ユウキは【検証】を行う
合成スキルを手に入れて数日。ボクはいつも通り、学校に通って気が付けば土曜日になっていた。
その数日間でボクは合成スキルの検証をしていた。文房具屋でシャー芯がパックになって3個ほど入ってるやつを5つ買って合成していた。
合成した物を『合成物』。
合成物の鑑定時、名前の隣に出てくる+値を『強化値』
合成時に右手にあるものを『強化元』
合成時に左手にあるものを『強化素材』
と呼称することにしてどれだけ合成できるのかを試したところ
シャー芯は一個のケースに40本入っており、合計で600本あるわけだ。
一々一本づつ合成するのが面倒くさそうだと思ったボクは強化元となるシャー芯を右手に持ち、599本のシャー芯を左手に持つという横着して合成してみたら何と成功してしまった。
599というのはキリが悪いので一本新しく合成しつつ気のせいか、少し煌めいて見えなくもないシャー芯を鑑定してみたところ。
「【鑑定】」
《アイテム》
名前:シャープペンシルの芯+600
状態:超硬い
【解説:ただのシャー芯がユウキの手によって炭素が圧縮され、ダイヤモンドになりかけている。その硬度は普通のシャー芯を遥かに上回っており、絶対に折れることがないどころか、ノートの方を切り裂くほど。】
などと言う訳の分からない状態になっていた。ついでにスキルを入手したと表示されて合成のランクが上がった。
ランクがボクにどんな影響を与えるのかは知らないがスキルが二個貰えたのでどうでもいい。ここでボクのステータスを見てみることにする。
《ステータス》
名前:藤宮悠姫(15)
職業:学生
状態:冷静(大)・無表情
○スキル
【合成Ⅳ】【鑑定Ⅲ】【分解Ⅱ】【融合Ⅰ】
《ナレッジ》
名称:スキル・分解
【解説:物を複数に分けることができる。】
《ナレッジ》
名称:スキル・融合
【解説:全く違う物を一つに纏めることができる。】
分解は合成の真逆で使うと合成物を元に戻してしまう。融合はどうやら合成では同じものしか効果がないのだがこのスキルは違う物でも一つにできるらしいので試してみる。
右手に消しゴム、左手には鉛筆。
そして「【融合】」と呟くと二つとも淡い光を纏うが合成と違って勝手に動くことはなかった。
もしやと思って某一時期凄く流行った黄色いピン芸人のように鉛筆の削っていない方と消しゴムを重ねてみるとどうやら融合時にはもう一つの融合物との物理干渉がなくなるようで透けてしまっていた。
ここで「完了」と呟いてみると淡い光は霧散して消しゴム鉛筆が出来上がった。
正直言ってこんなのは普通に文房具屋に売ってるし、消しゴムが通常サイズだから少し邪魔そうだが、そうではなく分かったことがある。
この融合というスキルは言わば“のり”の役割を果たしてくれるらしい。違う点と言えば何処にでも使えるということだろう。
続いて鑑定スキルについてだ。
このスキルはランクが上がったことにより、情報が出やすくなった……らしい。
らしいというのはボク自身がそんな実感がないからだ。いつでも使える辞書的な印象だ。
ただ実に面白いことに鑑定をしまくった結果。とあることが分かった。
それはこの世界に魔法が存在したということだ。ボクが読んでる小説に魔法という単語が出てきた瞬間に「そう言えば魔法ってあるのかな?」という思いから鑑定してみたら、あった。
《ナレッジ》
名称:魔法
【解説:太古の昔から存在する力。魔力というエネルギーを使い様々な自然現象を発生させる。】
相変わらずの簡素な文だが中々にテンションが上がる話ではないか。創作物のみに存在すると思われていた魔法が本当に存在したとは……ボクにとってとても面白い話である。
「それにしてもボクが幾らスキルを使っても疲れとか来ないのってかなり不思議なんだよな。魔力とか、その他の不思議なパワーとか消費しててもおかしくないのに、ボクには何の異常もない。実におかしい。」
何かのエネルギーを使っていないとこんな摩訶不思議な現象は起きるはずがない。
ということでステータスを見てみるも状態は先程から全く変わっていない。
本当に、本当に不思議だ。理解出来ない。
こんな面白くて楽しいオモチャをくれた存在には感謝することにしよう。
どうかアナタに祝福あれ、と
ボクが気を抜いたのが悪かったのだろうか。ボクの前にはもう見慣れた文字が浮かんでいた。
〈ユウキは【運命神の祝福】を手に入れた。〉
「ははっ、どうやらボクが祝福したかと思ったら仕返されたようだ。借りが増えてしまったね。」
《ステータス》
名前:藤宮悠姫(15)
職業:学生
状態:興奮(大)
○スキル
【合成Ⅳ】【鑑定Ⅲ】【分解Ⅱ】【融合Ⅰ】
○ブレッシング
【運命神の祝福】
ステータスの欄に刻まれた新たなカテゴリ。祝福を見て鑑定する。
《ナレッジ》
名称:運命神の祝福
【解説:ユウキにスキルを授けた張本人が与えた祝福。汝の行く末に幸が在らんことを。】
ボクをとても心強い神が祝ってくれたらしい。これだから人生は楽しい、予想外のことが起きるのはいつだって面白いことの幕開けなのだから。
はい、いきなりスキルを与えた存在を暴露していくスタイル。
大丈夫です。蜜柑を食べながら考えたネタはまだあるので……ヤバくなったらネタを募集します。てかもう募集します。
手は早いうちに打った方がいいですからね。