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タケルは成長したい  作者: ほろほろ
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一人暮らしの開始はほんのり恋の予感があったりなかったり

 今年3月からいよいよ一人暮らしを始めました。


 場所は埼玉県の所沢市。

 大学まで電車で2駅なので、ここにしました。

 

 駅西口の改札を出て、アーケード街を渡ったら信号を渡り、細道をまっすぐ進むと僕のアパートがあります。家賃は6万円。

 水道・光熱費は別らしいので、食費も入れると月々10万円ぐらいかかるのかもしれません。

 10万円て、アルバイトでどのくらい働いたら稼げるんですかねぇ。

 まぁまだ大学に入学してもいませんから、焦らず生活環境を整えましょうか。

 

 アパートの隣人への挨拶、えぇしましたよ。

 僕の部屋は角部屋なので、隣は一部屋しかないんですけどね。

 菓子折りを持っていけと母親から念を押されていたので、駅前のスーパーでそれっぽいお菓子を買い、隣室のチャイムを鳴らしました。


 ーーピンポーン


「はい」

 出てきたのは、なんと女性でした。

 僕より少し年上そうで、長い黒髪の地味そうな女性。


 あ、僕が地味なんて思ったら相手に失礼ですね。

 真面目そうな方といったほうがいいのかもしれません。


「あ……あの、どうも初めまして。隣に引っ越してきた千葉と言います。これからよろしくお願いします」

 持ってきた菓子折りを相手の方へ差し出しながら、挨拶しました。

 そうしたらその女性、首をかしげているんですね〜なぜか。


「あの、これ菓子折りです。よかったらどうぞ」

 

 そう言ってみても、一向に受け取ってくれる気配がない。

 困ったなぁと思ったんですが、母親から聞いた挨拶方法はここまで。

 ここから先どうすればいいのか僕にはわかりません。


 将棋だったら相手の思考の先の先まで考える必要がありますよね、

 実社会でもそうした訓練が必要なのかな?なんて固まったまま考えてました。


「……これって、お返し必要ですか?」

 少しくぐもった声で、女性が聞いてきました。


「え……あ〜いらないんじゃないですか多分。よくわかりません」

 隣人に菓子折りを渡す、それで挨拶が完結すると思っていた僕にお返しが存在するのかどうかわかるはずもなく、バカ丸出しの返答をしてしまいました。


 でもそう僕が答えた瞬間、彼女いきなり笑顔になって

「うわ〜本当ですか!?ありがとうございます!今日朝から何も食べてなくて、お腹減ってたんですよ!うわ〜助かった」

 あっという間に菓子折りは彼女の手に渡り、僕の挨拶は完了しました。

 

 あ、名前聞いたほうがいいかなぁと思ったんですが、表札に『坂井』と書かれていたので、たぶん彼女は坂井さんなんでしょう。

 挨拶のゴールである菓子折り提供を終えた時点で、僕の集中は切れてしまいました。

 じゃあ失礼します、といって隣室の自分の家に戻り、妙な達成感で満ち足りました。

 

 え、恋愛に発展するのかって?いやいやそれはありえません。

 僕は今まで将棋しかしてこなかった人間ですから、女性とも挨拶程度、そうさっきの会話程度しか話したことがありませんねぇ。


 女性棋士とも対局したことがありますが

「お願いします」「負けました」「ありがとうございました」の3フレーズしか使ったことがありません。

 

 そう考えると、将棋ってすごいですね。

 3フレーズだけ知っていれば外国人だって指せます。

 まぁでも、駒の字を読むのが大変かもしれませんが。


 隣人が男性だったら騒音がした際どうすればいいんだ、と住む前は悩んでいました。

 女性だったら大丈夫、そんな根拠の無い自信が僕にはあります。

 隣人トラブルは避けていきたいものです。

 

 その日はまだ調理器具が揃ってないので、夜は外食にしました。

 知らないレストランに一人で入る勇気は無いので、駅前の吉野家へ行き、牛丼大盛りを注文しました。


 全く知らない人達に囲まれて食べていると、不思議とこの所沢という街の住民になった感じがしましたねぇ。

 これから4年間、ずっとここに住むのかはまだわかりませんが、この街を満喫したいものです。

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