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タケルは成長したい  作者: ほろほろ
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初めての新歓はアフロの匂いがほのかにした

※この物語はフィクションです。お酒は20歳になってから

「新入生の皆さん、入学おめでとうー!!今日はお笑い研究会の新歓に来てくれてありがとね!じゃんじゃん飲んじゃってー。はいかんぱーい!!」

 幹事長、と呼ばれる方が新歓の開始を告げました。


 え、お酒ですか?僕はまだ高校卒業したばかりだから未成年ですよ。

 しかし……未成年でもお酒飲んでいいとは知りませんでしたねぇ。


 将棋ばかりやっていたから、すっかり世間知らずになっていたようです。

 周りを見ても、新入生の皆さん飲んでいますし、友達の大吾君も至って普通にビールに口をつけています。


 コーヒーと同様に、彼の飲んでいる姿は様になりますねぇ。

 新入生ぽく見えないので、先輩が近くに来ていませんが。


「君、飲んでるか?」

 あぁ、隣に座っている先輩が話しかけてきました。

 アフロ頭って初めてみましたよ。近くでみるとボリューム感たっぷりで、迫力ありますねぇ。

 ちょっと老け顔ですが、常に笑顔のような顔で打ち解けやすそうな方です。


「あ、はい飲んでます。ビールというものを初めて飲みましたが、苦い炭酸、という感じですね」

「あっはっは!そうだな、苦い炭酸だ。甘い炭酸だったらそれはコカコーラだ。俺たちはコカコーラのような甘いお笑い研究会じゃないから。苦くてたまらんぞー」


 ……何を言っているのか、よくわかりませんねぇ。


 大学受験で国語の読解問題は得意でしたが、この先輩の言っている意味は理解不能です。

 これがもしかすると、お笑い、なのかもしれませんねぇ。

 だとしたら僕にはまだわかるはずがないので、会話を続けましょう。


「苦いお笑い研究会ですか、面白いですねぇ。ちなみに先輩、お笑い研究会ではどんな活動をしているんですか?」

「うん?あぁ、俺たちは主に、流行りの過ぎたギャグをリニューアルしてるんだ。例えば、昔小島よしおって奴が『そんなのかんけーねー』ってギャグやってただろ?もうすっかり聞かなくなったけど、俺らはそれをリニューアルした」


 そういうと、その先輩はすくっと立ち上がり、


「でもでもでもでも、そんなの関係ナイチンゲール」

 と、ニワトリのような動きを加えながら叫びました。


 いやぁ新入生の皆さん、ポカーンてしてましたね。

 え、僕?僕はそもそもその芸人さんを知らなかったので、全く意味がわかりませんでしたねぇ。

 でも先輩方は大爆笑してましたから、もしかしたらお笑いに詳しい人には面白いのかもしれない。そう思いました。


「よし、じゃあ次は君だ!ひとつ何かやってみてくれよ!」

 そうアフロの先輩に言われました。


「いやぁ、僕はそういったことをやってことがないので、無理です。すみません」

 一度そう無難に断ったんですが、なんていうんでかね、どうやらお酒が回ってきたようで少し楽しくなってきちゃいました。


 言ったあと、

「あ、でも何かやってみたいですね。少々お待ち下さい」

 と、つい言ってしまいました。


 いやぁその後の盛り上がりったらなかったです。

 アフロ先輩がみんなに伝えるものですから、みんなの視線が僕に集中してしまいましたよ。


「よーしそれでは、今からこの新入生が一発ギャグやります!ギャグの始まる10秒前、せーの!10・9・8……」


 あっという間に退路を絶たれ、しかも時間制限まで勝手に加えられちゃいました。

 その時はお酒で気持ちよくなってましたからねぇ、カウントダウンがとても心地よかったんです。


 でもいざ「1!」と最後の数字一歩手前まで来たところで、なにも頭に湧いてきませんでしたね。

 才能、ないんでしょうね。


「あ……そんなの関係ナイチンゲール、です」

 やってしまいましたね、人のパクリ。


 それもテンションが低めだったんで、誰一人笑ってくれませんでした。

 シーンとした静寂が僕を突き刺して、一気に酔いも冷めそうでしたねぇ。


「おい、人のパクリのパクリしたら、著作権は誰のものになるんだよ」

 はっきりとよく通る声で、誰かがツッコんできました。


 振り向くとそれは、あぁ大吾君でした。

 大吾君、助けてくれてありがとう、そう思いましたね。

 彼とはまだ数時間の付き合いですが、これから仲良くなれると感じました。


 残念ながら大吾君のツッコミも全く笑いをとれず、アフロ先輩の

「君たち二人共、お笑い研究会で勉強せい!」

 というツッコミでようやく場が笑いに包まれました。


 しょぼんと座って、黙ってビールを飲む僕。

 大吾くんはなんであんなに堂々と振る舞えるんですかねぇ。

 気がついたら大吾くんの周り、女性ばっかりですし。


 一方僕はというと、あのアフロ先輩も遠くの席に行ってしまい、両隣とも微妙なスペースができていました。

 えぇ他の人達の会話、入っていくのは難しかったですね。


 他の先輩が気を利かせて話しかけてくれないかなぁと思っていましたが、結局最後まで誰とも話さず終わりました。

 辛かったかですって?いえ僕はこういうの、慣れているんですよ。

 昔は将棋ばかり熱中していたんで、周囲の雑談を遮断して本を読んでいましたからねぇ。


 ビールだけはテーブルに予備が常にあったので、自分で注いで飲んでました。

 周りの会話を聞いているだけで、僕には新鮮で面白かったです。

 みんな会話のテンポが早いので、時々内容についていけませんでしたが。


 そんなかんなで一次会が終わりました。


 もう20時ですし、帰りましょうかね。そう思っていたら先輩が

「2次会行く人は僕らについてきてくださーい。2次会からは会費いただきまーす」

 と新入生へ呼びかけました。


 2次会、てあるんですね。これからまた飲むとは、大学生とはお酒が好きなんですねぇ。

 でも僕は少し気持ち悪くなっていたので、もう帰ろうと思いました。


 一応大吾くんに伝えてから帰ろうと思い、大吾くんを探したら、いました。

 何やら2人の女性と楽しく話しているようです。


「大吾くん、2次会参加します?僕もう帰ろうと思ってます。」

 女性が一斉に僕を見てきました。


 大吾くんも、いつものように冷静な動きでこちらを向き、僕の伝えた言葉を咀嚼するように時間を置いて

「そうか、俺も2次会は参加しない。帰ろうか」

 そう言って、駅の方へ向かって行きました。


「ちょっと河原君待ってよー私達も所沢なんだから、一緒に帰ろうよ」

 さっきの女性2人が、大吾くんに駆け寄ってきました。


 あぁこの2人も所沢に住んでいるんですねぇ。

 全く会話してないので知りませんでしたよ。では4人で一緒に帰るとしますか。


 電車の中での会話、えぇありましたよ。

 女性2人と大吾くんが話してました。

 僕は気持ち悪かったので、一人だけ席に座りまして、気がつけば夢が僕を迎えに来ていました。


 起きたら既に所沢に着いてました。

 僕以外みんな東口の方面で、仲良く帰って行きました。

 もしかしたら2次会、彼らだけでやるのかもしれないですね。

 まぁ僕には関係ありませんが。


 無事家に着いたのは奇跡です。

 何度も人にぶつかってしまい、あるオジサンには軽く殴られたような気がしましたが、なんとか自分のアパートまで帰れました。


 ゴソゴソと鍵をポケットから出し、扉を開けてベットへ直行しました。

 あぁもう動きたくない、もう服も着替えなくていい、歯も磨かなくていい、寝よう。そう思いましたね。


 ーーだけどそれは、叶いませんでした。

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