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ドワーフの国

 狼を仲間にして早2日目、ようやくドワーフの国を発見した。

 俺は国と言うのなら鉱山の麓にでもあるんだと思っていたら、アリの巣の様に掘った鉱山の中に街を作ってやがった。

 そして入り口は1つしかないという理由からとても混雑している。

 見るからに商人だったり、俺同様に冒険者と思われる人達が大勢ならんでいるので人は意外と多そうだ。


 ただファンタジーの定番であるケモミミの姿を1度も見ていない。

 それはこの国以外のイングリットでも見かけてはいない。

 もしかしてこの世界ではケモミミは魔物として扱われているのか?興味があったのだが居ない者は仕方ないと思い諦める。


 それからこの狼だが意外と礼儀正しい。

 むやみに吠える事はないし、トイレだって道端でせずに森の中で用を足していた。

 何だか妙な所で人間っぽいというか、人間臭いというか、変な奴。

 その狼は現在俺の足元で大あくびをしている。この列に並ぶのはそりゃ当然暇だ。

 俺も欠伸をしながらただただ自分の順番が来るのを待つ。


 そしてようやく俺達の番になり冒険者カードを見せて入国しようとした時、明らかに嫌な顔をされた。

 受付のドワーフと思われるずんぐりむっくりのおっさんは俺を見て嫌な顔をしたのではなく、足元に居る狼を見て嫌な顔をしていた。


「え~っとタツキさん?本当にその犬をこの国に入れる気か?」

「犬じゃない。狼だ」

「なおさらこっちにとって都合がわりぃよ」

「狼1匹入れる根性もないのか?この国は」


 そう言うとおっさんは俺に手招きをする。

 そして小声で説明した。


「この国じゃ狼は不吉な存在として見られてるんだよ。だから一緒に居ると困る事も増えるぞ?」


 ああ、この国の風習的な話か。

 地元の風習と言うものはバカに出来ないものなのは知っているが、だからと言って狼を置いて行くつもりもない。


「別に構わねぇ。入国を許可してくれ」

「……どうなっても知らねぇからな、忠告はしたぞ」


 そう言われてから入国を許可された。

 狼と共にドワーフの国に行くと、思っていたよりも近代的だった。

 鉱山の坑道を利用して作った国と聞いていたが思っていた以上に広い。


 街のいたるところに煙突があり、そこから湯気が出ている。

 民家と思われる家には普通に窓ガラスが使われており、流石職人の町だと思う。

 ただ前の世界で見るほどきれいなガラスではないが。


 そして全体的に見ると何と言うか工業地帯という印象が強い。

 パイプなどがむき出しになっている分、外観についてはあまり気にしていない感じがするというか、バカデカい工場そのものが国として成り立っている感じというか、そんな感じだ。

 ちょっと武骨な感じがするがこんな場所があるとは意外だ。


 イングリットでは中世ヨーロッパ的な感じがしたのに、ここは近代に近い気がする。

 ヨーロッパで言う産業革命みたいな感じ。

 でも煙突から出ている煙だか蒸気は白かったりするので公害はなさそうだ。

 まぁ実際の所は知らないけど。


 そんな街並みを見ながら俺達はこの国のアヴァロンに寄った。

 旅の途中狩った獲物を売るためだ。食用には出来ないが、綺麗に皮と身を捌くと少しは高値で売れる事を知ったので最近は自分で解体している。

 その皮をなめすとより高値で買い取ってくれるらしいが、俺にそんな技術はないので下手な事はせずに売る。


 アヴァロンの中は他の町同様に騒がしい。

 俺が買取受付に向かっている途中で静かになった。

 どうやら地元のドワーフが狼がいる事に気が付いた様で、ひそひそと俺の事を話している。

 普通の人間には聞こえないだろうが俺にはっきりと聞こえる。

 狼は大丈夫かそっと見て見ると気にした様子はない。

 ならいいかと思いながら買い取ってもらった。


 そのまま依頼板で何か仕事はないかと眺めている間に腰を叩かれた。

 なんだと思いながら振り向くと誰も居ない。

 気のせいかと思いながら視線を戻そうとするとさっきより強く叩かれた。

 視線を下ろすとドワーフと思われる髭のない男がいた。

 ドワーフと言ったら髭を生やしているイメージだがこいつは違うみたいだな。

 でも身長は中学生ぐらいあるかないかぐらいなので、そこだけはイメージ通りか。


「なんか用か?」

「この狼は貴様のペットか」

「ペットじゃない。ただ同じ目的のために行動するだけの間柄だ」

「この国は狼を嫌っている事を知っていながらか」

「それは入国する時に聞いた。俺は田舎者でね、ドワーフすら受付で初めて見たぐらいだ」

「ではこの国のルールだ。この狼を追い出せ」

「断る」

「なに?」


 依頼板に面白そうな依頼があったのでこれを選んでみよう。

 依頼内容は『アームサウルスの討伐』という依頼だ。

 どうやら現在も使われている坑道に魔物がいるらしい。

 初めて見る魔物だから食ってみた場合何か面白い能力を得るかもしれない。

 報酬と共にそれなりに興味が出たのでこれを受理してみよう。


「この街の風習なんざ知ったこっちゃない。俺の勝手だがこの狼の事を仲間だと思ってるんだ。そいつをほったらかしにするつもりはない」


 依頼の書かれた紙を依頼板から手に取りながら、ドワーフを避けて以来受理用の受付に向かおうとした際に邪魔をされた。

 俺はドワーフを見下ろしながら睨む。


「何のつもりだ」

「今すぐこの国から出て行け。ケガする前にな」


 俺はため息を付いてから更に避けて受付に行こうとする。

 だがドワーフは邪魔をする。

 俺は苛立ちながら言う。


「なぁ、こんな下らない事に時間をかけたくない。どいてくれ」

「断る。その狼を連れて失せろ」


 俺はため息を付いてからドワーフを殴った。

 常人には視認する事も出来ないぐらいのスピードで横っ面を殴り、アヴァロンの壁に激突させた。

 ここのアヴァロンは頑丈な作りになっているのか壁を突き抜ける事はしなかったな。

 しかし気絶ぐらいにはなった様なのでようやく静かになった。

 俺は依頼受付で依頼の受理を確認した後アヴァロンを出た。


 依頼の内容であるアームサウルス討伐のため、鉱夫の所に行きどの辺に居るのか聞きだすためだ。

 狼も当然俺の後を追って来るのだが、何故か尻尾を振っている。

 そういや最近の飯は俺が以前に仕留めた物を調理しただけの飯だった。

 もしかして狩りが出来る事に嬉しく思っているのかも知れない。

 そう思うと飯の際には狩りに行かせた方がいいのかな?なんて思う俺だった。

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