国家事業に参加する事になりました
こうしてスノーの頼みで国家プロジェクトに参加する事が決まった俺達である。
翌朝、早くからこの国に居た貴族や大臣たちと混じって俺やアセナ達も参加している。アナザは俺の隣でピシッと綺麗なフォームを崩さず居るのは凄いと思う。
そして女神復活と言う普通の人が聞けば絶対嘘だと思うような内容であったが、スノーが上座に座ってその美貌を見せつけると年甲斐になくデレデレしてるおっさん達が大勢いた。
「ではこれより来年の吹雪対策を行う。資料に目を通した後に発言するように」
俺達にも資料は配られ、今まで失敗した内容や実現不可能と言われた問題などが含まれている。
特に問題なのはやはり食料の安定した輸入。海岸からこの国に向かって行われる運搬も吹雪や魔物の襲来などで安定して行えない様だ。
これは他の国でも同じ事なのだが、比較的安全なルートと言う物は存在しており、ある程度の安全は保障されている。
だがこの国には吹雪と言う自然現象により安全と言える道は確定していないのだ。
しかもこの国を中心にして頻発する吹雪によって途中までは安全と言われていても、その先は保証できないと言う物ばかり。
俺はこの資料に目を通しながら考える。
「タツキは何か案がある?」
そうスノーに聞かれた。
この国の重鎮達が居る中での発言と言うのはとても勇気がいるが、まぁ言うだけ言ってみよう。
「俺個人としては……トンネルを作るのが現実的だと思う」
「トンネルとはどのような物か?」
そう不思議そうに聞くのは国王だ。
そういやこの国にトンネルってみた事ないな。
「簡単に言うと穴だな。とある場所からとある場所まで通り抜ける巨大な穴だ。もちろん上下じゃなくて前後左右に向けて、だがな」
「それは……大規模な話ですな」
「しかし穴とは……どのように掘ればよいのですかな?」
まぁ上下左右に掘る穴っと言われも分かり辛いか。
俺はテーブルの上に大きめの魔石を置き、変質で形を変えながら説明する。
「仮にこの石を山としよう。この山に真っ直ぐ穴をあけ、人が通れる道を作る。これがトンネルだ」
「まるでアーチの様だな」
「確かに、穴を下ではなく前にくり貫いておる」
「しかしこの地には山などありませぬぞ?」
「だからこのアーチを人工的に作るってのが俺の理想だ。と言ってもこれを作る材料は何にするかってのが問題なんだよ。この辺にトンネルを作れるだけの量の石を採掘する事は可能か?」
「それは難しいでしょうね。採掘のほとんどは宝石のためですし、建築用の石は雪を掻きだしてからとなるので費用などもかなり高くなるでしょう」
ふむ……金銭的にも難しいか……
「所で最低でいいんだが、仮にトンネルを作るとして距離は何キロぐらい必要になるんだ?幅はどれぐらいにする?」
「そうね……主に吹雪いているのはこの国を中心におよそ10キロのトンネルは必要かも。余裕を持つには15キロの距離は必要ね」
「さらに言えば魔物の邪魔になった際、魔物がどのように動くかも気になります。迂回してくれるか、破壊するか」
魔物対策も考える必要があるもんな……これじゃ問題がいつまでも解決しない訳だ。
結局この案もダメかと重鎮達が落胆していると、ユウガがやって来た。
俺に負けたとしても勇者は勇者、大切な世界の切り札であり、世界の宝である。その勇者パーティーが来てスノーに向かって言った。
「国に連絡したところ、この事業に参加してもよいと許可をもらいました。協力できることはあるでしょうか」
その言葉に重鎮たちは騒めく。
俺はそんな重鎮達を無視して俺は言った。
「それは俺の監視か?」
「そうだよ。少しでも黒騎士から目を離すなと法王様に言われてね、タツキの監視をしながらなら事業への協力は構わないってさ」
俺の監視だと堂々と言うユウガに俺は笑った。
まさかそこまでぶっちゃけて言うとは思わなかった。
「勇者様が参加するとなると士気の部分は大丈夫だろうな。となるとやっぱり現実的な提案が出来るかどうかってのが重要か」
「それでどんな感じなの?」
ユウガは自然と俺の隣に座って聞いてくるので俺は答える。
「俺個人としてはトンネルでも作らないかって提案したところ。ただ材料費やら何やらで難しいかな~って思ってる」
「トンネル……でもこれって秋までに完成させる予定なんだよね?石を切りだして加工するとなると時間はないんじゃ」
「まぁ~俺も、その辺は無謀だろうなって思ってる。いくら将来のための国家事業と言っても金がかかり過ぎて国が傾いちゃ意味がない。後考えているのは……スキルによるチートだな」
「チート?それってどんな?」
「どんなって。口で言うのは簡単だが納得するかは分からないし、実験しないと相当危険……」
そうユウガと話していると周りの人が全員俺とユウガの会話に注目していた。
俺はため息をついてから言う。
「ま、一言でいうとだ。氷でトンネルを作るってのはどうよ?」
「え、氷で!?」
そう言うと全員から「無理だ」「一体どうやって?」「大丈夫なのか?」っと声が上がる。
当然その反応は予想していた事だし、賛成か反対かで言えば不安の方が大きくて反対意見の方が多いだろう。
だからこそ全員でやり遂げる必要がある。
「まぁ待て待て。確かに俺は想定してはいるけれど、確実にできると堂々と言えるだけの自信はない。あくまでもまだ理想の段階だ。ある程度実験して、本当に俺が加工した氷でトンネルが作れるかどうか試してみなくちゃならない。天候の変化、魔物の攻撃、どれだけ保つかなども調べなきゃならないし、今すぐって言う訳にはいかないさ」
「ちなみに加工って」
スノーが聞いてくるので俺は素直に言う。
「スノーやアセナ達は何度も見て来ただろ。俺の『変質』は有機物無機物に関係なく作用する事が出来るスキルだ。これを利用して氷のブロックを作る。後は実験の繰り返しで必要な強度、特に熱や衝撃への耐性がどれほどなのか調べてみないと分からない。まぁその辺の実験はアスクレピオス、ヤタ、ジャックの3人に任せたいと思ってる」
俺がそう言うと3人は俺に聞く。
「どうしてヤタ達なの?」
「まず俺が言った衝撃や重量に耐えられるか、それから熱に関しては太陽光や気温などの変化による熱への耐性だな。光の熱に関してはヤタが1番詳しいだろ?アスクレピオスとジャックは魔法的、科学的な観点から耐久性能を確認してほしい」
「ああ、それで私達なんだ。でも氷の実験なんてした事ないよ?凍死実験なら何度かしたけど」
「だから思い付く限り全部やれ。そして同時にアスクレピオスは魔法による氷の生成がどれだけ可能かも調べて欲しい。俺が居なくても修復できるようにしなくちゃ完成品とは呼べない」
「分かりました。魔法で再現できるか確かめてみます」
「っとまぁこんな感じで考えていたんだが、氷でも大丈夫か?」
そうスノーたちに聞いてみると、全員黙っていた。
あれ?やっぱり俺の考えって無謀かな?
そう思っているとスノーと国王は真剣に考える。
「氷……その考えはなかった。だがタツキ殿が言うように耐久性と言う面で不安は隠せない。だが石を切りだしたりするよりは材料費も少なくて済む……」
「氷に関する魔法はこの国の人間にとって十八番。トンネル造りに関してその基準を超えられるかどうかまでは分からないけど、今までの案に比べればかなり現実的ね。意外と悪くないかも知れない」
あれ?思っていた以上に前向きだな。
俺だって思い付きで言っただけだし、本当に建築材料になる程の氷を生成できるかも分からない。
なのに何でここまで前向きなのみなさん。まだ過程の段階ですよ?
そう思っていると多分貴族と思われる人が立ち上がって言った。
「私の所に国外への食用氷業者がいます。その者達に手伝わせましょう」
「でしたら私の領地には氷を使った芸術家が居ます。彼にも協力を頼みます」
「今私の領地には職がなくて困っている者達が居ます。彼らを労働力として参加させてもよろしいでしょうか?」
あれ?あれ!?何でこうなった!
氷で作るトンネルが現実化しかけてませんかね!?
そう思っているとスノーが言った。
「タツキ。とりあえず建築用に使えそうな氷を生成して。その後この国の魔法使い達にも協力させて本当に建築用に使えるかどうか確かめるから」
「ちょっと待て!なんでみんなそこまでやる気出してるんだ!?まだ俺が建築用の氷を変質で作れるかすらまだやってない――」
「でも最も現実的な案はそれしかないの。後はどれも失敗するのが目に見えてばかりの案ばかり、だから協力して」
そんな真面目な表情で言われたらな!!
「あ~もう!!分かったよ!!どうせ言い出しっぺは俺だ!こうなったら徹底的にやってやるよこの野郎!!家族から頼まれた無茶振りだ!!国1つ救ってやるよこの野郎!!」
こうしてやけ気味に俺の氷を使ったトンネル製作が開始されたのである。




