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1話 ひきこもりの日常

起きたのは夕方だが 俺はとりあえず今から活動を開始するわけだ。



ラジカセにアマゾンで取り寄せたアニメのキャラソンCDをかけ、PCのスイッチを入れる。



「♪♪♪ 〜♪♪〜♪♪」



六畳一間の狭い空間にて 意味のわからない、もはや日本語がどうか不明の歌詞を、ロリっ気の混じった声で女の子が歌い、部屋中に響き渡る。



ひきこもりは毎度毎度、することがないのでアニメに没頭するしか時間を潰す道はないのだ。



最近では悲しいことに気に入ってるアニメ(萌え系・ほのぼの系)を完璧なほどに熟知している。



そう、俺は世間でバッシングされているオタクだ。 でもアニメは見ていると心が癒されてなんとなくだが落ち着くのだ。


オタクになりたかったのではなくなってしまったと言った方が正解。


アニメ観賞は精神安定剤の効果も含まれていると常々思う。



アニメ万歳! 萌え万歳! ほのぼのゆるゆる系万歳! オタク万歳! 





部屋のど真ん中にドンと置いてある炬燵に足を入れ ウィンドーズ画面の暗証番号を記入し立ち上げる。その間に鳴ってある音楽を消す。



ひきこもりにとって パソコンは生きている糧なのだ まさに生命線。



これがなかったら 今から東尋坊に行き 飛び降りられる自信がある。



生きていても楽しみがなかったら つまらないからな。




人生趣味がなかったら味がないと言われているが 俺はその趣味こそネットサーフィンかアニメ鑑賞だ。



YOUTUBEを開発した人は本当に偉大だね。神様だ。ひきこもりの神様!



…ひきこもりの神様ってなんだ。


それは“鬱”くしい国、日本が創った社会構造になるのだな。


この持論だけは譲れない。





アパートのベランダには1週間分のゴミが無造作に積まれている。


半月ほど貯っぱなしにしてある。夏なんだし片付けないとそろそろ虫が湧いてくる頃合いだ。


だが俺は昼夜逆転しているせいか、ゴミ収集車がやって来る時間帯にはたいてい寝ている。


その時間に起きていることがリアルで難関な試練だ。 


今度 頑張って起きてみるよ。できれば。




その日限りの食事であろう、冷蔵庫から冷凍してある食パンと取り出してトーストで解答しジャムをつけて食べる。


思ったより食パンは1枚でも結構、腹の足しになるのだ。それに6枚入りで値段は300円前後。


これだと300円で約一週間生きれるという単純計算になる。



日々仕事をし、活動をしている人なら到底足りないカロリーなのだろうが


1日14時間寝ている俺には 十分であろうな。 



ただ痩せていくことは必至だけど。





たまに近距離にある実家に帰って親が作ってくれた食事を食べるときがある。


最初で述べた通り俺が住んでいるアパートと実家の距離はかなり近い。


いっそのこと実家に帰ってしまえ、と掲示板で現状を明かしたときそのように散々書き込まれた。



しかし…そんなことをしたら親はたちまち仕事の話しを持ち出してくる。会ったときには常にな。


それにあの糞忌々しい兄貴と顔を合わせ一緒に暮らさなければならないのも尺だ。



・・・そりゃあ俺が鬱病だったら 親も納得するだろうし 


何年ものの自宅療養も許してくれるだろう。


重度になったら国から認めてもらえ支援金がもらえるしな。




ただ今の俺はひきこもりなだけで、社会的に仕事ができないという状況ではない。


だから俺の親はタイムズ(週刊ワーク情報)を嫌味ったらしく俺の前に突き出してくる。


「あぁ、考えとくよ」とその場をしのぎ 食事がすんだらすぐ実家からアパートへカムバック。


安全地帯のアパートの自室へ引き返す。こんな感じのやりとりが30回程度つづいていると思われるね。…数えてないけど。




…1人なったときに(自分の部屋とか風呂とか)過去を思い出すやいなや



「ばっきゃろーー!! 死ねーー!!あぁぁぁ!!」


と、唐突に叫んでしまう病気があるだろうか。PTSDでもちょっと違うよな。


単に情緒不安定で感情を抑える能力が人より欠けているだけなのだろうが・・・。


しかしそんなこんなで、国から支援金をもらえるような重度の精神的な病気にかかってない。


メンヘラーっていうのも俺の自称だから、実際傍から見たら親に甘えている心の狭い人間。と思われても否定はできない。



正直に言うと、仕事以外のことなら、人に引っ張ってもらいながら外での遊戯に勤しむことははできるし、


深夜にコンビニにも行くことができる。



だからよっぽど重い重い重い精神病を抱えてない限り、“一般人”として社会から捉えられてしまう。



よって俺は仕事をしなくてはならないのだ。国の義務でもあるのだから。




だが・・・ 嫌だ。




人間関係が怖い。 人と接するのが怖い。 孤立するのが怖い。




仕事を・・・ したくない。





・・・・。






…俺は何回も何周もしたYOUTUBEにアップしてある某アニメをいまだ鑑賞している。


「あぁ〜 レイナちゃんは今日もかわいい声を出すよなぁ〜…。」


「うぅ〜 ケンジ君はかっこいいなぁ〜 俺もこんなイケメンなら学生時代モテただろうなぁ。」


「あぁ〜 なんで俺 こんなんなっちまったんだろう…。 どこで間違えたんだろう…。 あぁ〜〜」



いつもこんな感じだ。



どこの場面で、何話で、主人公やヒロインがどんな言葉を使っているのか、どんな展開をみせるか、 なんとなくわかっている。



ずっと毎日何回もそればかり見ているもんな。




アニメ鑑賞以外でも、ネットを使って外部との接触も一応試みている。



もしかしたら、家の近くの地域でオフ会の募集がないか、暇なときは(毎日だが)チェックしている。


しかしそんな誘いなんて1%もないだろう。過去にもそんな書き込みなかったし。



いくらひきこもりでも男なら絶対に女性とはなにかしら接点が持ちたい。



まだ付き合ったことのない人間が 生身の女性に話しかけるなんて難易度高いかもしれないが…。



パソコン越しでは躊躇なくすんなりコミュニケーションがとれる。顔が割れてないし、目も合わせなくてすむしな。


ただネタがない。会話のネタがほとんどというほど皆無だ。



ひきこもっている俺にとっては世間話一つとっても難易度が高いのだった。



それが原因でチャットでも出会い系でアドレスゲットしてメール交換しても


すぐに淡々と終わってしまう。 長くつづいて5日が限界だろう。



俺から面倒くさくて投げる場合もあるし、向こうから愛想尽かされ自然消滅になってしまうこともある。



まぁそんなこんなで、今の状況を改善するために必要なコミュニケーション手段も


外に出ていろいろ活動や経験をしなかったら、リアルでにっちもさっちもいかない。




だが外に出るのはいやだ。そう視線が…。




とりあえずYOUTUBEのアニメ鑑賞を終えて、次は2chを開け、俺と同じ状況下におかれている同報の書き込むをゆったり眺める。



俺よりも人生を(生で)苦労している人たちの書き込みを見ていると、心がスッキリし一時的な安堵感を得るのだ。


まだ俺もいけるぞ。という妄想をしてしまう。



現実はリアルでダメで無様なメンヘラなんだが…。




さて、こうやって 1日中パソコンの前にいるもんだから 2時間置きの休憩が必要になるわけだ。



最近はじめた煙草を一本抜き取りベランダに出て吸い始める。



さすがに部屋の中で吸っていたらタバコ臭くなるし、引っ越すとき余計な金もかかってしまう。


俺の部屋は4階の404号室で、今いるベランダのちょうど下の202号室には広めのベランダがある。


ベランダというよりは一種のコンクリート化した庭のようなものだ。とにかく広め。ちょっと羨ましい。



何か物を落としたら、確実に202号室に報告して取りにいかなければならない。



まだ一回も落としたことはないけど…。






このときまでは。

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