようなレベルのハードルを越してる気がするんだけど」
「女装すれば可愛くなるって思ってたんだよ」
「自信過剰ですな。それでどうだったの、可愛くならなかったの?」
「可愛くはなったんだけどさ、ちょっと俺の心の方にダメージが入ってきてな」
「……あの鋼の紅紫兄の心にダメージを与えるとは」
「さすがにあれはちょっとキツかったんだよなぁ」
「する前から予想はつくでしょ」
「それを言われると何も言えん」
「ま、それはいいとして、ここにあるやつ全部紅紫兄のやつなんだからね。ちゃんと引き取ってもらいます」
「マジかよ」
「マジです」
紅紫兄は自分の部屋の中におけるスぺースがあるかきょろきょろと確認している。
「ちょっときついな」
「じゃあ、残念だけどこれは捨てないといけないね」
悲しい現実である。そもそも、ほとんど使わないような奴をたくさん買って、可愛い妹の部屋に押し付けるほうが悪いて思うよ。
「うぉぉ、それは心苦しいな」
「紅紫兄って断捨離とかできないタイプだもんねぇ」
「いつか日の目を浴びる日が来るかもしれないだろ」
「そういってるから、どんどんどんどん物がたまっていくの」
「……わかったよ。いらないものは捨てることにするさ」
ついに観念したみたいだ。
長く苦しい戦いだった——————。私の部屋に安寧が取り戻される!
「ようやく改心したか」
「ここんとこは勘弁しといてやる」
「むっ、少ししたらまた私の部屋に押し付けるつもりでしょ」
「……なぜわかった」
「私は紅紫兄の可愛い妹だからね。今後もそんなことしないようにすること!」
「じゃあ、交渉しよう」
紅紫兄が交渉を持ちかけてきた。
問題は紅紫兄が私に出す対価だ。それ次第ではちょっとなびくかもしれない。
「ふーん。じゃあ、何を提示してくるのかなー?」
「そうだな。お兄ちゃんに何かしてほしいことをしてもらえる券。とかはどうだ」
「んー紅紫兄のはいらないかな。黄のだったらほしいけど」
「弟に負ける兄なのか」
「可愛さが違いすぎるしね」
「そうだよなぁ……。そう考えると格が違いすぎるんだよな」
「交渉は決裂だね」
「うっ、そこをなんとか……」
「それなら保留にしておいてあげようか?何か私がやりたかったり、欲しかったりするものがあったときに、私の部屋に物を置いてもいい代わりに、その願いをかなえてあげるってことでどう?」
「……まあ、それなら多少はましだな」
「じゃあそういうことで!あ、今は何も願いはないから、荷物は紅紫兄の部屋に全部戻すからね」
「……そうか。早く何かを願ってくれよ」
よし!これで困ったことがあったら紅紫兄に押し付けられる!
鬼札を手に入れたから、たいていのことはもう怖くないね。
「よーし。じゃあ全部運んでいくからね」
部屋の中を整理できて、紅紫兄とも契約を結ぶことができた。
大きな収穫だ。